作業療法 37巻6号 (2018年12月)

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要旨:箸操作と上肢機能評価(握力,ピンチ力,10秒テスト,Fugl-Meyer Assessment for Upper Extremity,簡易上肢機能検査,Motor Activity Log)の関係について調べた.対象者は発症から1週間以内の利き手側に麻痺を呈した脳卒中患者51名であった.ロジスティック回帰分析を使用し箸操作に影響する因子を求めた.さらに,カットオフ値は受信者動作特性曲線を使用し求めた.その結果,10秒テストが抽出され,カットオフ値は14回であった.10秒テストは,利き手が麻痺した急性期脳卒中患者の箸操作可否の判断に役立つ可能性が示唆された.

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要旨:本研究の目的は,高齢者に対する音読と歌唱のプログラムが認知機能や情動機能,ADLに及ぼす影響を明らかにすることである.介護老人保健施設入所者43名を音読群,歌唱群,対照群の3群に分け,各群の3ヵ月介入前後の認知機能,ADL能力,情動機能を調査した結果,対照群では介入前後の評価結果に差はなかった.音読群ではFrontal Assessment Battery at bedside(FAB)得点が介入前に比べ介入後に高かった(p<0.05).一方,歌唱群ではMini-Mental State Examination(MMSE)得点およびFAB得点が介入前に比べ介入後に高かった(p<0.05).音読プログラムでは前頭葉機能が活性し歌唱プログラムでは前頭葉機能および認知機能が活性することが示唆された.

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要旨:本研究の目的は,小学校の通常学級に就学した発達障害のある児童の就学移行期における学校適応に関する要因を,その母親より後方視的に調査し,検討することである.「養育者のレジリエンス」,「子どもの特性」,そして「社会的要因」を影響する要因の仮説とし,方法論的トライアンギュレーションの観点から検討した.結果より,発達障害のある児童は就学移行期に,高い不適応状況を示していた.子どもの学校適応には,「子どもの特性」から知的機能と適応機能の個体内差,感覚特性による困難性,そして「社会的要因」から学校環境と特別支援教育の課題が影響する要因であり,「養育者のレジリエンス」は影響が少ないことが考えられた.

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要旨:特別養護老人ホーム(以下,特養)で,作業療法士(以下,OT)が介護職(CW)との情報共有を促進する要因にどの程度関われているかを評価する自記式チェックリストを開発した.方法は,質問紙調査を用いた.全国の特養に勤務するOTに調査票を配布し,チェックリストの19項目について項目反応理論に基づき分析を行った.その結果,223名から回答が得られ,すべての項目が尺度構成に相応しく適切であることが示された.また,チェックリストの測定精度は,情報共有を促進する能力が中程度までの能力を有したOTに実施した場合に保たれており,能力の高いOTに実施した場合には低くなることが確認された.

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要旨:介護保険下の通所リハビリテーション(以下,通所リハ)には,利用者を通所リハから他の社会参加の場へ移行させる役割が求められている.本研究では,以前に通所リハを利用していた脳卒中当時者4名にインタビューを行い,どのような経験を経て通所リハ利用を終了したのか,複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach:TEA)を用いて解明した.4名は生活や身体の改善実感を得て,生活への自信を強めて活動圏を拡大させていた.外部からの働きかけで,4名は通所リハ利用終了後にどんな生活を送るかに向き合った.通所リハ利用終了の際は,本人が送りたい生活実現に向け自己決定するプロセスが重要なことが示された.

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要旨:痛みの認知過程は,体性感覚経路のみならず,前帯状回などの認知・情動に関わる脳部位の関与も示されている.侵害受容関連電位において,潜時250〜300msec付近に出現する後期陽性成分(P2成分)は,感覚だけでなく認知・情動を含む情報処理過程を反映するとされている.本研究では健康成人20名を対象に,数列逆唱課題を用いた精神的ストレスと注意要求のある身体運動が,侵害受容関連電位のP2成分に与える影響を調べた.その結果,精神的ストレス後はP2成分の振幅が増大し,身体運動後は減少した.精神的ストレスは,前帯状回などを興奮させることで,侵害受容情報処理過程の活動性を強化させ,身体運動はこれを低下させる可能性が考えられた.

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要旨:今回,ICU入室早期から作業療法を開始して良好な経過をたどった急性呼吸不全症例を経験した.症例は他院での下顎歯肉癌術後に無気肺による呼吸状態悪化を認め,集中治療管理目的で当院へ転入となった.ICUで人工呼吸器管理を行い,入室3日目から作業療法介入を開始した.初期評価時,認知機能,身体機能,ADLに低下を認めた.多職種で協働して離床を進め,あわせて認知機能,身体機能,ADLに対するアプローチを実施した.約1ヵ月の入院中の介入にて,無気肺は解除,認知機能,身体機能,ADLは改善し,癌治療継続目的に紹介元病院へ転院となった.ICU入室中からの早期作業療法は,各種機能の改善やさらなる機能低下の予防に有用な可能性がある.

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要旨:脳卒中後上肢麻痺への治療戦略として課題指向型練習が挙げられるが,課題指向型練習単独では生活での麻痺手の使用頻度向上にはつながらないとの報告がある.今回,重度上肢麻痺を呈した脳卒中患者に対し,早期から課題指向型練習を実施した.当初から上肢機能は改善したが,生活での麻痺手の使用頻度には全く変化がなかったため,Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(以下,ADOC-H)を用いてTransfer Package(以下,TP)を実施し,麻痺手の行動変容を試みた結果,生活での麻痺手の使用頻度が向上し,麻痺手使用に肯定的な意見を聞くことができた.回復期でのADOC-Hを用いたTPは,麻痺手の使用頻度を促進する可能性があると考えられた.

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要旨:脳室穿破を伴う右視床出血で,左半側空間無視や全般性・分配性注意障害を呈した症例に対して,言語機能が残存していることに着目し,車椅子移乗時にその工程を本人が言語化すること(自己教示)を促し,さらには作業療法・理学療法時と病棟内で起立訓練を指導する包括的アプローチを実施した.移乗動作の工程を繰り返し言語化することで失敗点の学習が進み,工程を習得することができた.また,多感覚入力による左半側空間無視の改善と,下肢・体幹筋力増強を目的に起立訓練を行い,ADL介助量が減少した.以上より,残存している機能に着目し,身体機能と認知機能の両側面に対して包括的にアプローチする車椅子移乗,および起立訓練の有用性が示唆された.

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要旨:ロボット療法は,脳卒中後の上肢麻痺の機能改善には有効であると証明されている.しかし,複数の研究者は,日常生活における麻痺手の使用行動を改善することは難しいと報告している.今回我々は,上肢片麻痺を呈した回復期脳卒中患者に対し,CI療法に準じた練習(修正CI療法)と,ReoGo®-Jを使用した自主練習(ロボット療法)を組み合わせた治療を6週間実施した.修正CI療法は,課題指向型アプローチと,Transfer Packageと呼ばれる麻痺手の機能を生活に反映するための行動戦略に基づき実施された.結果として,上肢機能改善と病棟生活における麻痺手の使用頻度・質ともに改善がみられた.加えて,退院後においても,さらなる改善を認めた.

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要旨:アンジェルマン症候群児(欠失型)に対し,2歳8ヵ月時より作業療法を行ってきた.家族の主訴に基づき,5歳時より10分間の食事指導を1年間(計30回)継続して行った.介入以前は全介助であり,上肢の失調様の動作により食具を持続的に把握することが困難であった.介入では児の行動を観察し,失調様の動作が起こりにくい操作方法を検討し指導を行った.食事指導を継続していく中で,失調様の動作の軽減と,食具の把握に改善がみられた.また食具操作の介助量軽減と能動的な動作が増加した.作業療法士による食事指導にて,アンジェルマン症候群児の食具操作と介助量の軽減に好影響をもたらす可能性が示されたため,作業療法経過と工夫を報告する.

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要旨:訪問型サービスC(以下,訪問C)は,介護予防・日常生活支援総合事業の介護予防・生活支援サービス事業の一つであり,ADLの改善が主たる目標となる点,3ヵ月程度の短期間で支援を終結させる点が特徴である.要支援2の認定を受けたA氏は,脳血管障害後にガスコンロの使用を住まいの管理人に制限されていたため,火を使用しない調理法を習得することを目的に,電子レンジで温野菜のような簡単な食事が準備できるよう訪問Cで助言した.助言の際は,運動機能や認知機能に関する評価や支援は可能な限り省略した結果,合計3回の助言で課題は解決し,初回から3ヵ月後に事例の作業遂行能力や健康関連QOLが向上し,IADLの実施状況も改善した.

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要旨:Cerebellar cognitive affective syndrome(CCAS)は小脳障害によって引き起こされる神経心理学的な症候群であり,症状として遂行機能障害,視空間認知障害,言語障害,感情障害の4徴候が特徴である.小脳障害において運動症状を中心に呈し認知機能障害が一見目立たない症例では,高次脳機能に問題がないと判断されることが多い.本研究ではCCASの高次脳機能障害を,小脳損傷のみを呈した12名の患者を対象としMini-Mental State Examination(MMSE)にて測定した結果,全症例でCCASを認めた.本研究にて小脳損傷のリハビリテーションでは運動機能だけでなく神経心理学的評価を行うことが重要であり,その際にMMSEを用いることの有用性が示された.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
37巻6号 (2018年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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