作業療法 29巻3号 (2010年6月)

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要旨:クモ膜下出血術後に記憶障害を呈した50歳代女性に対して,間隔伸張法(spaced retrueval法;以下,SR法)を中心にデザインした作業療法プログラムを実施した,具体的には,SR法を基本として,事例に必要な日付,担当セラピスト名,病室名,メモリーノートの利用等を,徐々に間隔を空けながら想起して覚えさせる訓練を行った.その結果,見当識や予定の把握などに改善が見られ,高次脳検査の評価点も向上して自宅退院となった.これらの結果から,SR法を中心にデザインした作業療法プログラムは,クモ膜下出血後の記憶障害に対して効果的であったと考えられた.また,本事例への関わりを通して,家族や他職種との連携の重要性を再確認した.

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要旨:地域支援事業で作業療法士が初期評価に用いる評価ッールの現状を調査した.無記名による郵送留め置き方法を用いて,全国の895公的機関にアンケートを送付した.作業療法士が回答した41通を分析した結果,36施設(約90%)が作業療法初期評価を行い,大多数が身体機能,ADL,認知機能に焦点を当てた構成的評価を行っていた.趣味と興味,生活歴,役割を評価項目に回答する施設は多かったが,それらに対する作業療法の専門性を反映した評価ツールが回答されなかった.現在も高頻度の利用が示された身体機能,ADL,認知機能の評価に加え,興味,人生の軌跡,役割について作業療法の専門性を反映した評価ツールの使用が必要であると思われる.

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要旨:広汎性発達障害児の家庭での行動変化に,乗馬活動がどのような影響を及ぼしたのかを検討した.行動変化を「感覚および知覚」,「日常生活」,「対人関係」,「ことばやコミュニケーション」の4つに分け,家族に質問紙を用いて記入してもらった.同時に乗馬活動の評価として,HEIMスケールを乗馬活動の開始時と質問紙調査時に行った.家族の乗馬活動に対する満足度についても聞いた.家庭での行動の「対人関係」,「ことばやコミュニケーション」と乗馬活動での評価において改善していた.また,家族は患児の乗馬活動に満足していた.これらの結果より,乗馬活動は家庭での患児の行動変化に治療的に関与していたことが示唆された.

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要旨:ベイリー乳幼児発達検査一第2版(以下,BSID-Ⅱ)は乳幼児期の発達状況を評価できる,国際的にも用いられることの多い検査の一つである.しかし,日本では標準化されておらず使用報告が少ない現状にある.本研究では,生後6ヵ月児192名にBSID-Ⅱを実施し,日本版デンバー式発達スクリーニング検査(以下,JDDST)から見たBSID-Ⅱの有用性を検討した.BSID-ⅡのMentalとMotorの平均得点は米国の標準値よりも約10低い値であった.また,BSID-ⅡのMental,MotorはともにJDDSTの関連領域との間で感度・特異度が高く有用性が認められた.しかし,本邦においてはBSID-ⅡのMotorは過剰に遅れと判定する可能性があった.

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要旨:本研究の目的は,自記式作業遂行指標(以下,SOPI)を開発することである.カナダ作業遂行モデルに基づき,SOPIは「個人にとって価値のある活動の日々の参加状況(作業遂行)」を測定するように設計された.SOPIは作業遂行の3側面(作業の統制,作業バランス,遂行満足度)を作業の3領域(余暇活動,生産的活動,セルフ・ケア)で尋ねる9項目で構成される.地域中高年者432名を対象に,得点の分散と信頼性(α),SF-36v2との関連による構成概念妥当性を検証した.その結果,十分な分散と信頼性(α=0.93),構成概念妥当性が示された.以上から,SOPIは地域住民を対象とした予防的作業療法といった調査に適用できると結論した.

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要旨:精神科作業療法(以下,OT)の中で精神分析が取り上げられることが少なくなっている.しかし,精神分析が今までに築いてきた知見を参照し,OTの治療構造に新たな視点を持ち込むことが必要である.精神分析の対象は神経症や人格障害などが多く,無意識の意識化と洞察を目指すものである.一方,OTでは統合失調症や認知症などが主たる対象で,症状,対人関係,日常生活,社会生活などの障害への援助を目指している.このことから,精神分析の知見がそのままOTに援用できるとは限らない.しかし,対象者理解や治療内容を考える上で参考になる部分は多い.今後,精神分析の視点に立ったOTの実践例を積み重ねることが重要である.

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要旨:パーキンソニズムによる体幹前傾とすくみ足を呈する患者が,固定式四脚歩行器(以下,歩行器)を使用して歩行することで姿勢の変化と前後の重心移動が生じ,前傾姿勢とすくみ足が改善することが予測された.そこで姿勢と重心の変化を体の前傾角度の変化から検討した.今回の結果では,歩行器を持ち上げてから前方に移動し終えるまでの間に身体が前傾し,その後歩行器で支持しつつ,1歩2歩と歩き終える間に身体の前傾が減少した.つまり歩行器を使用した歩行は1周期毎に身体の前傾角度の増減が生じ,歩行中の前傾姿勢が改善され,すくみ足の改善に効果があった.

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要旨:薬の副作用や生活習慣の乱れによる統合失調症患者の体重増加が問題視されている.統合失調症の健康管理に対する援助は患者の認知機能障害や陰性症状が影響するため,健康管理に向けた関心や意欲を高めながら取り組みを継続させる工夫が必要である.今回,ある肥満傾向の症例に対して健康管理チェック表を活用した個別的支援を導入し,精神症状や認知機能に対応した目標や活動量の設定,フィードバックによる動機づけや指導を行った.その結果,健康管理に対する動機が維持され,食生活や運動に対する意識や問題行動への対処能力が高まり減量につながった.チェック表を活用した援助は,個別的な体調に合わせた健康管理の支援として有用な取り組みであった.

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要旨:緊張病性昏迷をきたした統合失調症患者に対して,急生期昏迷状態から作業療法(以下,OT)を実施した.入院当初の昏迷状態期に,拘縮等の二次障害の予防を目的として,他動的関節可動域運動により身体的に介入を行った.昏迷からの離脱後,被害妄想,対人恐怖が一過性に表面化したが,OT介入は中断せず声かけを継続した.被害妄想,対人恐怖がやや軽快した後,変化が少なく繰り返しの多い創作活動を,マンツーマンでの個室対応という枠組みの固定した環境で行った.症例は安心感を持ち,楽しんで活動できた.この経過から,急性期からの身体への関わりや経過と疾患特性を踏まえたOTが,緊張病患者の回復に貢献することが示唆された.

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要旨:目的は,認知症治療病棟スタッフに摂食機能障害患者の発見やアプローチについて提示することである.病棟スタッフによる21回の食事評価を通して,むせが頻発していた自力摂取者7例と経鼻栄養者2例を対象とした.7例はむせの原因を評価後に治療介入を行い,全員むせが解消した.2例は共通や個別の問題に対する治療実施後に摂食機能検査を行ったが,1例は嚥下と呼吸の協調性障害のために経口摂取が困難であった.認知症患者のむせの原因は,身体機能や認知・非認知障害に起因しており,摂食機能障害の症状が同じでもアプローチは個別性が要求されることや,経鼻栄養者は早期離床や無経口期間の摂食機能の維持が重要であることが示唆された.

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要旨:ゲルストマン症候群を呈した73歳の男性に,2ヵ月間作業療法アプローチを行った.症例は4徴候の他に構成障害があり,道具の操作や更衣動作に時間がかかった.特徴は,対象物との向きを合わせるなど空間内での操作と位置付けの障害であった.この症例の中核症状を心的イメージの操作障害と捉え,道具の操作に段階付けた作業療法アプローチを行った.患者にとって必要度の高い箸や操作が単純なはさみなどは実用的となったが,爪切りやボタンはめ,ネクタイなどは操作が複雑で介助が必要であった.道具の選択には使用頻度が高く慣れたものであること,段階付けた取り組みが重要と思われた.

基本情報

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作業療法
29巻3号 (2010年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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