CLINICAL CALCIUM 23巻2号 (2013年1月)

特集 骨と多臓器ネットワーク

Preface

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 慢性腎臓病(CKD)において腎機能低下が進展すると,あらゆる骨ミネラル代謝異常が出現する。このCKDに伴う骨ミネラル代謝異常は,骨障害や心血管障害を引き起こすことで患者予後に影響を及ぼす。近年になり同定された線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)23が,この病態を解明する新たな知見を我々に与えている。CKDにおける,FGF23とKlothoの変化に伴う骨ミネラル代謝異常に関しての病態の解明が期待される。

骨と中枢神経系 竹田秀
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 レプチンによる骨代謝調節機構の発見を契機として,中枢神経系で発現するさまざまな分子が骨代謝にかかわることが明らかとなり,骨と中枢神経系の関連が注目されている。なかでも,交感神経系や副交感神経系はそれぞれ独立して骨代謝を調節すると同時に,互いの活動性を調節することで,包括的に骨代謝を調節する。また,食欲調節に関わるペプチド群の骨代謝調節作用も報告された。

骨と糖・脂質代謝 金沢一平 , 杉本利嗣
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 糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病では骨折リスクが高まっていること,逆に骨には糖・脂肪代謝を制御する内分泌臓器としての役割があることが明らかとなってきた。糖尿病の骨脆弱性惹起因子として,高血糖や終末糖化産物AGEs,インスリン作用低下などが重要な要因となっている。また,脂質異常症と骨粗鬆症の関連性では高LDL-C血症が骨折リスクとなる可能性が考えられている。脂肪細胞から分泌されるアディポカインは糖・脂質代謝に重要な役割を担っているが,骨代謝も制御することが報告されている。一方で,骨から分泌されるオステオカルシンには,インスリン・アディポネクチン産生を介した糖・脂肪代謝改善作用があることが明らかとなっている。

Seminar

骨代謝と血管石灰化 風間順一郎
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 高齢者,糖尿病患者,慢性腎臓病患者などではしばしば骨量減少と血管石灰化の合併が認められる。これが共通のリスクファクターを共有しているためにそう見えるだけなのか,それとも明確な因果関係を持つ関係であるのかはよくわかっていない。メンケベルグ型中膜石灰化は血管骨化と呼ぶべき特殊な病態である。そこが石灰化をする前に,既に血管骨化は始まっている。したがって,骨量減少との因果関係を考えることは容易ではない。

下垂体ホルモンと骨 竹内靖博
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 甲状腺ホルモンやエストロゲンは,骨代謝において重要な役割を果たしている。最近の研究から,これらのホルモンを制御する下垂体前葉ホルモンのTSH(甲状腺刺激ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)も直接的に骨吸収や骨形成に関与する可能性が明らかとなった。さらに,下垂体後葉ホルモンのオキシトシンとバゾプレッシンにも骨代謝調節作用のある可能性が示唆されている。しかしながら,これらのホルモンが,ヒトの骨代謝においてどのような生理的役割を果たしているか不明な点も多く,今後の検討課題として残されている。

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 副甲状腺ホルモン(PTH)の骨への作用は,骨芽細胞系の細胞における受容体PTH1Rを介した複数のシグナル経路の結果としてあらわされる。生理的レベルのPTHは,主としてRANKL(receptor activator of NF-κB ligand)発現誘導を介した破骨細胞分化と活性化による骨吸収促進によって,骨からカルシウム・リンが動員される。間歇的な薬理的濃度のPTHは,分化段階の早い骨芽細胞前駆細胞の増殖と骨芽細胞の分化促進,アポトーシスの抑制に加えて,骨細胞における骨形成抑制因子の分泌を抑制することで,骨形成を促進する。リガンド投与法や標的細胞の分化段階と培養状況によって左右される薬理作用の相違を,明快に説明する分子機構の理解は未だ確立されていない。

性ホルモンと骨 今井祐記
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 近年の目覚ましい骨代謝研究の発展から,骨代謝は,多臓器による複雑なネットワークにより制御されていることが明らかとなってきた。その要素の一つとして,内分泌制御機構の一部である性ホルモンによる骨代謝調節が挙げられる。主な性ホルモンとして,女性ホルモンであるエストロゲンと男性ホルモンであるアンドロゲンが知られている。性ホルモンの欠乏は骨量減少を誘導,その補充により,様々な有害事象が懸念されるものの,骨量回復を認めることから,性ホルモンが骨量維持に重要な役割を果たしていることは明らかである。  本稿では,性ホルモンによる直接的および間接的骨代謝調節メカニズムについて概説する。

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 骨の動的な恒常性は,破壊と形成のバランスにより保たれ,常に骨を新しく作り替えている。この再構築は“骨リモデリング”と呼ばれ,強靭な骨組織の維持のみならず,生命維持に必須なミネラルの代謝器官である骨を巧妙に制御している。骨を構成する細胞,破骨細胞,骨芽細胞,骨細胞は,細胞間コミュニケーションによって骨リモデリングを制御しており,このバランスの破綻は,様々な骨疾患に繋がる。破骨細胞と骨芽細胞が骨表面で機能する一方で,骨に埋没した骨細胞は,細胞突起によって骨内で骨細胞同士,または骨表面の細胞と密接に接触していることから,骨リモデリングを制御していると考えられる。骨リモデリングの制御機構の解明は,骨の生理および病態を理解する上で極めて重要であると考えられる。

Therapy

グルココルチコイドと骨 田中良哉
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 合成グルココルチコイド(ステロイド薬)はコルチゾールと同様,グルココルチコイド受容体に結合して核内へ移行して薬理作用を発揮すると同時に,GRE領域を有する遺伝子の転写を介して副作用を生ずる。骨代謝系では,ステロイド薬は主に骨芽細胞や骨細胞を標的としてアポトーシスを誘導し,骨密度,骨質,骨微細構造を減衰して骨代謝異常,すなわち,骨粗鬆化を促進し,脆弱性骨折を招く。ステロイド性骨粗鬆症はステロイド薬の副作用の約25%を占める。したがって,ステロイド性骨粗鬆症は,的確な管理と予防が必要である。ビスホスホネートは,ステロイド性骨粗鬆症において骨密度と骨微細構造を改善し,骨折発生率を制御し,一次予防効果も報告される。PTH製剤や抗RANKL抗体の有用性も示されている。

呼吸器疾患と骨 平井豊博
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 呼吸器診療における骨との関係は,ステロイド性骨粗鬆症のように疾患の治療に関連したものだけでなく,COPD(慢性閉塞性肺疾患)における全身性炎症のように,呼吸器疾患そのものが骨代謝異常に関係していることが明らかになり,近年注目されてきている。しかし,わが国における呼吸器疾患と骨粗鬆症や骨折との関係,管理法や治療方針については,エビデンスがまだ乏しく確立されていないのが現状である。高齢化社会における呼吸器診療を鑑みると,骨代謝異常のような呼吸器以外の臓器にも注意をして診療していくことが必要であり,今後のさらなる研究が待たれる。

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 消化器疾患のうち,消化管の難治性炎症性病変を形成する炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)では,骨密度の低下が高頻度に起こることが知られている。IBDにおける骨密度低下の一因は,ステロイドの使用にあるが,それ以外に栄養摂取の減少,消化管における吸収不良,腸管炎症を含めた免疫系の活性化などが関与している。IBD患者では,ビタミンDやKの充足率が低く,骨密度低下の要因になっている可能性があり,腸管炎症の増悪自体にも関わっていることが示唆されている。

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 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)では,慢性炎症を伴う免疫系の異常により破骨細胞が活性化され,結果,傍関節性骨粗鬆症や関節局所の骨破壊が発生する。加えてステロイドなどの薬剤や身体活動性の低下といった複数の要因により全身性骨粗鬆症をきたし,骨折リスクが高くなる。RAの治療においては,疾患装飾性抗リウマチ薬(DMARDs)や生物学的製剤を使用し骨破壊の原因となる炎症を抑制し,骨粗鬆症治療薬を組み合わせて全身性骨粗鬆症を改善させ,骨折の危険性を軽減することが重要である。

血液疾患と骨 安倍正博
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 多発性骨髄腫や骨原発リンパ腫では,腫瘍細胞が浸潤している骨局所で種々の骨吸収促進因子および骨形成抑制因子を産生することにより,骨吸収と骨形成のバランスが骨吸収優位になり,骨破壊をきたす。一方,POEMS症候群(polyneuropathy,organomegaly,endocrinopathy,M-protein,skin changes)や原発性骨髄線維症などでは骨硬化性病変がもたらされる。これらの腫瘍性疾患に対しては抗腫瘍療法とともに骨病変に対する対策を行う。また,成人T細胞白血病/リンパ腫などでは腫瘍細胞の骨への浸潤がなくても,腫瘍進行に伴う腫瘍随伴症候群として骨粗鬆症や高カルシウム血症をきたす。高カルシウム血症は,進行すれば重篤な状態になるため迅速な対応が必要である。

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 神経性食欲不振症は,著しいやせを呈する若い女性の心身症である。低体重,低栄養,骨形成因子であるインスリン様成長因子- I の低下,強力な骨吸収抑制因子であるエストロゲンの低下,高コルチゾール血症などの内分泌異常などの危険因子を有し,骨粗鬆症は頻度の高い合併症である。骨代謝は体重依存性で,超低体重者の骨代謝の特徴は骨形成の低下と骨吸収の亢進である。50%にビタミンD不足が,43%にビタミンK不足があり,活性型ビタミンD3やビタミンK2は骨密度の低下を阻止できる。エストロゲンは超低体重者のみで有効である。骨質マーカーは30歳以上の患者で高く,骨質の劣化があると推測される。

理解を助けるトレーニング問題

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(2013年2月号特集:「骨と多臓器ネットワーク」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい) ※PDFでは,本企画(理解を助けるトレーニング問題)の本号分すべてをご覧になれます。

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(2013年2月号特集:「骨と多臓器ネットワーク」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい) ※PDFでは,本企画(理解を助けるトレーニング問題)の本号分すべてをご覧になれます。

連載

注目の海外文献(10) 井上大輔
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Lineup 1.Lrp5は骨局所で機能することにより骨量を調節する 2.原発性アルドステロン症における骨代謝異常 3.マウスにおいて高脂血症は酸化脂質を介してPTHの骨量増加作用に対する抵抗性をもたらす

バックナンバー

特集予告(3月号,4月号)

基本情報

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CLINICAL CALCIUM
23巻2号 (2013年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0917-5857 医薬ジャーナル社

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