Neurological Surgery 脳神経外科 32巻9号 (2004年9月)

日本からの発信 松村 明
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 自分自身が医師となり,医療に従事するようになってから約四半世紀が経ち,日本の医療もずいぶん変遷がみられてきたような気がする.

 まずは医療産業であるが,最近国産の医療メーカーに少し元気がないのではないかと気になっている.例えば高磁場のMRI装置であるが,以前は1.5Tの高磁場MRIを導入しようとすると必ず国産メーカーの名前も候補に挙がってきていたが,最近では海外メーカーが優勢であり,MR spectroscopyを行うとする場合には海外メーカーの器械が圧倒的に優位にたっている.

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 Ⅰ.はじめに

脳神経外科をsubspecialtyとし救命救急センターで重症患者の治療にあたる救急医学の専門医がいる.彼らは脳神経外科専門医と協力し,互いの長所をいかしながら脳神経外科救急患者の治療にあたっている.このような方法は,今後の救急医療の質の向上に寄与すると考えられる.救急医学専門医と脳神経外科専門医の双方の特長をいかすためにも,疾患に対する共通の価値観を再確認し,それぞれの得意分野における高度な知識と技術とを認め合うことが必要である.本稿の焦点はこの意義について考察することである.

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 Ⅰ.はじめに

Brain fiber dissection法は17世紀初期に脳白質内の神経線維束を観察するため,解剖学者によって広く行われていた14).しかし,この方法は屍体脳の準備・作製法が複雑であること,また実際の手技が時間と労力を要すること,最近ではMRIなどの画像診断技術が発達し,脳の解剖学的情報が容易に得られる等が原因で,次第に行われなくなった.近年,頭蓋底外科の発展により,脳実質を損傷しないように脳深部へ到達する手術法が開発されたが,その反面,脳神経機能解剖学が軽視される傾向にある.しかし,悪性脳腫瘍やてんかんの手術では脳実質を切除,あるいは神経線維束の切断が必要になることが多く,脳の神経線維の走行や,どのような機能を伝達しているのか熟知していないと,術後に重篤な神経脱落症状を来すことになる.このため当施設では以前よりbrain fiber dissection 法を用いた屍体脳の解剖学的研究を行い,脳実質内の神経機能解剖の修得や手術方略の計画に応用している.これから脳神経外科手術を行う若い脳神経外科医にとって,脳内の神経線維束を自ら剥離して確認することは重要で,かつ手術に必要な“生きた”知識として役立つと確信する.本稿ではbrain fiber dissection法を円滑に行うために必要な脳白質内の神経線維束の解剖とその剥離法を,特に大脳半球の外側面を中心に示し,さらに本法を用いた脳機能解剖の研究が非常に有用であった難治性てんかん例に対する大脳半球離断術を提示する.

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 Ⅰ.はじめに

頭蓋内原発のglioblastomaが脊髄へ播種性に転移することはよく知られているが,脊髄glioblastomaは原発性脊髄腫瘍の1.4%にすぎず13),自然経過で頭蓋内播種を来すことは極めて稀である9,11,18,35)

 最近,病初期から頭蓋内へ播種したと思われる小児頸髄glioblastomaの1例を経験したので,その多彩な画像および病理所見を中心に,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 Ⅰ.はじめに

補足運動野(supplementary motor area : SMA)は一次運動野(MI)前方の前頭葉内側部に存在し,その後方には中心前回を隔ててMIの下肢支配領域が存在し,下方は帯状溝上壁までとされている.前方および外側の境界はよりあいまいであるが,前方は前中心回の下肢領域の直前から前へ5cm以内,外側は上前頭回を越えない範囲とされる21).SMAは運動の企画,開始および維持に関して重要な役割を果たしており,その単独障害は稀にみられ,その場合には強い片麻痺が生じるが,それが比較的早期に回復することが特徴であるとされている9,18,23).われわれは,前頭葉内側部に存在した神経膠腫の症例で,術中の運動誘発電位(motor evoked potential : MEP)モニターには変化がなかったにもかかわらず,術後一過性に強い片麻痺が出現した2例を経験した.腫瘍切除後のSMA障害について文献的考察を加えて報告する.

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 Ⅰ.はじめに

外傷性脳動脈瘤の頻度は全脳動脈瘤の0.5%程度とされており,手術操作に起因する動脈瘤の頻度はさらに少ない.多くは頭蓋底脳腫瘍,下垂体腫瘍摘出による内頸動脈,特に海綿静脈洞部に多いと報告されている3,10,11,13,15,17,18)

 われわれは髄膜腫手術2年後にくも膜下出血で発症した海綿静脈洞部動脈瘤を経験した.手術操作によって生じた仮性動脈瘤と考えられたが,血管内手術にて動脈瘤塞栓術を施行し,良好な結果を得た.医原性・外傷性動脈瘤に対して血管内手術で親動脈塞栓術による治療は報告されているが,瘤そのものを塞栓術にて治療したのは渉猟し得た限りでは5例しかない.病態・治療を文献的考察を加え,報告する.

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 Ⅰ.はじめに

TSH産生腺腫は下垂体腫瘍の0.5~2.8%4,7,12,13)を占める稀なホルモン産生腺腫で,組織学的には多角形や短紡錘形の腫瘍細胞がびまん性に増殖し,腫瘍間質に線維増生をみることがあるが,石灰化を伴った症例は現在までにわずかに6例1,3,15,16,21)の報告があるにすぎない.

 最近,著しいpleomorphismを呈した石灰化TSH産生下垂体腺腫の1例を経験したので,病理所見を中心に文献的考察を加えて報告する.

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 Ⅰ.はじめに

脳表ヘモジデリン沈着症(superficial siderosis of the central nervous system : SS)は,くも膜下腔への慢性あるいは反復性の出血により,ヘモグロビン由来のヘモジデリンが脳表や脳室壁に沈着することによって生じる症候群である2).臨床的には感音性難聴,嗅覚低下,視力低下,小脳性失調,痴呆,錐体路徴候などを呈する.剖検や,術中に偶発的に発見されるのみであったが,近年はMRIの普及により,画像に基づく診断が可能となった.今回われわれは,下垂体腺腫亜全摘術後に続発したSSの1症例を経験したので報告する.

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 貴誌Vol.32 No.4 April, 2004に川本仁志氏らの外傷性潜在性髄液漏の報告が掲載されています.私は医学における症例報告は,珍しい症例や出来事についてその事実・知識を広く医師各領域に伝えるとともに,よき診断・治療あるいは予防などの対策を検討・進言することが重要であると思っています.

 近年A Ommayaが,「外傷急性期の髄液漏がいったん治癒したようにみえても,稀に年余を経て再び漏出する」ことを記載し,これは現在の脳神経外科では稀ながら常識の範囲と思います.そしてこの病態の怖い点は,RP Sengupta らやRC Schneiderらが強調したように,meningitis(fulminating)を繰り返し突発し,時に死亡することです.かつて私はそのような症例を耳にしたことがありますが,今日そんなことはあってはなりません.そこで外傷性潜在性髄液漏の症例報告では,稀有なる症例ということに加えて,いかにしてこのような危険の発生を予防する方策があるのかの問題を検討してはいかがでしょう.

連載 定位脳手術入門(10)

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 Ⅰ.はじめに

細胞移植は再生医療において中心的役割を果たす治療手段の1つで,脳神経外科領域でも神経変性疾患,さらに脳梗塞や脊髄損傷などの有力な機能的脳神経外科治療として将来を期待されている.特にパーキンソン病に対する移植治療は既に1990年代初めより欧米諸国やわが国において臨床応用され,長期の臨床効果も明らかとなりつつある.

 本連載で既に取り上げられているパーキンソン病の一般的な外科的治療である視床破壊術や深部脳刺激術は,神経核の異常電気活動を消失もしくは変調させることによって運動機能障害の改善を期待する定位脳手術である.それに対して,同疾患に対する細胞移植療法はカテコラミン産生細胞の脳内移植により変性脱落したドーパミン(DA)細胞の機能代償をはかろうとする治療戦略である.現在,パーキンソン病患者に対する細胞移植療法のドナーとして,主としてヒト胎児中脳由来のDA細胞が用いられており,その成績が欧米諸国の施設から報告されている.胎児ニューロンはその旺盛な再生能により,ホスト脳内で分化して破綻神経回路網を再建できるということから細胞移植治療の最適のドナーといえる.しかし,人工中絶された胎児の組織を移植治療のドナーとして用いることは,宗教上あるいは倫理上の問題から,わが国では非常に難しい.そこで,わが国ではヒト胎児組織の代わりにやはりカテコラミン含有細胞からなる自家交感神経節を用いた移植治療の開発が行われ,1991年から頸部神経節(星状神経節)移植の臨床応用がパーキンソン病に対して行われてきた1).本稿ではこの自家交感神経節を用いた移植治療について,最近われわれが導入している胸部交感神経節移植7)を中心にその適応と手技,さらに移植によって得られる臨床効果について概説する.

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 Ⅰ.動脈瘤様骨囊胞(aneurysmal bone cyst)

1.定 義

血液を入れた大小の腔が結合組織性の隔壁によって互いに隔てられ,囊胞状を呈するが11) ,囊胞の有無は本質的ではなく基本的には骨内の反応性・修復性変化であるとみる立場もあり,事実,実質性病変が優位となるいわゆるsolid variant of aneurysmal bone cystも報告されているので,主として顎骨にみられる巨細胞修復肉芽腫giant cell reparative granulomaも本症の関連病変とみなし,全体として“巨細胞反応giant cell reaction”と呼び,骨内の修復性変化としてまとめようとする考え方もある.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
32巻9号 (2004年9月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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