皮膚科 8巻5号 (2025年11月発行)

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特集　白斑の病態と最新の治療

白斑の分類・疫学・診断種村　篤 8巻5号 , 2025年11月 , pp.315-321

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尋常性白斑（vitiligo vulgaris：日本で一般的な呼称）は国際的にはvitiligoであり，本稿では "白斑" の呼称で統一する．白斑は後天性にメラノサイトが減少もしくは消失する代表的脱色素性疾患の一つである．2012年のVitiligo Global Issues Consensus Conferenceでは，分節型尋常性白斑（segmental vitiligo）を除くすべての非分節型尋常性白斑を単に "vitiligo" もしくは "non-segmental vitiligo" と呼ぶことで合意に至ったが^1），2023年の尋常性白斑の国際ガイドラインにおいては，分節型以外の尋常性白斑を "vitiligo［non- segmental］" と呼ぶことにしている^2）（表1）．

白斑の病態種村　篤 8巻5号 , 2025年11月 , pp.322-327

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白斑はなんらかの原因でメラノサイトが減少もしくは消失する，後天性脱色素性疾患である．本誌の病型の項でも述べられているとおり，白斑は大きく分節型と非分節型があり，それぞれの病因・病態は異なり，特に非分節型の病態解明が進んでいる．最新の病態は2025年改訂の尋常性白斑診療ガイドラインにまとめられているが^1），その内容を中心に私案を交えて解説する．

尋常性白斑の評価岡村　賢 8巻5号 , 2025年11月 , pp.328-334

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尋常性白斑は後天性に生じる脱色素性疾患の代表的疾患であり，全人口の約0.5〜2％が罹患する^1）．尋常性白斑の診断自体は容易であることが多い一方，その重症度，疾患活動性，疾病負荷，治療効果の判定を日常診療の中で正確に行うことは決して容易ではない．これらを他覚的に評価するため，これまでにさまざまな指標が提唱・報告されている（表1）^2）〜12）．

尋常性白斑治療の考え方と治療フローチャート大磯　直毅 8巻5号 , 2025年11月 , pp.335-339

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日本皮膚科学会ガイドライン「尋常性白斑診療ガイドライン第2版2025」が報告された^1）．2023年末までの最新の知見が統合化されている．本稿では，治療方針を策定するための考え方と治療フローチャートをまとめた．

尋常性白斑の進行期の治療の基本櫻井　麻衣 8巻5号 , 2025年11月 , pp.340-346

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尋常性白斑は全人口の約0.5〜1％が罹患する後天性の自己免疫疾患で老若男女問わず生じる．心理的・社会的影響は深刻で生活の質（QOL）を大きく害する疾患である．QOLに影響を及ぼす因子として，体表面積が25％以上であることや白斑の罹患部位数^1），紫外線対策などのスキンケアの負担，白斑の進行に対する不安や皮膚の見た目（色素脱失）の悩みなど^2）が明らかになっている．

尋常性白斑に対するナローバンドUVB/エキシマライト/UVB-LED 榎本　由季 8巻5号 , 2025年11月 , pp.347-355

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尋常性白斑はメラノサイトの減少・消失・機能低下による脱色素性障害であり，酸化ストレスへの脆弱性やメラノサイトの機能低下などの遺伝的素因に，自己免疫反応や酸化ストレスが加わることで生じると考えられている^1）．白斑の治療は，自己免疫の調整を行う "白斑の安定化（stabilization）" と色素を再生させる "再色素沈着（repigmentation）" の2本柱からなる．白斑の安定化（stabilization）には，ステロイド全身投与やシクロスポリン・メトトレキサート・ミコフェノール酸モフェチルなど従来の免疫調整・抑制薬やJAK阻害薬に加え，全身への光線療法も有効とされている^2）3）．

尋常性白斑のエキシマレーザー治療山本　礼 , 森田　明理 8巻5号 , 2025年11月 , pp.356-364

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白斑の治療は，自己免疫を抑え病勢を安定化させることと，色素再生を促す再色素化の大きく2つに分けられる．白斑に対する光線治療は，安定化と再色素化いずれにも効果があるが，より色素再生を促す効果が高いと考えられている．2019年2月に本邦において，紫外線治療に用いる機器として厚生労働省の薬事承認を取得したXTRAC®は国内で唯一承認を得ているエキシマレーザー照射機器である．

The mechanisms and clinical outcomes of visible light therapy in vitiligo Huei-Jing　Wang , Cheng-Che E.　Lan 8巻5号 , 2025年11月 , pp.365-373

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Vitiligo is a commonly acquired depigmentation disorder affecting 0.5-2％ of the global population, characterized by well-demarcated white macules due to melanocyte loss or dysfunction ^1）. It is classified into non-segmental vitiligo （NSV）, the more prevalent and progressive form often with bilateral involvement, and segmental vitiligo （SV）, which is unilateral, often dermatomal, and typically stabilizes within 1-2 years.

尋常性白斑に対する外用療法・外用併用療法下村　裕 8巻5号 , 2025年11月 , pp.374-378

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尋常性白斑は，メラノサイトが自己免疫の機序によって破壊されるために完全脱色素病変を生じる疾患で，なんらかの治療または自然経過により改善しても高頻度に再発しうる．間違いなく，すべての皮膚疾患の中でもきわめて難治性の群に分類されるであろう．治療の主役は外用療法と紫外線療法だが，年齢を問わず第1選択になるのは前者である．つまり，他の多くの皮膚疾患と同様に，尋常性白斑においても外用療法は治療の「基本の基」といえる．

尋常性白斑に対する外科治療（ミニグラフト・培養表皮移植）加藤　裕史 8巻5号 , 2025年11月 , pp.379-385

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尋常性白斑の治療目標は大きく2つある．第一は疾患の活動性を抑制し脱色素斑の拡大を止めること（安定化），第二は消失したメラノサイトを補充し皮膚の色を回復させること（再色素沈着）である．そのため，治療法の選択は白斑の活動性（進行期か非進行期か），病変範囲，部位，患者の年齢や希望などを総合的に考慮して行われる．進行期の白斑に対してはまずステロイド外用，タクロリムス軟膏，活性型ビタミンD3外用などの局所療法や，ナローバンドUVB照射，あるいはエキシマライト/エキシマレーザーといった光線療法が第1選択となる．近年では病態の根幹である自己免疫応答を標的としたJAK阻害薬（Janus kinase阻害薬）の内服・外用も有望な新規治療として登場し，進行期白斑のコントロールに新たな選択肢を提供しつつある^1）．

話題

尋常性白斑に対するメラノサイト含有自家培養表皮移植鳥山　和宏 , 中村　亮太 , 加藤　裕史 , 森田　明理 8巻5号 , 2025年11月 , pp.386-389

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メラノサイト含有自家培養表皮（以下，ジャスミンと略す）は，ケラチノサイトが重層化した表皮細胞シートである点において，熱傷などのための自家培養表皮「ジェイス®」と同じである^1）．一方で「ジャスミン」は，「ジェイス®」と比較して大量のメラノサイトを含有していることが特徴であり，このメラノサイトにより尋常性白斑などの色素再生が可能となっている．

尋常性白斑に対するレーザー治療（エキシマレーザー以外）奥田　佳世子 , 森田　明理 8巻5号 , 2025年11月 , pp.390-394

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尋常性白斑の治療法には，外用療法，紫外線療法，外科的移植など，多種の治療選択肢があり，これらの治療を併用して治療をすることも多いが，難治な症例や，整容面の苦痛の大きい症例もある．また治療頻度や治療回数を多く要し，治療期間が長期に及ぶことも多い疾患である．症例ごとに，患者の希望する治療目標を確認しながら，治療法を選択し進めていく必要がある．

解説

尋常性白斑の治療の歴史三上　万理子 8巻5号 , 2025年11月 , pp.395-400

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2025年に改訂された国内ガイドラインには，診断，評価方法，治療法が詳細に記載されており，臨床現場において重要な情報を得ることができる．特に，白斑治療において光線治療は重要なポジションを占めており，改訂ガイドラインは最大照射回数など参考になるポイントが記載されている．ガイドラインには国内施設における治療に関するアンケート調査の結果も記載されているが，内訳は副腎皮質ステロイド外用薬はほぼ100％，活性型ビタミンD₃外用薬が90％，カルシニューリン阻害外用薬（タクロリムス軟膏）が70％程度の施設で使用されていた．

尋常性白斑に対する新規薬剤の開発（外用・内服・生物学的製剤）川上　民裕 8巻5号 , 2025年11月 , pp.401-406

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昨今の皮膚科医療業界は，新規薬剤の開発が華々しい．これら高価な新薬のローンチが，皮膚科を大きく変えた．新薬開発には莫大な資本が投入されるため，新薬は高価である．経済的な観点から，新薬を開発した欧米の製薬会社は，販売戦略を建て新薬が広く普及することに尽力する．そこには，一定の法則が存在する．高価な新薬販売促進ストテラジーの最初は，どれほど対象の皮膚疾患が患者QOLを低下するかを提示する．ここから，皮膚科医師は対象の皮膚疾患の既存治療がアンメットニーズであり，新規治療の必要性を強く認識する．

白斑のカモフラージュ　見た目の悩みと向き合うための工夫とヒント髙木　佐千代 8巻5号 , 2025年11月 , pp.407-411

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尋常性白斑は後天性に生じる脱色素性疾患で，全人口の約0.5〜1％が罹患する^1）．皮膚に白い斑点が散在する外見は，「人の視線が気になる」「自分に自信を持てない」など，ときに患者の大きな苦しみになる．特に顔や手，腕などの露出部の病変や，肌色の濃い患者（フィッツパトリックスキンタイプIV〜VI），若者は心理的ストレスや社会的な不安をひき起こしやすい^2）3）．

連載　皮膚科専門医講座

皮膚科専門医のための模擬テスト46—解答と解説— 尾松　淳 8巻5号 , 2025年11月 , pp.412-416

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「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」^1）では，重症度分類は片顔の炎症性皮疹数で判定され，以下のように定義されている．重症度：片顔の炎症性皮疹数軽症　：5個以下中等症：6個以上20個以下重症　：21個以上50個以下最重症：51個以上炎症性皮疹とは，痤瘡にみられる紅色丘疹と膿疱（および紅暈，紅斑）である．

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目次 8巻5号 , 2025年11月

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基本情報

皮膚科
8巻5号
(2025年11月発行)

電子版ISSN：2436-5718 印刷版ISSN：2436-570X 科学評論社

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