CLINICAL CALCIUM 27巻6号 (2017年5月発行)

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特集　幹細胞システム

Review

骨幹細胞システム溝口利英 27巻6号 , 2017年5月 , pp.779-787

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　骨は生体を支える運動器として機能すると同時に，その内部に満たされた骨髄組織では造血が営まれている。骨髄間葉系幹細胞は，骨組織の供給と造血支持の両方を司り，生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。骨髄における間葉系幹細胞の存在は古くから示されてきたが，その生体内での詳細についてはよく分っていなかった。近年，遺伝子改変マウスを用いた解析により，血管周囲の間質細胞が間葉系幹細胞として働くこと，そしてその分化様式が成長期と成体期では異なる可能性が示されている。さらに，間葉系幹細胞の分化の方向性を決定するメカニズムに関する知見も報告されており，代謝性骨疾患および造血器疾患に対する新規治療法の確立に繋がることが期待される。

筋幹細胞システム湯浅慎介 27巻6号 , 2017年5月 , pp.789-794

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　成体骨格筋には幹細胞として筋衛星細胞が存在し，骨格筋損傷などの際の恒常性維持に働いている。すなわち，静止期にある筋衛星細胞は骨格筋損傷に応答し，活性化し，分化・増殖し，融合した成熟骨格筋線維へとなり，筋肉の再生が完成する。我々は，G-CSF受容体はマウス胎仔骨格筋前駆細胞や成体骨格筋再生過程に発現することを見出した。また慢性骨格筋疾患である筋ジストロフィーにおいては，若年期には盛んに骨格筋再生が認められるが，徐々に再生能力が低下し重症化する。筋ジストロフィーモデルマウスにG-CSFを投与すると，骨格筋再生が強く促されることを見出した。本稿では我々の発見した知見を中心に，骨格筋幹細胞と臨床応用に関して概説する。

脂肪幹細胞システム大石由美子 , 真鍋一郎 27巻6号 , 2017年5月 , pp.795-801

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　脂肪組織は白色脂肪組織と褐色脂肪組織に大別される。前者はエネルギーを蓄積し，また，レプチンやアディポネクチンといった生理活性物質（アディポカイン）を分泌し，代謝等を制御する主要な内分泌臓器でもある。褐色脂肪組織や白色脂肪組織中に認められるベージュ脂肪細胞は熱産生を行い，体温の維持や代謝の制御に寄与する。脂肪前駆細胞からの脂肪細胞の分化（脂肪細胞新生）は，脂肪組織における脂肪細胞数を維持するだけでなく，肥満に伴う脂肪組織の拡大を担う。また寒冷刺激はベージュ細胞数の増加を誘導する。このように脂肪細胞新生は脂肪組織の発生だけでなく，生体における恒常性の維持にも重要であり，さらにメタボリックシンドロームにおける脂肪組織機能異常にも関与する。脂肪前駆細胞には多様性があり，また，免疫細胞や血管，神経との相互作用の中で増殖・分化する。脂肪前駆細胞の増殖と分化を制御する機序の理解は，肥満・メタボリックシンドロームの新たな治療標的の同定につながるだけでなく，再生医療の観点からも重要である。

Seminar

毛包幹細胞システム沢津橋俊 27巻6号 , 2017年5月 , pp.803-808

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　毛包幹細胞は毛周期といわれる周期性を有しながら，分裂と分化によって毛をつくるために必要な細胞を供給している。また毛包は再生のみならず，近年では老化のプログラムを理解するうえでも有用なモデルであることが示唆されつつある。そこで，本稿では最新の毛包幹細胞研究を紹介する。

腸幹細胞システム石橋史明 , 渡辺守 , 岡本隆一 27巻6号 , 2017年5月 , pp.809-814

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　腸管上皮において陰窩底部に位置する幹細胞は，絨毛側に向かって分泌型細胞，吸収型細胞の２系統の細胞集団を供給し続ける。腸管は人体の中でも最も早くターンオーバーする組織であるが，恒常状態における幹細胞の分化・増殖能は周囲環境の様々な因子により規定されることが明らかにされてきた。さらに，上皮傷害時に幹細胞プールが減少した際には，堅牢なバックアップ機構が機能することも近年証明されてきた。本稿では，腸管上皮研究における近年のブレイクスルーとしての３次元培養法の確立に触れつつ，最新の知見を概説したい。

神経幹細胞の運命制御におけるlncRNAの役割木下隆太 , 岸雄介 , 後藤由季子 27巻6号 , 2017年5月 , pp.815-822

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　近年の解析技術の進歩により，生体内においてタンパク質として翻訳されることのないRNA，すなわちnon-coding RNA（ncRNA）が機能的な分子として働くことが明らかになってきた。ncRNAの中でも200ヌクレオチド以上を有するものはlong ncRNA（lncRNA）と呼ばれるが，これらlncRNAが神経幹細胞の運命制御に関与していることが明らかになってきた。本稿では，long ncRNAの機能について，神経幹細胞の運命制御という観点から具体例をあげながら解説し，今後の展望について述べる。

造血幹細胞のストレス応答メカニズム田久保圭誉 27巻6号 , 2017年5月 , pp.823-828

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　造血幹細胞は定常時には細胞周期が静止状態で，分裂することはまれである。その一方，様々なストレスが負荷されると活発に増殖して分化血液細胞を供給する。こうしたストレス負荷時には，造血幹細胞とその近傍の骨髄微小環境（造血幹細胞ニッチ）が特性を変えて，状況ごとの血液細胞産生に最適化される。近年，こうしたストレス造血時に起こるイベントの形態学的・分子遺伝学的理解が深まっている。本稿では，これらの研究の進展から得られたストレス造血における造血幹細胞とニッチの働きと分子メカニズムについて，最新の知見も含めて概説したい。

Topics

造血幹細胞移植後のGVHDによる腸幹細胞とそのニッチ傷害に起因する腸管免疫システムの破綻早瀬英子 , 豊嶋崇徳 27巻6号 , 2017年5月 , pp.829-833

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　造血幹細胞移植は造血器悪性腫瘍などの根治療法の一つであるが，graft-versus-host disease（GVHD）や感染症が合併症として問題となる。消化管はGVHDの標的臓器であり，腸陰窩基底部に存在する腸幹細胞やPaneth細胞が傷害され，腸管粘膜のバリア機能の破綻や腸内細菌叢の異常をもたらし，GVHDをさらに増悪させる。近年，マウスの骨髄移植モデルにおいてR-Spondin1とinterleukin-22がGVHDによる傷害から腸管組織のホメオスタシスを再生する因子として報告された。消化管GVHDの標的細胞のバイオロジーを理解し，これらの回復・保護に努めることは非常に重要である。

がん微小環境におけるSASPの役割大谷直子 27巻6号 , 2017年5月 , pp.835-843

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　細胞に強いDNA損傷が生じた際に誘導される不可逆的増殖停止状態を細胞老化と呼ぶ。細胞老化は発がんの危険性のある細胞を増殖させないために，生来細胞に備わった生体防御機構である。しかし，細胞老化を起こした細胞は死滅せず，長期に生体内に生存し，サイトカインやプロテアーゼ，増殖因子等，様々な分泌タンパク質を産生することが明らかになり，この現象はSASP（senescence-associated secretopry phenotype：細胞老化随伴分泌現象）と呼ばれている。この分泌因子の性質から，SASPががん微小環境に生じた場合，細胞のリプログラミングや発がんに促進的に働く可能性が示唆されている。

疾患特異的マクロファージ佐藤荘 27巻6号 , 2017年5月 , pp.845-850

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　100年以上前に発見されたマクロファージは，最近まで体内には１種類しかないと考えられてきた。しかし近年の研究から，この細胞は疾患の発症に関わる様々なサブタイプが存在する可能性が考えられている。今回，我々はbioinformaticsの技術，及びimagingの技術を用いて，線維症の発症に関わるマクロファージの新しいサブタイプを同定し，その分化メカニズムと線維症への寄与の研究を行ったので，本稿にて報告する。

ヒト間葉系幹細胞の基礎と臨床三浦康生 27巻6号 , 2017年5月 , pp.851-856

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　ヒト間葉系幹細胞（mesenchymal stromal/stem cell：MSC）は免疫調整・組織再生・造血支持を主な治療特性とし，様々な疾患に対する細胞治療のセルソースとしての臨床開発が進められている。MSCは骨髄などさまざまな組織から分離され，拡大培養されたのちに全身性あるいは局所に投与される。生体内でMSCは組織支持細胞として機能し，骨では骨芽細胞に分化してリモデリングに関与している。また，MSCと骨芽細胞の間の分化段階にある細胞は特徴的な造血支持機能を有し，parathyroid hormoneなどの薬物による骨分化刺激によってMSCをそのような細胞に誘導することで，疾患治療への応用の可能性が示唆されている。

Preface

巻頭言～幹細胞システム～生体の横糸と縦糸片山義雄 27巻6号 , 2017年5月 , pp.777-777

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理解を助けるトレーニング問題（本号特集「幹細胞システム」関連）

腸管上皮幹細胞について石橋史明 27巻6号 , 2017年5月 , pp.860-861

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（2017年６月号特集：「幹細胞システム」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

日本骨代謝学会×医薬ジャーナル社　共同企画　骨ルポ　～Discovering the future～〈１〉

演題１．Regulation of Appetite by the Skeleton.演題２．Sclerostin influences body composition by regulating catabolic and anabolic metabolism in adipocytes. 寺島明日香 27巻6号 , 2017年5月 , pp.862-864

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ASBMR 2016 REPORT 2016年9月16日～19日 Georgia World Congress Center（米国ジョージア州アトランタ） Lineup 演題１．Regulation of Appetite by the Skeleton. 演題２．Sclerostin influences body composition by regulating catabolic and anabolic metabolism in adipocytes. （本企画は，世界中で開催される骨・運動器系の関連学会に参加された若手研究者・臨床家の先生方による学会レポートを，ご紹介させていただくものです。）

ASBMR 2016 REPORT 高士祐一 27巻6号 , 2017年5月 , pp.865-867

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ASBMR 2016 REPORT 2016年9月16日～19日 Georgia World Congress Center（米国ジョージア州アトランタ） Lineup 演題１．Role of FGF9 in Promotion of Early Osteocyte Differentiation and as a Potent Inducer of FGF23 Expression in Osteocytes. 演題２．Cathepsin K is Directly Involved in Osteocyte Lacunae Remodeling and in the Osteocyte-dependent Skeletal Responses to Mechanical Loading and Unloading. 演題３．The Long-Term Odanacatib Fracture Trial（LOFT）：Cardiovascular Safety Results. （本企画は，世界中で開催される骨・運動器系の関連学会に参加された若手研究者・臨床家の先生方による学会レポートを，ご紹介させていただくものです。）

演題１．Hypoxia Signaling-Induced Glycolytic Metabolism in Osteoblast can Affect Systemic Glucose Homeostasis by Increasing Glucose Utilization by the Skeleton. 演題２．Regulation of appetite by the skeleton. 田井宣之 27巻6号 , 2017年5月 , pp.868-870

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ASBMR 2016 REPORT 2016年9月16日～19日 Georgia World Congress Center（米国ジョージア州アトランタ） Lineup 演題１．Hypoxia Signaling-Induced Glycolytic Metabolism in Osteoblast can Affect Systemic Glucose Homeostasis by Increasing Glucose Utilization by the Skeleton. 演題２．Regulation of appetite by the skeleton. （本企画は，世界中で開催される骨・運動器系の関連学会に参加された若手研究者・臨床家の先生方による学会レポートを，ご紹介させていただくものです。）

演題１．Vitamin D metabolism and action in human mesenchymal stem cells：Effects of fibroblast growth factor 23. 演題２．Therapeutic Effect of Alendronate on Skeletal Muscle Atrophy in vitro and in vivo. 渡邊隆一 27巻6号 , 2017年5月 , pp.871-873

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ASBMR 2016 REPORT 2016年9月16日～19日 Georgia World Congress Center（米国ジョージア州アトランタ） Lineup 演題１．Vitamin D metabolism and action in human mesenchymal stem cells：Effects of fibroblast growth factor 23. 演題２．Therapeutic Effect of Alendronate on Skeletal Muscle Atrophy in vitro and in vivo. （本企画は，世界中で開催される骨・運動器系の関連学会に参加された若手研究者・臨床家の先生方による学会レポートを，ご紹介させていただくものです。）

連載　注目の海外文献（62）

１．ユビキチンリガーゼHuwe1は造血幹細胞の維持とリンパ球へのコミットメントを制御する２．敗血症誘導性骨芽細胞の欠失は免疫不全を引き起こす寺島明日香 27巻6号 , 2017年5月 , pp.874-875

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１．ユビキチンリガーゼHuwe1は造血幹細胞の維持とリンパ球へのコミットメントを制御する２．敗血症誘導性骨芽細胞の欠失は免疫不全を引き起こす

１．SIKは骨細胞の副甲状腺ホルモンに対する応答性を制御する２．破骨細胞活性に関連したpH変動のリアルタイム生体内イメージング林幹人 27巻6号 , 2017年5月 , pp.876-878

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１．SIKは骨細胞の副甲状腺ホルモンに対する応答性を制御する２．破骨細胞活性に関連したpH変動のリアルタイム生体内イメージング

バックナンバー 27巻6号 , 2017年5月 , pp.899-903

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特集予告　7月号、8月号 27巻6号 , 2017年5月 , pp.905-905

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基本情報

CLINICAL CALCIUM
27巻6号
(2017年5月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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第2位大腿骨近位部骨折のリハビリテーション尾﨑まり CLINICAL CALCIUM 25巻 4号 pp. 577-584 (2015年3月28日) 医薬ジャーナル社
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特集 幹細胞システム

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理解を助けるトレーニング問題（本号特集「幹細胞システム」関連）

日本骨代謝学会×医薬ジャーナル社 共同企画 骨ルポ ～Discovering the future～〈１〉

連載 注目の海外文献（62）

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日本骨代謝学会×医薬ジャーナル社　共同企画　骨ルポ　～Discovering the future～〈１〉

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