頸部リンパ節転移を伴うオカルト甲状腺乳頭癌の1例

A case of occult papillary thyroid carcinoma with cervical lymph node metastasis

要約　30歳，女性．20年前から持続する右側頸部のしこりを主訴に当科を受診した．初診時，右側頸部に鶉卵大で，弾性硬の皮下結節を認めた．超音波検査やMRI検査から神経鞘腫を疑い摘出したところ，甲状腺乳頭癌の転移性リンパ節であった．MRI検査，超音波検査では甲状腺に明らかな異常は認めなかった．オカルト甲状腺乳頭癌の頸部リンパ節転移と診断し，経過観察することになった．乳頭癌の転移性リンパ節の超音波検査所見は多彩な像を呈し，自験例は神経鞘腫も鑑別に挙がる所見であった．オカルト甲状腺乳頭癌は乳頭癌の0.3%を占め，稀な疾患である．頸部腫瘤を認めた場合，甲状腺に異常を認めなくとも，オカルト甲状腺癌の頸部リンパ節転移の可能性も鑑別に挙げるべきと考える．治療に際しては，頸部の解剖や術後起こり得る合併症について習熟しておく必要がある．