日本内視鏡外科学会雑誌 17巻1号 (2012年2月)

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◆要旨:腹腔鏡補助下幽門側胃切除(以下,LADG)および幽門保存胃切除(以下,LAPPG)症例におけるドレーン留置の意義について検討した.対象と方法:2009年におけるLADG/PPG 228症例を対象として,ドレーン有群124例,無群104例の2群間で術後合併症,在院日数について比較検討した.結果:合併症発生率は13.9%,Grade 2以上(Clavien-Dindo分類)の発生率は8.3%で,ドレーン有群,無群との間に有意な差は認めなかった.術後在院日数は平均13.1日,有群vs無群は13.3 vs 13.0日で,やはり両群間に有意差を認めなかった.結論:LADG/PPGにおいてドレーン留置の有益性は見いだせなかった.

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◆要旨:【目的】当科で特発性血小板減少性紫班病(以下,ITP)に対して腹腔鏡下脾臓摘出術(以下,LS)を施行した25例について検討した.【対象】対象は男性7例,女性18例で,平均年齢40歳であった.【結果】術中開腹移行はなく,術後合併症として膵液漏を1例に認めた.治療後の血小板数10万以上をCR,5万以上をPR,5万未満をNRとすると,LSによるCRは 18例,NR は7例であった.またLS後の長期予後をみると,CR症例のうち6例(33%)にITPの再発がみられた.LS後1か月のCR群とNR群を比較すると,CR群は平均年齢が有意に低く(CR 34歳対PR 57歳),γ-グロブリン投与後の血小板数が多かった(CR 11.3万対NR 5.6万).長期寛解率は40歳未満の症例が40歳以上に比べて有意に寛解率が高かった.【考察】ITPに対するLSは若年者では長期寛解が期待できることが示唆された.

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◆要旨:【目的】シミュレーターを用いて,腹腔鏡下手術の初心者に対する評価基準構築の可能性を探った.【方法】後期研修医5名を対象に手術手技とシミュレーター手技を比較した.手術評価は技術認定の審査基準を用いた.シミュレーターは協調運動が必要な項目を選択し(タスク6,9),時間,手数,鉗子の移動距離,有効性などを点数化した.【結果】タスク9では手術手技との乖離を認めたが,タスク6では手術手技と相関がみられた.タスク6で,総得点と関連を持つ特定のパラメーターは見いだせなかった.【結論】初心者における手術手技評価をシミュレーターで代用できる可能性が示唆された.実際の評価には絶対的な基準の決定が必要である.

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◆要旨:患者は36歳,男性.2010年1月中旬,鮭を摂取し,4日後より右下腹部痛が出現した.近医にて抗生物質加療を受けたが改善に乏しく,当院に紹介となった.腹部造影CT検査にて回腸末端周囲に直径約4cmの膿瘍を疑う低濃度領域を認め,回腸末端炎,腹腔内膿瘍の疑いで入院・加療となった.抗生物質投与で炎症反応,腹痛は軽快したが,CT検査上,低濃度領域が残存していたため,腹腔鏡下手術を施行した.回腸が炎症性に一塊となっており,回腸部分切除術を行った.切除標本では膿瘍内に魚骨が存在しており,魚骨回腸穿通,腹腔内膿瘍と診断した.病理組織学的検査で慢性炎症性肉芽腫と診断された.術後経過は良好で術後8日目に退院となった.

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◆要旨:患者は56歳の女性.人間ドックの胸部X線検査にて異常陰影を指摘され,胸腹部CT検査にてMorgagniヘルニアを指摘された.大網をヘルニア内容とするMorgagni孔ヘルニアの診断にて単孔式腹腔鏡下修復術を行った.臍からSILSポート®を挿入した.胸骨背面にヘルニア門を認め,ヘルニア内容の大網は容易に腹腔内に還納が可能であった.ヘルニア門にComposix Mesh®を固定して手術を終了した.術後経過は良好で第7病日に退院,現在再発は認めていない.Morgagni孔ヘルニアに対する単孔式腹腔鏡下手術を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:後螺旋型合流胆囊管にMirizzi症候群を発症した症例を経験した.患者は急性胆囊炎にて入院した90歳,女性.胆囊管が総胆管の後面をまわって合流している胆囊頸部に胆石が嵌頓し,結石前面にある総胆管を圧排し,それが原因で胆管の狭窄と結石嵌頓による急性胆囊炎を起こしていた.抗生剤にて軽快せず,腹腔鏡下胆囊摘出術を行った.手術は順行性に胆囊を肝床部から切離した.肝床部には膿状の液体が貯留し,総胆管の後面を胆囊頸部に沿って剝離した後,胆囊頸部で胆囊を切離した.術後行ったDIC-CTで狭窄は解除された.

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◆要旨:患者は40歳代,女性.健康診断で肝腫瘍を指摘され当院に紹介となり,術前検査で肝S2表面近くに径16mm大の腫瘍を認め,hepatocellular carcinomaやangiomyolipoma(以下,AML)が鑑別疾患に挙がったが確定診断には至らず,診断および治療目的に腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.病理組織学的所見では淡明な胞体から成る類上皮細胞が腫瘍の大半を占めHMB-45染色とSMA染色が陽性となり,AMLと最終診断された.良悪性の鑑別が画像診断にて困難な小さな肝腫瘍に対して肝表に近い悪性腫瘍であった場合,生検では播種を起こす危険性もあり,腹腔鏡下で腫瘍を切除すれば侵襲が小さく,播種のリスクもなく有用な診断を兼ねた治療であると考えられたので報告する.

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◆要旨:患者は72歳,男性.既往歴として前立腺全摘術,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行されていた.2008年,心窩部痛を主訴に当院を受診し,術後癒着性イレウスの診断にて入院となった.保存的に加療したが改善をみず,開腹手術を施行した.腹腔内を観察すると,金属性コイル式タックが小腸に2か所ねじ込むように刺さり小腸が固定され,腸管が捻転することで腸閉塞を起こしていた.腹腔鏡下ヘルニア修復術時に使用した金属性コイル式タックが遅発性に自然落下して起きた腸閉塞であった.術中にステイプルを落下させないことと,将来的にステイプルが腹腔内に脱落しないような固定が重要であると思われた.ステイプルを遊離腹腔内に落下させた場合には,可能な限り回収する必要があると考えられる.

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◆要旨:患者は58歳,男性.既往歴は大動脈解離(DeBakey IIIb),高血圧,心房細動,脊椎炎,慢性腎炎より腎不全に至り腹膜透析中であった.上腹部痛を主訴に近医を受診し,胆囊炎,胆石症と診断された.その後も腹痛を繰り返したため当院腎臓科に紹介となった.患者が術後も腹膜透析治療の継続を強く希望したため,前腕にシャント造設後に施行する方針とし,外科に紹介となった.手術時間は1時間45分,出血量は15mlで損傷なく終了し,術後1年4か月経過した現在も順調に腹膜透析治療中である.腹膜透析患者に対して腹腔鏡下手術を施行された症例はほとんどなく,今回,筆者らは貴重な症例を経験したため術後経過も含めて報告する.

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◆要旨:患者は60歳代,男性.主訴は黒色便.大腸内視鏡検査にてS状結腸に7mmのⅠspポリープを認めた(Group3, adenoma).10か月後の大腸内視鏡検査でポリープは3cmに増大し,sm浸潤が強く疑われた.生検では間葉系悪性腫瘍と診断した.術前画像検査で転移はなく,腹腔鏡下S状結腸切除術(D3)を施行した.組織学的には,異型の強い大型核や多核の紡錘形腫瘍細胞が束状に交錯しながら増殖し,免疫染色でh-caldesmon(+),vimentin(+++)と一部で平滑筋への分化が示唆され,平滑筋肉腫と診断された.腹腔鏡下手術手技が確立している施設において,5cm以下の大腸平滑筋肉腫に対する腹腔鏡下手術は,有用な治療法であると考えられた.

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◆要旨:患者は13歳,女児で,壊疽性虫垂炎穿孔に対して腹腔鏡下虫垂切除術を施行されたが,約3か月後,右下腹部痛を主訴に来院となった.白血球上昇を認め,CT上遺残糞石・膿瘍形成と診断した.保存的加療を行ったが炎症が増悪したため,糞石除去を目的に腹腔鏡下手術を行った.腹腔内を検索したが遺残糞石は認めず,回腸から連続した管状構造を認め,メッケル憩室と診断した.回腸は癒着により授動が困難であったため,メッケル憩室根部を自動縫合器で切離した.内部には腸石が存在し,病理診断でメッケル憩室炎と診断された.壊疽性虫垂炎後の腸石を伴うメッケル憩室炎は報告が少なく,文献的考察を加え報告する.

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◆要旨:患者は55歳,女性.前日より持続する下腹部痛を主訴に受診した.下腹部中心に筋性防御を伴う圧痛,反跳痛を認め,血液検査では炎症反応の上昇を認めた.腹部造影CTでは,下腹部ほぼ正中に周囲の脂肪織濃度の上昇を伴う腫瘤像を認め,Meckel憩室穿孔による急性腹膜炎の診断にて腹腔鏡下手術を施行した.虫垂に炎症所見は認めず.腹腔内には膿性腹水を多量に認め,回腸末端より約60cm口側の回腸腸間膜側に炎症を伴う腫瘤を認めたため,腫瘤を含む回腸部分切除術を施行した.病理組織検査では穿孔性腸管重複症の診断であった.成人腸管重複症,なかでも腹膜炎で発症するものは稀であり,その診断・治療に腹腔鏡は非常に有用であった.

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◆要旨:Transabdominal preperitoneal approach(以下,TAPP)の利点は,気腹によるすべてのヘルニア門を確認し,同時に修復可能であることなどが挙げられる.一方,近年,単孔式腹腔鏡下手術が急速に広がり,鼠径ヘルニア修復術にも行われるようになってきているが,技術的難易度が高くTAPPでは腹膜修復に難渋することが多い.筆者らはParietex ProGripTM meshを使用しtackingをなくすことを可能とし,tackingに起因する合併症をなくすことを可能とした.さらには腹膜修復に独自の工夫をすることにより腹膜修復にかかる手術時間の短縮を可能にしたため,その手術手技を報告する.

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欧文目次

2010(平成22)年度会計監査報告書

2011(平成23)年度会計監査報告書

評議員申請について

EVENT NEWS

「日本内視鏡外科学会雑誌」投稿規定

著作権譲渡同意書ならびに誓約書

編集後記 坂井 義治
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 会員の皆様,明けましておめでとうございます.

 昨年は東日本大震災,西日本の大水害など大きな自然災害に見舞われましたが,今年は復旧の速度がより一層早くなることを期待しています.そのためには当然のことながら予算が必要となります.世界的に停滞した経済状態の中でこの予算を生み出すことは大変困難ではありますが,政府には最優先して迅速に対処して欲しいと思います.そのような状況の中で,社会福祉・医療費はどうなるのでしょうか.消費税の引き上げの議論が混沌としている中で,医療予算の拡大を求めることはきわめて難しいと思われます.世界の中で,癌に対する分子標的薬が公的保険の対象として認められたのは日本だけと聞いていますが,さらにロボット手術が保険収載されるとどうなるのでしょうか?

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第25回日本内視鏡外科学会総会を下記の通り開催いたします.会員の皆様には多数ご参加下さいますようお願い申し上げます.

第25回日本内視鏡外科学会総会 会長 松本 純夫

会 期:2012年(平成24年)12月6日(木)~8日(土)

会 場:パシフィコ横浜

    〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1

    TEL 045-221-2155

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
17巻1号 (2012年2月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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