就学前の発達障害のある,あるいはそのリスクのある幼児の対人コミュニケーション行動を多面的に観察・評価するためのツールが必要とされている.そこで,本研究では,計3つの下位領域と計31の項目からなる対人コミュニケーション行動観察フォーマット(FOSCOM)を開発し,その信頼性や妥当性を中心に検討した.まず,自閉性障害,自閉性障害以外の自閉症スペクトラム(ASD),非ASD,低リスク群で構成される145名の就学前児の標本に基づいて,診断分類別の検査得点の平均値差を検討したところ,概ねすべての群間で有意な差が認められた.また,因子分析の結果から,各下位領域項目群の一因子性が示唆された.
そして,信頼性については,まず内的整合性をα係数により評価し,次に5名の幼児の評定データを用いて評定者間・評定者内安定性の検証を行ったところ,いずれも実用上十分に耐えうる程度の高い信頼性が示された.