皮膚病診療 44巻2号 (2022年2月発行)

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特集　膠原病―皮膚エリテマトーデスを中心にして

Editor's eye 山本　俊幸 44巻2号 , 2022年2月 , pp.99-99

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　膠原病の治療は従来の副腎皮質ステロイド薬・免疫抑制薬に加え，近年分子標的薬が実際の臨床現場に登場してきた．つい先日（2021年11月末）開催された日本皮膚免疫アレルギー学会の膠原病・血管炎の専門部会でも，全身性強皮症に対するトシリズマブ（抗IL-6受容体抗体）やリツキシマブ（抗CD20抗体），全身性エリテマトーデス（SLE）に対するベリムマブ，皮膚筋炎に対するJAK阻害薬などの新規治療や，原発性Sjögren症候群患者をI型インターフェロン，サイトカイン・ケモカインの発現，B細胞の活性化などの特徴から4つのクラスターに分け，それぞれの群での個別化医療の可能性が最近の話題として紹介された．

　今号では，エリテマトーデスおよびその周辺疾患に焦点を当てた．SLEの最新治療をめぐるトピックスでは，B細胞やI型インターフェロンを標的とした治療法が紹介され，これまで副腎皮質ステロイド薬やヒドロキシクロロキンによっても難治であった皮疹に対しても効果が期待されよう．また，SLEのフレアの抑制や，副腎皮質ステロイド薬の減量にベリムマブが有効であったとの実臨床での治療経験が掲載されている．効きやすい皮疹や効果の乏しい皮疹のタイプなども今後知りたいところである．

Topics

エリテマトーデス，皮膚筋炎の皮膚症状をめぐる最近の話題といくつかの問題点山本　俊幸 44巻2号 , 2022年2月 , pp.100-107

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●全身性エリテマトーデスは多彩な皮膚症状を呈する．分類基準に含まれない特異的，非特異的な皮疹も少なくない．

●皮膚筋炎も同様で，典型的な皮疹がいくつかあると皮膚症状からの診断は容易である．一方で，比較的まれな皮膚症状もあり，臓器症状との関連に加え，最近では筋炎特異的自己抗体との関連性も徐々に明らかになってきている．

●本稿では，エリテマトーデス，皮膚筋炎の皮膚症状のうち最近の話題を取り上げ，いくつかの問題点について私見を述べた．

（「ポイント」より）

全身性エリテマトーデスの最新治療―皮膚病変に対する効果も含めて― 谷川　瑛子 44巻2号 , 2022年2月 , pp.108-114

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●エリテマトーデス治療の基本薬剤はヒドロキシクロロキン硫酸塩（hydroxychloroquine：HCQ）である．

●B細胞活性化因子をターゲットとした抗BAFF抗体ベリムマブは既存治療で活動性を有する全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）患者にアドオン使用し，臨床症状の改善，再燃抑制とステロイド減量に有効であり，皮膚エリテマトーデス（cutaneous lupus erythematosus：CLE）での有効例も報告されている．

●新規承認されたアニフロルマブはエリテマトーデス病態形成に重要なⅠ型インターフェロン（IFN）の受容体に対する完全モノクローナルの自己抗体である．皮膚と関節に対する効果が比較的高いとされ，今後難治CLE症例への効果を期待したい．

（「ポイント」より）

治療

全身性エリテマトーデスに対してベリムマブを投与した6例野田　達宏 , 明石　憲佳 , 下村　麻衣子 , 小泉　遼 , 水田　三由希 , 満間　照之 44巻2号 , 2022年2月 , pp.116-119

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●ベリムマブは可溶性BLySに結合する完全ヒト型モノクローナル抗体で，全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）の治療薬である．

●2019年のEULAR recommendationsでは，SLEの難治例や再燃例に対するベリムマブの使用が推奨されている．

●ベリムマブを適切に使用することで，フレアによる不可逆的な臓器障害が生じる頻度を減らし，予後を改善させることが期待される．

（「ポイント」より）

臨床例

ヒトパルボウイルスB19感染を契機にIgA血管炎を発症し，顕在化した全身性エリテマトーデス野﨑　尋意 , 小松　成綱 , 橋本　喜夫 , 松尾　忍 , 小川　弥生 , 山本　明美 44巻2号 , 2022年2月 , pp.120-124

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・両下肢の浸潤を触れる紫斑という典型的臨床像から血管炎の存在を疑い，最終的に血液検査と皮膚および腎病理組織学的所見からヒトパルボウイルスB19感染を契機にIgA血管炎を発症し全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）が顕在化したと診断した．

・SLEの鑑別疾患としてヒトパルボウイルスB19感染症によるSLE様症状があがるが，抗核抗体　160倍，特異性の高い抗ds-DNA抗体高値陽性および腎炎の存在から，SLEをより疑った．

（「症例のポイント」より）

SLEに合併した片側性肢端紅痛症文　省太 , 菊澤　千秋 , 日野上　はるな , 田中　文 44巻2号 , 2022年2月 , pp.125-127

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・肢端紅痛症は四肢末端の灼熱痛，紅潮，皮膚温の上昇を3主徴とする症候群であり，特発性と続発性に分類される．

・systemic lupus erythematosus（SLE）に続発する肢端紅痛症の発生頻度は低いとされるが，われわれはRaynaud現象を有するSLEに肢端紅痛症を続発した症例を経験した．

（「症例のポイント」より）

大腿に分枝状皮斑と潰瘍を伴い抗リン脂質抗体症候群を発症したSLE 渡辺　絵美子 , 田口　博章 , 杉浦　仁 , 陳　科榮 , 宮川　俊一 44巻2号 , 2022年2月 , pp.128-131

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・6年の経過で抗dsDNA抗体値の上昇とともに全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）の一症状として抗リン脂質抗体症候群（anti-phospholipid antibody syndrome：APS）を発症した．

・SLEの患者にlivedoや潰瘍をみたときは，抗リン脂質抗体症候群を念頭に，定期的に抗リン脂質抗体を測定することが大切である．

（「症例のポイント」より）

結節性皮膚ループスムチン症を伴った全身性エリテマトーデスの男性例梅村　薫 , 足立　厚子 , 原田　朋佳 , 横山　大輔 , 竹内　千尋 , 横路　健 44巻2号 , 2022年2月 , pp.132-135

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・結節性皮膚ループスムチン症（nodular cutaneous lupus mucinosis：NCLM）を伴った全身性エリテマトーデスの男性例を報告した．

・ステロイド全身投与で軽快し，その後再発を認めていない．

・本症は自験例のように男性に好発し，全身性エリテマトーデスの発症や病勢悪化に伴うことが多く，注意が必要である．

（「症例のポイント」より）

全身性エリテマトーデス患者に多発した皮膚線維腫山本　美友貴 , 山本　俊幸 44巻2号 , 2022年2月 , pp.136-140

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・全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）とほかの自己免疫性疾患を複数合併している患者に，計15個の皮膚線維腫を生じた1例を経験した．

・免疫抑制薬とスルファメトキサゾールトリメトプリム（ST合剤）の導入後に発症した薬疹および帯状疱疹とほぼ同時期に，皮膚線維腫が多発してきた．

（「症例のポイント」より）

エトレチナートが著効した強い瘙痒を伴うhypertrophic discoid lupus erythematosus 植竹　優香 , 竹内　真理 , 一桝　菜央 , 片桐　一元 44巻2号 , 2022年2月 , pp.141-145

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・強い瘙痒を伴う角化性結節が多発したhypertrophic discoid lupus erythematosus（HDLE）を経験した．

・特異な臨床像と皮疹増悪時の生検で液状変性がないために，診断に難渋した．

・ステロイド外用，プレドニゾロン15mg/日，シクロスポリン200mg/日の効果がほとんどなく，エトレチナート内服により角化・瘙痒が著明に改善した．

（「症例のポイント」より）

慢性円板状エリテマトーデスの皮疹上に生じた有棘細胞癌浅川　理子 , 三井　広 , 大沼　毅絋 , 猪爪　隆史 , 島田　眞路 , 川村　龍吉 44巻2号 , 2022年2月 , pp.146-149

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・慢性円板状エリテマトーデス（discoid lupus erythematosus：DLE）を発生母地とする有棘細胞癌（squamous cell carcinoma：SCC）は露光部に多く，背部はまれな発症部位であった．

・発癌の誘因は紫外線やDLE自体の活動性以外にも，高度の瘢痕化や皮疹の免疫状態が関与するとされる．

・多様な発癌の誘因があることを念頭に置いて治療する必要がある．

（「症例のポイント」より）

小児に生じた汎発型円板状エリテマトーデス周　円 44巻2号 , 2022年2月 , pp.150-153

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・円板状エリテマトーデス（discoid lupus erythematosus：DLE）の小児発症は珍しい．自験例は汎発型DLEのため，通常のDLEより全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）に進展するリスクが高く長期にわたるフォローが必要である．

（「症例のポイント」より）

顔面の環状紅斑を契機とした幼児Sjögren症候群草刈　良之 , 新田　恩 , 梅林　宏明 44巻2号 , 2022年2月 , pp.154-157

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・3歳女児に発症したSjögren症候群を経験した．

・小児のSjögren症候群は自覚的乾燥症状を伴わないことが多く，環状紅斑をはじめとした皮疹の評価が重要と考えた．

（「症例のポイント」より）

ヒドロキシクロロキンやベリムマブの導入によって症状の軽快をみた深在性エリテマトーデス森田　裕介 , 佐藤　一正 , 村松　憲 , 菊地　一博 , 村上　理絵子 , 伊藤　圭 44巻2号 , 2022年2月 , pp.158-161

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・内服ステロイドの減量中に症状が再燃した深在性エリテマトーデス（lupus erythematosus profundus：LEP）を経験した．

・ヒドロキシクロロキン（HCQ）とベリムマブの導入により症状は軽快し，以降はステロイドの減量もできた．

・ベリムマブは既存の治療で効果不十分の全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）に適応があるが，自験例はSLEの基準を満たしており，経過からも導入は適切と判断した．

（「症例のポイント」より）

ヒドロキシクロロキンによる重症薬疹を生じたhypertrophic lupus erythematosus 遠藤　麻衣 , 猪狩　翔平 , 松村　奈津子 , 平岩　朋子 , 山本　俊幸 , 増澤　幹男 44巻2号 , 2022年2月 , pp.162-165

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・hypertrophic lupus erythematosus（hypertrophic LE）に対してヒドロキシクロロキン（HCQ）を内服開始して10日後より発熱，全身の紅斑，下肢の水疱とびらんを認めた重症薬疹を経験した．

・HCQによる重篤な副作用は少ないが，投与中に薬疹・中毒疹をきたす報告がしばしばみられる．

（「症例のポイント」より）

脂肪移植により改善した頰部のループス脂肪織炎の2例前田　進太郎 , 池田　智行 , 濱口　儒人 , 小室　明人 , 小寺　雅也 , 松下　貴史 44巻2号 , 2022年2月 , pp.166-170

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・ループス脂肪織炎による陥凹変形を有する患者に対して自家脂肪移植を行い，満足のいく結果が得られた．

・脂肪移植は十分な有効性と陥凹部・脂肪採取部双方に対して優れた整容性を有し，かつ低侵襲な治療法であると考えられた．

（「症例のポイント」より）

Editorial

新型コロナパンデミックの子どもたちへの影響馬場　直子 44巻2号 , 2022年2月 , pp.97-97

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私の視点

小児光線過敏症の小瘢痕牧野　輝彦 44巻2号 , 2022年2月 , pp.171-171

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　光線過敏症は皮疹と発症年齢，症状が誘発された場所・状況などから疾患を類推し，光線試験をはじめ各種検査により診断を確定していきます．この推理と検証の過程に知的好奇心をくすぐられることから，光線過敏症は私の好きな分野の1つです．

　最近，光線過敏症診療の中で興味深く感じた皮疹があります．それは小児の光線過敏症患者の顔にみられる小瘢痕です．図1と2はともに光線過敏症の精査依頼で受診した骨髄性プロトポルフィリン症と種痘様水疱症の患児です．この小瘢痕の臨床像から両疾患の鑑別ができるでしょうか？　光線過敏の症状が強い時期であれば，前者は潮紅や浮腫，小水疱が主体であり，後者は中心臍窩を有する小水疱や痂皮を呈するので，これらの鑑別はそれほどむずかしくないと思います．しかし，この小瘢痕のみで診断するのは意外とむずかしいと思います．両疾患の瘢痕形成に至る病態の違いを考えてみますと，骨髄性プロトポルフィリン症の小瘢痕は表皮下水疱に続いて生じたもので，種痘様水疱症の瘢痕は表皮から真皮上層の壊死に続き生じたものです．この病態の差を踏まえて改めて図1，2を見比べますと，骨髄性プロトポルフィリン症より種痘様水疱症の小瘢痕のほうが深さが比較的不均一で，かつ全体的にやや深いことに気づきます．もちろん両患児とも各種検査を行い確定診断するのですが，このような小瘢痕のわずかな違いから疾患の類推や鑑別ができれば楽しいと思いませんか．

学会ハイライト

第85回日本皮膚科学会東部支部学術大会“The future is here” 宇原　久 44巻2号 , 2022年2月 , pp.172-173

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リレーエッセイ　私のワークライフバランス

私のワークとライフ菊地　克子 44巻2号 , 2022年2月 , pp.174-175

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皮心伝心

私の『おくのほそ道』河野　通浩 44巻2号 , 2022年2月 , pp.176-176

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診察室の四季

春寒斉藤　隆三 44巻2号 , 2022年2月 , pp.177-177

PDF(1258KB)

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皮膚科のトリビア

第200回浅井　俊弥 44巻2号 , 2022年2月 , pp.178-179

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目次 44巻2号 , 2022年2月 , pp.94-95

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次号予告 44巻2号 , 2022年2月 , pp.180-180

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基本情報

皮膚病診療
44巻2号
(2022年2月発行)

電子版ISSN：2434-0340 印刷版ISSN：0387-7531 協和企画

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