日本内視鏡外科学会雑誌 30巻1号 (2025年1月発行)

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原著

高齢者大腸癌に対するロボット支援手術の短期成績岩田　乃理子 , 塚本　史雄 , 金原　正太朗 , 遠藤　晴久 , 中島　康晃 , 絹笠　祐介 30巻1号 , 2025年1月 , pp.3-9

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◆要旨：ロボット支援手術を含む低侵襲手術の進歩は目覚ましいが，高齢者患者におけるエビデンスは未だ少ない．当院でロボット支援大腸癌手術を施行した80歳以上の患者（O群：56例）と80歳未満の患者（Y群：131例）の短期成績を比較検討した．O群で有意に併存症をもつ患者が多く，腫瘍径が大きい進行癌が多かった．直腸癌はO群で有意に永久人工肛門造設を伴う術式が多く（p＝0.012），術後在院日数が長かった（10日vs 7日，p＝0.001）．手術時間，出血量，術後合併症に有意差はなかった．高齢者大腸癌におけるロボット支援手術は，非高齢者と比較し術後合併症は同等であり，安全に施行可能であった．

腹腔鏡手術における基礎教育の簡便化・効率化を目指して—ウェブサイト手術学習教材の有用性研究西田　幸代 , 澤田　篤郎 , 木村　友和 , 伊藤　直樹 , 深瀧　恭子 , 樋之津　史郎 , 舛森　直哉 30巻1号 , 2025年1月 , pp.10-17

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◆要旨：【目的】若手泌尿器外科医の育成を支援する手術学習教材を開発し，その有用性を明らかにする．【方法】泌尿器科腹腔鏡手術を数分程度でまとめたクリップ動画集を掲載したウェブサイト教材を作成し，3つの大学病院とその関連施設で勤務する修練医を対象に有用性を探るアンケート調査を実施した．【結果】対象者39名のうち，2回以上視聴したのは20名であった．手術理解度・手術スキルの向上の可能性について，あると回答したのはいずれも18名（90.0％）で，多くはスマートフォンを利用し1回10分以下の視聴時間であった．【結論】短時間で学習できる教材は，若手泌尿器外科医の研鑽に有用であり，今後重要な教育方法となる可能性が示唆された．

症例報告

腹腔鏡下肝右葉切除後に発症した横隔膜ヘルニア嵌頓に対して腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った1例梅野　紘希 , 木下　雅仁 , 古谷　圭 , 兼定　航 , 近藤　潤也 , 爲佐　卓夫 30巻1号 , 2025年1月 , pp.18-23

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◆要旨：症例は89歳，男性．前医で肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝右葉切除術が施行された．術後5年4か月に上腹部痛を主訴に救急搬送された．腹部CT検査で胸腔内に結腸の脱出を伴う右横隔膜ヘルニア嵌頓を認め，緊急手術で腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った．背側の右横隔膜に欠損を認め，同部位より横行結腸と大網が右胸腔内に脱出し嵌頓していた．ヘルニア内容を還納すると虚血所見はなく温存可能であった．ヘルニア門は3-0 V-Loc^TMを用いて腹腔鏡下に連続縫合で閉鎖した．腹腔鏡下肝切除後の横隔膜ヘルニアは稀な合併症ではあるが，嵌頓すると重篤化する可能性があり，晩期合併症の1つとして念頭に置く必要がある．

Loeys-Dietz症候群に合併した臍ヘルニアに対しenhanced-view totally extraperitoneal法にて修復した1例藤沼　香栄 , 井上　賢之 , 塩澤　徹也 , 佐藤　寛丈 , 俵藤　正信 , 安田　是和 30巻1号 , 2025年1月 , pp.24-29

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◆要旨：症例は62歳，男性．背景に常染色体顕性（優性）遺伝の全身結合組織疾患であるLoeys-Dietz症候群があり，臍ヘルニアの診断で当科に紹介となった．脆弱な結合組織を有することから，メッシュを使用した修復が好ましいと考えられた．しかし腹腔内メッシュ留置による消化管との癒着は，大動脈解離・瘤破裂などの緊急手術時に消化管損傷のリスクになると考え，enhanced-view totally extraperitoneal（eTEP）法による修復方法を選択した．術後9か月，再発なく経過している．全身結合組織疾患に合併した臍ヘルニアに対し，メッシュを用いた内視鏡下修復術は有用と考えられ，文献的考察を含め報告する．

内視鏡的経鼻胆管ドレナージチューブを用いて術中に胆管交通部の確認を行い閉鎖した腹腔鏡下肝囊胞天蓋切除術を施行した巨大肝囊胞の1例浅井　宏之 , 佐藤　幹則 , 杉浦　弘典 , 越智　靖夫 , 春木　伸裕 , 篠田　憲幸 30巻1号 , 2025年1月 , pp.30-34

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◆要旨：症例は83歳，女性．右上腹部痛を主訴に来院した．CTで著明に腫大した肝囊胞を認め，感染性肝囊胞の診断で入院となった．経皮経肝囊胞ドレナージを施行したが，チューブをクランプすると再度囊胞が増大した．内視鏡的逆行性胆管膵管造影（ERCP）で胆管側から造影を行った後にCT検査を行い，囊胞内への造影剤の漏出を認めたため胆管との交通があることが確認された．腹腔鏡下天蓋切除術を行った．術前に内視鏡的経鼻胆管ドレナージ（ENBD）チューブを挿入し，術中にインジゴカルミンを注入することで胆管交通部を確認し閉鎖した．経過は良好で退院した．肝囊胞に対して胆汁漏出の有無や部位の確認のためにENBDチューブを留置し色素を注入する方法は有用な手術手技の1つと考える．

馬蹄腎を伴う直腸S状部癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術を施行した1例丹野　侑杜 , 工藤　泰崇 , 細部　大貴 , 藤本　善三 30巻1号 , 2025年1月 , pp.35-40

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◆要旨：症例は50歳，女性．検診で便潜血陽性を指摘された．下部消化管内視鏡検査で直腸S状部に15mm大の0-Ⅰs＋Ⅱc病変を認め，生検の結果は高分化型管状腺癌であった．腹部造影CT検査で馬蹄腎を認めた．下腸間膜動脈分岐部より尾側の大動脈と，左総腸骨動脈からそれぞれ1本ずつ腎癒合部へ流入する過剰腎動脈を認めた．尿管・性腺血管の走行異常は認めなかった．cT2N0M0 cStageⅠの術前診断で腹腔鏡下高位前方切除術D3郭清を行った．腎癒合部の隆起により下腸間膜動脈根部周囲で鉗子操作に制限を認めたが，上下腹神経叢・腰内臓神経は癒合腎腹側を走行しており，後腹膜下筋膜を背側に温存する通常の内側アプローチ剝離層で手術を安全に施行できた．

手術手技

Pfannenstiel切開を用いた臍を避けたポート配置による腹腔鏡下右側結腸切除と体腔内吻合大渓　隆弘 , 吉楽　拓哉 , 児玉　琢 , 小棚木　圭 , 里吉　梨香 , 宮澤　秀彰 30巻1号 , 2025年1月 , pp.41-47

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◆要旨：腹壁瘢痕ヘルニアを減少させる目的で，正中を避けた切開創が推奨される．臍を避けたポート配置による腹腔鏡下右側結腸切除と体腔内吻合の手技について報告する．cT3以下の結腸癌15例に適応し，肥満体型は6例，腹部手術既往は8例に認められた．恥骨上3横指の高さにPfannenstiel切開を行い，同部よりカメラポートを挿入する．他のポートは臍から離して平行四辺形型に配置する．全例で体腔内機能的端々吻合を選択した．術後腹腔内膿瘍が1例に認められた．全例で再発や腹壁瘢痕ヘルニアは認められていない．本法は腹壁瘢痕ヘルニアの併発率が高い臍部正中切開を避けつつ，肥満や手術既往のある症例でも安全に施行可能である．

video articles

Cerfolio's method変法におけるfissureless lobectomyの特徴道免　寛充 , 成田　翔 30巻1号 , 2025年1月 , pp.48-49

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要旨左下葉は尾側から順に，右上葉は前方から反時計周りに，それぞれ肺門処理を行う．ポート配置的に下葉のFLは円滑に遂行可能であり，上葉のFLは頭側が死角になりがちで少々の困難を伴う場合がある．

上腹部腹直筋離開を伴う臍ヘルニアに対して後鞘を縫合閉鎖するeTEP-RSの方法上野　知尭 , 今村　清隆 , 春田　英律 , 梅澤　昭子 , 関　洋介 , 黒川　良望 30巻1号 , 2025年1月 , pp.50-52

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要旨内視鏡を用いた腹膜外メッシュ留置術であるeTEP術後に上腹部膨隆を認めることがあり，後鞘切開による影響が示唆されている．今回われわれは，上腹部腹直筋離開を伴う臍ヘルニアに対して後鞘を縫合閉鎖するeTEP-RSの方法を提示する．

文献抄録

Surgeon stress, anxiety, and workload : a descriptive study of participant reported responses to fundamentals of laparoscopic surgery exercises 30巻1号 , 2025年1月 , pp.53-54

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目次 30巻1号 , 2025年1月 , pp.1

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欧文目次 30巻1号 , 2025年1月 , pp.2

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投稿時のチェックリスト 30巻1号 , 2025年1月 , pp.55

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編集後記仲田　興平 30巻1号 , 2025年1月 , pp.56

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　2021年8月から編集委員に加わらせていただき，早くも3年が経過しました．編集委員会は2か月に1回開催されており，この間，本誌でもさまざまな変化がありました．日本内視鏡外科学会総会優秀演題からの投稿，ビデオ論文の採用，そして今後は各専門分野のスペシャリストから総説の寄稿をいただくこととなり，本誌が内視鏡外科を専門とする先生方にとってますます有用な内容を提供できると感じております．

　また，学会発表を拝見しても，この3年間で発表内容が大きく進化していると実感しています．特に，ロボット支援下手術に関するセッションが増え，その内容も「ロボット手術の導入・定型化」といった基本的なテーマから，「トラブルシューティング」や「ロボット支援下手術の未来」など，多岐にわたるものへと発展しています．

基本情報

日本内視鏡外科学会雑誌
30巻1号
(2025年1月発行)

電子版ISSN：2186-6643 印刷版ISSN：1344-6703 日本内視鏡外科学会

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