私の視点
小児光線過敏症の小瘢痕
牧野 輝彦
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1富山大学学術研究部医学系皮膚科
pp.171-171
発行日 2022年2月1日
Published Date 2022/2/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002842
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光線過敏症は皮疹と発症年齢,症状が誘発された場所・状況などから疾患を類推し,光線試験をはじめ各種検査により診断を確定していきます.この推理と検証の過程に知的好奇心をくすぐられることから,光線過敏症は私の好きな分野の1つです.
最近,光線過敏症診療の中で興味深く感じた皮疹があります.それは小児の光線過敏症患者の顔にみられる小瘢痕です.図1と2はともに光線過敏症の精査依頼で受診した骨髄性プロトポルフィリン症と種痘様水疱症の患児です.この小瘢痕の臨床像から両疾患の鑑別ができるでしょうか? 光線過敏の症状が強い時期であれば,前者は潮紅や浮腫,小水疱が主体であり,後者は中心臍窩を有する小水疱や痂皮を呈するので,これらの鑑別はそれほどむずかしくないと思います.しかし,この小瘢痕のみで診断するのは意外とむずかしいと思います.両疾患の瘢痕形成に至る病態の違いを考えてみますと,骨髄性プロトポルフィリン症の小瘢痕は表皮下水疱に続いて生じたもので,種痘様水疱症の瘢痕は表皮から真皮上層の壊死に続き生じたものです.この病態の差を踏まえて改めて図1,2を見比べますと,骨髄性プロトポルフィリン症より種痘様水疱症の小瘢痕のほうが深さが比較的不均一で,かつ全体的にやや深いことに気づきます.もちろん両患児とも各種検査を行い確定診断するのですが,このような小瘢痕のわずかな違いから疾患の類推や鑑別ができれば楽しいと思いませんか.
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