検査と技術 49巻2号 (2021年2月)

病気のはなし

胃食道逆流症(GERD) 小野 真史
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Point

●胃食道逆流症(GERD)は逆流性食道炎(RE)と非びらん性GERD(NERD)に分類される.

●GERDは胸やけ・呑酸といった定型的症状と,胸痛や喘息様症状といった非定型的症状が認められる.

●症状からの診断には問診票が有用であり,内視鏡検査などの検査を追加することで診断を行っている.

●生存率には影響しないがQOLが下がるため治療は必要である.

技術講座 輸血

シリーズ 輸血検査の進め方と対応・2

不規則抗体検査 道野 淳子
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Point

●判別困難な不規則抗体は,吸着解離など抗原抗体反応を利用したり,反応温度など抗体の性状を利用したり,赤血球膜を化学処理したりすることで同定に導く.

●不適切な検査法によって抗体の検出感度が下がったり,誤った抗体が判定されたりしないよう,正しい検査法を身につける.

●不規則抗体検査は,輸血療法を行ううえで重要な検査であるとともに,指針やガイドラインを遵守することが大切である.

技術講座 生理

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Point

●検査の意図を考える.

●画像保存の重要性を認識する.

●常に第三者に読影されることを意識する.

●撮影手法とマニュアル導入により客観性は大幅に改善される.

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Point

●GLSは心筋が収縮期にどれだけ長軸方向に縮んだかを見る指標で,基準値は20%以上(絶対値)である.

●GLSはEFでは検出できない早期心筋障害を捉えることができる重要な収縮能指標である.

●GLSはさまざまな心疾患の経過観察や予後予測に有用である.

●GLSには機種間,解析装置間差があるため経過観察には同一装置を使用する.

技術講座 微生物

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Point

●輸入真菌症の起因菌は一歩間違えば自分だけでなく,病院全体を巻き込んだ感染事故に発展します.“これは怪しいかも”と疑いをもつ慎重さこそが大切です.

●疑いをもつためには,海外渡航/滞在歴(ヒストプラスマ症を除く)と菌の関係を理解していること,そして特徴には乏しいものの,これらの菌種のコロニーの概観(一部は特徴的)を知っておく必要があります.

●疑ったら遠慮なく専門家と相談しましょう.培養同定による診断は最後の手段です.主治医と連携をとって一歩一歩慎重に検査を進めることが大切です.

トピックス

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はじめに

 近年,病理検体を用いた遺伝子関連検査は,コンパニオン診断を主体として拡充が続いており,次世代シークエンサー(next generation sequencer:NGS)を用いた解析では,非小細胞肺癌のコンパニオン診断やがんゲノム医療のプロファイリング検査が保険収載される状況となっている.病理検体を用いた遺伝子関連検査は,病理検査室で作製されるホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded:FFPE)標本を外部の検査会社へ委託する形をとっていることが多いが,自施設で実施する医療機関も増えてきている.

 本稿では,医療機関において分子病理検査室を立ち上げる際のポイントを述べる.

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酸化ストレスと酸化型アルブミン

 酸化ストレスは癌,動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病,老化など,多くの疾患と関連していると考えられ多くの報告がなされているが,実用的なバイオマーカーは現在のところ存在しない.一方,アルブミンは血液のみならず,リンパ,唾液,涙など,体内に広く存在し,血管内プールが約40%,血管外プールが約60%である.そのため,アルブミンの糖化や酸化は体全体の糖化や酸化の状態を反映すると考えられる.

 図1にヒトアルブミンの糖化部位と酸化部位を示す.アルブミン分子においては,主として4カ所のリジン(lysine:Lys)が糖化され,Cys(cysteine)34が酸化される.アルブミン分子中には35個のCysが存在するが,このうち34個のCysは分子内近隣のCysと17対のジスルフィド結合を形成し,Cys34のみが分子内でのジスルフィド結合に関与せず単独で存在している.

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はじめに

 2019年末から流行が始まった新型コロナウイルス感染症によって,医療施設などで実施されていた感染対策の重要性が医療者以外にも認知され,薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)時代においても感染症疫学はより重要な分野となった.本稿では新型コロナウイルス感染症でも示された基本再生産数(R0)を例に挙げ,感染症疫学について紹介する.

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はじめに

 遺伝子関連検査は,解析技術と分子生物学の進歩により疾患と遺伝子異常との関連性が解明され,これまで日常検査として行われてきた感染症や造血器腫瘍などの遺伝子関連検査に加え,がん遺伝子パネル検査といったゲノム医療への応用などにも適応範囲は拡大し,今後もニーズはさらに高まってくることが予想されます.

 また,病気の発症のメカニズムなどが明らかになり新しい検査も次々に確立されることが予想されるため,臨床検査技師にはこれまで以上に新しい技術と知識の習得が求められます.さらに,適正な診断を行うためには検査の精度がとても重要になります.

 このような課題を解決するためには,人材の育成がとても重要であり,“認定臨床染色体遺伝子検査師”制度の運用に携わる立場から,本制度が解決の手助けにつながればと考えております.

過去問deセルフチェック!

糖尿病
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 糖尿病は,生体におけるインスリン作用の減弱により,血糖を血液中から組織に適切に取り込めなくなり,慢性の高血糖状態が続き,その結果として合併症を引き起こす疾患です.これの克服がわが国の医療の重要な課題となっていることは周知の通りです.

 糖尿病には大きく分けて2つのタイプがあります.1型糖尿病では,膵β細胞の破壊によってインスリン分泌が低下あるいは枯渇しますが,一般的に自己免疫が発症に関与していると考えられています.抗グルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)抗体は,自己免疫性1型糖尿病の診断に役立つ重要な膵島関連自己抗体です(問題1).2型糖尿病では,膵臓の働きが弱くなりインスリンの分泌量が低下する(インスリン分泌低下)のに加え,肝臓や筋肉などの組織がインスリンの働きに対して応答しにくくなるため(インスリン抵抗性)発症するもので,代表的な生活習慣病です.

疾患と検査値の推移

血管炎 村岡 成
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Point

●血管炎は,血管壁の炎症による非特異的な全身症状と,血管狭窄あるいは拡張・出血による臓器症状を呈する.

●不可逆的な臓器障害,QOLの低下を防ぐためには,迅速な診断と治療が必要である.

●大型,中型血管炎は簡便で特異性の高い検査がないため,全身症状を呈する発熱患者では血管炎を鑑別に挙げることが重要である.

●小型血管炎の診断において抗好中球細胞質抗体(ANCA)は有用なマーカーである.特徴的な症状から血管炎を疑い,診断の補助として用いるべきである.

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単位ってなに?

 単位は数という概念とともに産み出されたもので,物を数えるときや量を表すときには必須で,無名数を除き全てのものに付いている.無名数とは数字のみで単位がないもので,同じ単位の数値の比や,質量の比である分子量などがある.

 対象となる物質と単位は,1対1で対応するものもあれば,いくつもの単位が使用可能なものもある.前者の例としては,犬は“匹”,ウサギは“羽”という単位で数えるという約束事がある.後者の例としては,歴史的な尺貫法に基づく長さや質量の単位である“尺”や“貫”は,いまは“メートル”や“kg”に置き換わっているが,いまでも“ヤード”や“ポンド”という単位が使用されている国もある.このヤードやポンドは,日常的に使用されている“慣用単位”である.

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はじめに

 甲状腺細胞診を行っていくうえで濾胞性病変は最も正診率が低く,観察者間の意見の相違の大きい分野である.「甲状腺癌取扱い規約 第8版」では,“細胞学的所見のみから濾胞癌と濾胞腺腫を区別することは困難”であると記載されている1).しかし,われわれのグループでは以前より,細胞診で濾胞性腫瘍を疑った場合に採取された細胞量,細胞重積,細胞異型から,favor benign,borderline,favor malignantの3カテゴリーに亜分類し2),その後の治療の判断材料の1つとしている.この方式は日本甲状腺学会で作成した「甲状腺結節取扱い診療ガイドライン」3〜5)でも採用されている.一方,好酸性濾胞性腫瘍では通常のタイプと比べ濾胞構造をとることが少なく,核が濃染傾向にあり,良性病変であっても少なからず核異型が認められるといった組織学的特徴があるため,通常の濾胞性腫瘍とは異なる細胞診断の基準が必要となる6)

 甲状腺濾胞性腫瘍のなかで,好酸性細胞が腫瘍の大部分(75%)を占める亜型を好酸性濾胞性腫瘍と呼び,さらに腺腫と癌に分類される.一方,好酸性細胞の出現する疾患はBasedow病,慢性甲状腺炎,腺腫様甲状腺腫(結節),濾胞腺腫,濾胞癌,乳頭癌(まれ),髄様癌(まれ)など多岐にわたる.

 甲状腺細胞診において,好酸性細胞腫瘍はいまだ未開の分野である.教科書でも好酸性細胞型の濾胞性腫瘍の代表的な写真の記載はあるものの,良悪の鑑別については述べていないのが一般的である.したがって細胞診で好酸性細胞が認められた際,多くの施設では意義不明あるいは濾胞性腫瘍疑い,または鑑別困難といった報告を,“格別の根拠もなく”行っているのが現状であろう.しかし,好酸性細胞が出現する疾患は,単にいつも鑑別困難としていては細胞診を行う意味がない.本稿では,細胞診報告が少しでも臨床に寄与することを目的に,遭遇する機会の多いと思われる腺腫様甲状腺腫と好酸性細胞型濾胞腺腫,好酸性細胞型濾胞癌について,われわれが行っている鑑別法を述べる.

Q&A 読者質問箱

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Q Small colony variantsの対応について教えてください.

A 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)はヒトの皮膚化膿性疾患や中耳炎,関節炎,敗血症などの種々の疾患の原因菌であり,膿や喀痰,血液などから分離されるグラム陽性球菌です.また,カテーテルや人工関節などの人工物関連感染の原因菌となることもしばしばあります.

 S. aureusには,まれに寒天培地上でSCV(small colony variants)と呼ばれる小さなコロニーを形成する菌株があります.SCVは電子伝達系などの代謝系が変化し,アミノ配糖体系薬などの抗菌薬に対する耐性度が上昇し,持続感染や再発の原因の1つとされています1)

ワンポイントアドバイス

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はじめに

 出血時間(bleeding time)検査は皮膚の毛細血管を傷つけて,出てきた血液がどのくらいで止まるかをみる,血小板機能異常を知る簡易な方法です.京都大学医学部附属病院の場合,主な検査依頼の理由として多いのは,腎生検前,胸腔鏡検査,血液疾患,治験などです.出血時間検査は臨床検査技師のやり方によって延長や短縮がみられ,結果にばらつきが大きいため,実施する際の留意点やコツ,患者に不安を与えない工夫などについて述べたいと思います.

Laboratory Practice 〈遺伝子〉

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はじめに

 近年,分子生物学的解析技術の進歩により,ますます膨大な遺伝情報が蓄積されてきた.そしてゲノムや遺伝子情報の活用が進み,それらの情報を利用した製品開発は,医薬品,診断薬・診断情報サービス,食品などさまざまな分野で行われ,われわれはさまざまな恩恵を受けている.それに伴い,遺伝子関連検査における標準化や精度保証についても求められる時代を迎えている.また,2018年12月1日の法改正の施行により,検体検査の分類において「遺伝子関連・染色体検査」と明確に位置付けられ,さらに遺伝子関連検査は“病原体核酸検査”,“体細胞遺伝子検査”,“生殖細胞系列遺伝子検査”と分類・定義されている(表1)1)

 遺伝子関連検査における測定結果の精度保証としては“測定前プロセス”,“測定プロセス”,“測定後プロセス”の各工程の品質が重要視されている.特に,測定前プロセスにおける作業要因は測定精度に最も大きく影響を与えるとされている.それは検査室の環境・設備や消耗品・備品,手技なども含まれるが,検体の採取・保存・搬送・前処理・核酸抽出などが関与する(図1)2).現在では前処理や核酸抽出の工程はキット化や自動化が進み,いわゆる“ブラックボックス化”しつつある.しかしながら,検体を扱う場合はまだまだ用手法であることが多く,手技として基本操作の習得が重要である.それは実際の遺伝子操作の工程においてエアロゾルの発生が伴うため(表2)3),それらをいかに意識し最小限度に抑えるかやコンタミネーションを防止するための操作をいかに行うかが重要である.それによって,偽陽性・偽陰性の発生防止やバイオセーフティの観点からの感染防止などにつながる.

 そこで今回,遺伝子関連検査の適切な実施のための留意点について,前編・後編に分け,具体的な器具や検体処理の例を挙げて説明する4)

連載 帰ってきた やなさん。・17

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 パワースポット(←店長いわく)に位置するお店で購入したアイテムを手に,柳田は車を走らせた.その矢先,一気に晴れてきた! さっきまで暴風で,波も大荒れだったのに! そして,それ以降どんどん天気は回復し,翌朝は快晴となり,波は超穏やかになった.

 「こんなに条件のいい海は久々ですよ!」と,シュノーケリングのガイドさん.さらに,昨日までの大荒れの影響で浜辺にはわれわれのみ.ラッキーすぎる.この季節,海水は冷たいので全身ウエットスーツ! と着込んだわりに,天気のおかげで水温はヌクヌク.最適温度だ.フィンを装着し,沖へ向かう.水中に潜ると,空からの光が水を伝い,キビナゴの集団がキラキラ光って泳ぎ回っている.そんななか,ガイドさんがいきなり海の底を目指して一直線に素潜り.すごっ! キラキラした笑顔で何かを拾ってきた…….「これ,何かわかりますか?」ナマコだろ.知ってるわ…….「屋久島はウミガメの上陸が日本で一番多い島.しかし産卵によるウミガメの上陸,子ガメのふ化の時期からずれているから,海にいるのはわれわれだけなんだろうか……」と,目の前のどす黒いナマコを見つめながら柳田は大きな不安に襲われていた(ナマコよ,君に会えたこともうれしいのだよ……うん).

ラボクイズ

超音波検査 松本 直樹

1月号の解答と解説 今田 昌秀

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疫学がわかることの楽しさを実感したい全ての方へ

 著者紹介に高校の卒業アルバムの写真が使われている.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で上京ができなかったために代用した,とある.本書の面白さはそこだけではない.表紙のデザインが電車の切符の鋏痕である.鋏をパチパチならす駅員に毎日切符を切ってもらっていた評者にとっては非常に懐かしいが,本書の楽しさはそこだけではない.

 職業柄,再び話をCOVID-19に戻すが,今年はこの感染症にまつわるさまざまな数字が,表やグラフになり,もっともらしい解説を伴って,毎日毎日,新聞,テレビ,SNSなどで飽きるほど流れた.大量の論文もかつてない速度で発表された.それらのデータの多くは,真偽のほどはともかく,COVID-19のリスクの大きさや変化を測定したものである.

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目次

『臨床検査』2月号のお知らせ

あとがき・次号予告 八鍬 恒芳
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 皆さんはWebの学会開催には慣れましたか? 私は最近,7分間の発表演題を動画として仕上げるまで丸2日もかかってしまいました.当初,修正するスライドだけ再録する機能を知らず,失敗すると全て最初から録画し直し,余計に時間がかかってしまいました.このような経験は,入職間もないころ,発表原稿を何度も読んだりスライドを修正したりした日々を思い返せたので,“初心忘るべからず”の再認識という意味では勉強になっています.新しい学会形式には悪戦苦闘しておりますが,そんななか,『検査と技術』は,変わらず定期的に発刊され,最新の情報を得られることに意義や安心感があるのだと思います.

基本情報

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検査と技術
49巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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