扉
脳と人工知能
鈴木 一郎
1
1日本赤十字社医療センター脳神経外科
pp.665-666
発行日 2017年8月10日
Published Date 2017/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203571
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今から50年前の1967年12月2日,それは日曜の昼下がり,南アフリカ・ケープタウンの病院に飲酒運転の車にひかれた25歳の女性が運ばれてきた.脳の損傷が激しく,数時間後に担当医は「救命困難」と判断したが,彼女の心臓は動き続けていた.翌3日,「脳死」と診断され,彼女の心臓は53歳の男性に提供されることになる.彼女の名はDenise Darvall,世界で最初の脳死下での臓器提供者である.ただ,彼女自身はその事実を知る由もない.
それから50年経った現在,世界では年間に4,500〜5,000例の心臓移植が行われている.日本では1997年に「臓器移植法」が施行されたが,第1例目の脳死臓器提供が行われたのは2年後の1999年である.その後,本人の生前の同意を必須にしていたこともあり,臓器提供は年間7〜8例程度にとどまった.このため2010年に法改正が行われ,本人の意思が不明な場合は,家族の承諾でも臓器提供が可能になった.これ以降,脳死臓器提供件数は年間50例程度に増えた.
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