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はじめての減酒治療

はじめての減酒治療
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筆頭著者 樋口 進 (編著)

久里浜医療センター名誉院長・顧問

金芳堂

電子版ISBN

電子版発売日 2023年7月7日

ページ数 139

判型 A5

印刷版ISBN 978-4-7653-1962-1

印刷版発行年月 2023年7月

DOI https://doi.org/10.50910/9784765319621

書籍・雑誌概要

近年、アルコール依存症治療に対する新しいアプローチとして減酒治療が注目されています。2019年には減酒治療薬ナルメフェンが使用可能となり、減酒治療を始める医療機関が広まってきました。

本書では、わが国で初めて減酒外来を開設した久里浜医療センターの、アルコール依存症診療の国際的第一人者である編者を中心に、減酒治療の実際、減酒外来のポイント、総合病院・職域指導やクリニックにおける減酒治療の実践について、症例を交えながら解説しました。

また、減酒治療薬として使用されているナルメフェンについても1章を設け、エビデンスを挙げながら、ナルメフェンの作用機序・有効性・副作用を解説しています。巻末には、「断酒にすべきか減酒にすべきか」など、実際的に判断に迷うケースを想定したQ&Aを設けました。

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序文
最近、一部のアルコール依存症者に減酒の可能性が示唆され、減酒治療を行っている医療機関が増えてきた。また、2019年から減酒を目的とする治療薬であるナルメフェンが使用可能となり、減酒治療に拍車がかかっている。筆者の知る限り、最初の減酒外来は久里浜医療センターで開設された。本書の分担執筆者である湯本洋介先生が、減酒外来の先駆者として、臨床経験を積み重ねてきている。内科の分野で減酒外来を早期に始めたのは吉本尚先生である。一般病院での実践が大学から理解とサポートを得て、現在、先生は筑波大学附属病院で減酒外来を展開している。一方、クリニックでの減酒治療の先駆者は、さくらの木クリニック秋葉原の倉持穣先生である。先生は依存症の減酒の可能性に早くから着目し、東京のオフィス街で減酒治療を行ってきている。本書は、これら各分野の先駆者に減酒外来について執筆していただいた。内容は、依存症も含めたアルコール使用障害の概要、減酒の方法、ナルメフェンの作用機序・有効性・副作用、減酒で注意すべき疾患、専門医療機関やクリニックでの減酒外来の実際などである。また、依存症のみならず多量飲酒者の減酒に関して職域は重要である。田中完先生には、職域と減酒外来の連携について執筆いただいた。先生は産業医として長きにわたり、職員の飲酒問題に積極的に取り組んでこられている。

減酒治療はある意味で魅力的である。患者の受診のハードルを下げ、いわゆる治療ギャップを埋める効果があるだろう。しかし、アルコール依存症治療の大原則は断酒の達成とその維持であることを忘れてはならない。断酒が最も安全かつ安定的な治療目標である。減酒治療を患者のアルコール依存度や関連問題の程度を考慮せずに実施するのは危険である。本書は、そのような点についても、実践に基づく情報を提供している。減酒治療に関しては、未だエビデンスの蓄積が非常に乏しい。本書がこの部分を補い、減酒治療や指導を始める、または疑問を抱えながら既に実践している医療者の道標として使用されることを願う。

目次

減酒外来の意義[樋口進]
なぜ減酒か

減酒外来の始まり

減酒外来がもたらしたもの

今後の課題

Ⅰ 総論
1章 アルコール使用障害と減酒[湯本洋介]
1 アルコール使用障害について
1.1 アルコール依存症(ICD-10)とアルコール使用障害(DSM-5)
1.2 アルコール使用が及ぼす健康問題について
1.3 日本におけるアルコール消費の動向

2 減酒について
2.1 アルコール依存症への減酒の適用の歴史的変遷
2.2 ブリーフインターベンションの活用
2.3 各国ガイドラインの対応
2.4 断酒一辺倒に陥らないことの利点
2.5 減酒により改善が期待される項目
2.6 ハームリダクションの観点から

2章 軽度アルコール依存に対する介入療法[湯本洋介]
1 軽度アルコール依存の治療目標

2 心理介入法BRENDAについて
2.1 生物心理社会的評価
2.2 評価の結果を患者に伝える
2.3 患者に共感的理解を示す
2.4 患者のニーズを共同して特定する
2.5 ニーズに合わせた直接的なアドバイス
2.6 アドバイスに対する患者の反応を見て必要に応じて最良のケアに向けた調整を行う

3 久里浜医療センター「減酒外来」の診療
3.1 飲酒習慣の評価
3.2 目標設定
3.3 減酒のための行動プラン
3.4 飲酒記録(レコーディング)
3.5 再診時

4 久里浜医療センター「減酒外来」の実績

3章 ナルメフェンの効果と適応、副作用[湯本洋介]
1 アルコール依存症の薬物療法
1.1 断酒薬
1.2 減酒薬の開発

2 アルコールとオピオイド系の神経科学的基盤

3 ナルメフェンの薬理作用

4 ナルメフェンの海外の臨床試験について

5 ナルメフェンの国内の治験について
5.1 24週プラセボ対照二重盲検試験
5.2 長期継続オープンラベル試験

6 ナルメフェン内服によりもたらされる効果
6.1 減酒による死亡率低下のメタアナリシスを用いたナルメフェンの効果
6.2 ナルメフェンの費用対効果について
6.3 ナルメフェンのQOLへの改善効果について
6.4 ナルメフェンの肝線維化の改善効果
6.5 プライマリケアの場でのナルメフェンの投与について

7 日本でのナルメフェン使用の実際について
7.1 減酒を選択できないとき

8 まとめ

4章 減酒外来で注意すべき疾患[吉本尚]
1 アルコールと肝疾患

2 アルコールと膵疾患

3 アルコールと高血圧

4 アルコールと中枢神経疾患

5 その他の注意すべき疾患や症状
5.1 離脱症状
5.2 睡眠障害

6 まとめ

5章 職域における減酒の意義、減酒外来との連携[田中完]
1 職域における減酒の意義
1.1 飲酒に対する好印象
1.2 非現実的な介入
1.3 スクリーニングの課題
1.4 指導の困難
1.5 減酒のメリット

2 減酒外来との連携
2.1 健診でAUDIT/AUDIT-C

Ⅱ 症例で理解する減酒外来
1章 専門医療機関での減酒外来[湯本洋介]
症例1 職場で飲酒問題を指摘されて精神科外来を受診したケース
症例2 抑うつを主訴に精神科外来を受診したアルコール依存症のケース
症例3 飲酒習慣を見直すために減酒外来を受診したアルコール使用障害軽症例のケース
症例4 飲酒により転倒を繰り返す高齢者のケース

2章 専門クリニックでの減酒外来[倉持穣]
症例5 ブラックアウトがあり自主的に受診したケース
症例6 減酒治療と断酒治療の間で揺れ動いた例

3章 産業医の減酒指導[田中完]
症例7 健康診断で肝機能異常を指摘され指導したが改善なく悪化し、3領域で連携した例

Q&A
Q1 どのような場合には、断酒が必要でしょうか
Q2 本人は減酒を主張、家族は断酒を主張の場合、どうしたらよいでしょうか
Q3 断酒が必要な患者が減酒を試みる場合の注意点を教えてください
Q4 減酒を継続させるためのポイントを教えてください
Q5 減酒目標でも、それができない場合はどうしたらよいでしょうか
Q6 減酒治療中の治療薬の使い方に関する注意点を教えてください
Q7 運転免許の取得や更新時、減酒で大丈夫でしょうか
Q8 これから減酒外来を開設するときのポイントを教えてください
Q9 減酒外来の実践に必要な条件・スキルは何ですか
Q10 必読の文献、論文、Webリソースなどを教えてください

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