日本看護科学会誌 31巻4号 (2011年12月)

  • 文献概要を表示

 日本看護科学学会は1981年7月25日,国立公衆衛生院にて,設立総会,および第1回総会が開催され発足した.2011年7月で30周年を迎えた.設立30周年を記念して,第32回学術大会で,記念講演会と記念祝賀会を挙行し,そして,第32巻2号を記念誌合併号として発刊する.この設立記念は,本学会の設立理念を確認し,さらなる発展を展望するよい機会であると思う.

 学会の設立時の経緯に関して,本学会誌の10巻2号に林滋子先生が詳細に記述しておられる.その中で,本学会の設立は,日本看護系大学協議会の発足により実現したと記されている.大学協議会は,1975年に看護学部が設置された千葉大学と聖路加看護大学に相談され,その他,当時大学で看護教育をしていた大学(東京大学,名古屋保健衛生大学,高知女子大学,琉球大学)に呼びかけ,これら6大学により1979年に大学協議会が発足した.この大学協議会の第1回総会が,看護学会設立準備についての議題であったとのことである.1980年1月より,学会発起人会が発足し,世話人が拡大され1980年10月の世話人会が発足した.ついに,1981年7月25日に設立総会が開催され,185名の正会員で発足した.12月6日に第1回日本看護科学学会学術大会が,当時の国立公衆衛生院において林滋子会長のもと開催となった.この第1回の学術大会には,著者も短期大学の助手として参加していた記憶があるが,多くの諸先輩の働きにより実現したことは知らずに参加していたことを反省する.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:悲しみや自責の念等の否定的な感情を伴う強く印象に残る患者の死を体験した看護師の成長に関連する要因を明らかにすることである.

 方法:臨床経験年数3年目~6年目の看護師192名を対象に,《有益性発見尺度》及び《対処行動尺度》を用い,看護師の成長と関連する要因について質問紙調査を実施した.分析には,重回帰分析を用いた.

 結果:大多数の看護師が,否定的な感情を伴う強く印象に残る患者の死を体験していた.患者の死を体験した看護師の成長(有益性発見尺度)と有意に関連がみられたのは,対処行動尺度の下位尺度である「宗教的行動と実存的意味」,「死別の受容と克服」,「考え込み行動」,「援助希求」及び「理想の看取りの確立」であり,分散の51.0%が説明された.

 結論:患者の死を体験した看護師が成長するためには,様々な対処行動をとることが有効であると示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:介護保険施設に勤務する医療・福祉職のチームアプローチ実践の自己評価を行うITA評価尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討する.

 方法:Interdisciplinary teamの概念分析の結果と医療・福祉職から収集した意見を基に尺度原案(40項目)を作成し,24ヵ所の介護老人保健施設のスタッフ904名を対象に自記式質問紙調査を行った.信頼性,妥当性の検討はCronbach α,再テスト法,因子分析等により行った.

 結果:401票が回収され(有効回答率44.4%),因子分析から本尺度は〈組織構造の柔軟さ〉〈ケアのプロセスと実践度〉〈メンバーの凝集性と能力〉の3因子構造(全32項目),モデルの適合度はGFI等が0.9以上を示した.尺度全体のCronbach αは0.9以上,再テスト法による信頼性係数は全項目で0.4以上であった.

 結論:ITA評価尺度は,介護保険施設スタッフのチームアプローチ実践を把握可能な信頼性と妥当性のある尺度であると示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 Mental Health-Related Self-Care Agency Scale日本語版(MH-SCA-Japanese:以下MHSCA-J)の開発とその信頼性,妥当性を検証することを目的とした.

 MH-SCAの翻訳を行い,内容妥当性・表面妥当性を検討し,MH-SCA-Jを作成した.地域で生活しているうつ症状のある精神障がい者73名を対象に調査を行った.結果は,MH-SCA-JのCronbachα係数は0.93であり,一定の内的一貫性が確認された.MH-SCA-Jとセルフケア行動の得点の相関係数は-0.690(p<0.01),MH-SCA-JとCES-Dの得点の相関係数は-0.834(p<0.01)と統計的に有意な相関がみられ,併存的妥当性が確認された.また,“抑うつ症状なし群”は“抑うつ症状あり群”と比較してt値は-7.51(p<0.01)であり,有意にMH-SCA-J得点が高く,臨床的妥当性が確認された.以上より,MH-SCA-Jは一定の信頼性と妥当性が得られ,精神症状に関連するセルフケア能力を測定する尺度として使用可能と考え

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:「ファミリーレジリエンスを育成する家族介入モデル」に基づく介入が,知的発達障害児を抱える家族のパラダイムに与えた影響を明らかにし,その実用性を検討した.

 方法:1年間,知的発達障害児を抱える家族に「ファミリーレジリエンスを育成する家族介入モデル」を適用し,家族介入とその反応についてReissらのファミリーパラダイムを用いて分析した.

 結果:モデルの「順応」段階では,【感情表出を促す】介入と【保健師の判断を伝える】介入により,家族は障害に対する家族の考え方に変化を起こし,家族内で対処するようになった.これにより,Reissのファミリーパラダイムは,『出来事の定義と補足情報の詮索』の段階から『初期反応と試行的解決』の段階へ展開した.モデルの「適応」段階では,【選択肢の提供】の介入により,家族が意思決定することで,家族は課題や不安を抱えることになった.その後,家族が地域の資源や同じ障害児を抱える家族とつながる【地域と家族をつなぐ】介入や【感情表出を促す】介入を行うことで,家族は,これまでのように家族内で対処するのではなく,地域の資源を家族の力に組み入れて対処することができ,家族の対処能力は拡大した.これにより,Reissのファミリーパラダイムは,『初期反応と試行的解決』の段階から『最終意思決定とそれへの関わり』の段階へと展開した.

 結論:本モデルの【選択肢の提供】の介入が,ファミリーレジリエンスプロセスへのターニングポイントとして位置づけられ,【地域と家族をつなぐ】介入により,家族は地域の資源とつながりながら家族の対処能力を拡大させていた.さらに【感情表出を促す】介入が,対処行動の飛躍力へとつながる弾力性として作用していた.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:看護師を対象にQOLと自己効力感が離職願望にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする.

 方法:看護師625名に質問紙票を配布し,全項目に回答した300名を対象とした.質問紙は個人属性,QOL(WHO/QOL-26日本語版),自己効力感(一般性自己効力感尺度:GSES),離職願望尺度で構成した.

 結果:経験年数別の比較では,QOL,GSESにおいて3年以上5年未満が最低値を示し,20年以上が最高値を示した(p<0.01).離職願望は,3年以上5年未満が最高値を示し,20年以上が最低値を示した(p<0.05).QOL,GSES,離職願望で有意な相関(p<0.01)を認め,カテゴリカル回帰分析の結果,離職願望に対してQOL(身体領域,社会関係),GSES(行動の積極性,失敗に対する不安,能力の社会的位置づけ),婚姻状況が有意に影響していた.

 結論:経験年数3年以上5年未満の中堅看護師の移行期間への離職願望防止対策構築の必要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:本研究の目的は,新自由主義を基本とする医療政策がとられてきた1982年から現在までを対象とし,自立に関する議論を踏まえて,医療政策において目指される「自立した患者」の内包する課題を明らかにすることである.

 方法:1982年から2010年までの医療政策に関する文献を第一次資料,第二次資料として選択し,自立した患者を,政治,経済,歴史社会的な重層構造の中で把握した文献研究である.

 結果:1982年以降の医療政策では,患者の自己責任を前提として情報選択や治療に対して主体的な行動をとる「自立した患者」が目指されている.自立した患者を絶対視することは,自立を達成できない患者を,保護や支援の対象から排除しかねない.また,医療を受ける患者と十分な医療を受けられない患者の医療格差を拡大した.

 結論:自立は人間の成長や尊厳において不可欠であるが,一方で人間の生活を破壊しかねない側面がある.自立した患者を用いる場合には,患者同士あるいは患者と医療者との依存関係を考慮し,生存権を基礎とした自立が目指されるべきである.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:HIV/AIDS外来患者の二次感染予防における看護援助(以下「看護援助」)の実施状況を把握し,実施に関連する因子を検討する.

 方法:エイズ拠点病院83施設の外来に勤務する看護師を対象に,「看護援助」21項目の実施状況および実施しなかった理由,看護師の属性(7項目),環境要件(7項目)に関する自記式の質問紙調査を行った.21項目の「看護援助」のそれぞれについて,自分の役割として認識している「役割認識あり」の看護師を対象に実施状況を分析した.

 結果:「役割認識あり」の実施状況を,「6割以上の患者に実施」(「高実施」)の割合で比較すると,「高実施」の割合は43~69%であり,日常生活や社会資源の情報提供に関する「看護援助」で高く,「性行為のタイプについて確認する」などプライベートな領域に踏み込むような「看護援助」で低かった.また,HIV/AIDS外来配置形態間では,専従看護師の「高実施」の割合がそれ以外の看護師よりも高く,「受持制」と「受持制でない」の間では,「受持制」の「高実施」の割合が「受持制でない」よりも高かった.

 結論:「看護援助」の実施率と外来配置形態や「受持制」が関係していた.高い専門性を持つ専従看護師の配置や「受持制」の導入が,「看護援助」の実施率向上に有効である可能性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:慢性疾患領域において医師と看護師間の協働が進んでいる先行事例を調査し,今後の医師・看護師間の役割分担の推進に向けた示唆を得ることを目的とした.

 方法:先行事例を選定し,医師・看護管理者,看護師を対象にヒアリング調査を行った.医師と看護師間の協働の内容や特色,体制の特徴について分析した.

 結果:4事例に調査を行った.役割分担・連携の内容は,(1)看護師による患者把握に基づいた薬剤調整のアセスメントと医師への報告,(2)療養相談や心理的支援,(3)医師による検査や薬剤処方の指示,(4)医師による簡単な治療説明と,看護師による療養生活に即した詳細な説明,(5)看護師による検査や薬剤調整,説明,経過観察,であった.効果は,患者の満足度の向上,医師の本来業務時間の増加等であった.課題は,役割分担に関する取り決めがないことであった.

 結論:慢性疾患領域における医師と看護師の新たな役割分担・連携のあり方が示唆された.今後の実現に向け,院内プロトコールやリスク管理体制の構築,医師・看護師の人材育成が求められる.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的・方法:本研究では安定期にある15名のCOPD患者に半構造化面接法を用い,日常生活の中でどのように体調調整を行っているのかをSchutzの示した日常生活の認知様式を構成する視点を手掛かりに明らかにしていった.

 結果:日常生活における体調調整の行為として【COPDによって変化した身体が日常化する】【今の身体の状態を感じ取ることでCOPDを持つ身体を体験する】【身体への信頼を失っていく感覚と生に対する思いを持つ】【呼吸を安定させるための方略を持つ】【心身を安定させるための方略を持つ】【動ける身体を維持するための方略を持つ】【療養法を生活の中にうまく取り入れる】【身体の調子と生活時間を調整する】【社会の一員として存在するための方略を見つける】【病気や治療の知識,見通しを持つ】【役割や楽しみを持つ努力をする】の11の構成要素が明らかになった.本研究では,Schutzの考え方を用いたことで生活者として患者側から見た体調調整のあり方を明らかにしていくことができた.

基本情報

02875330.31.4.jpg
日本看護科学会誌
31巻4号 (2011年12月)
電子版ISSN:2185-8888 印刷版ISSN:0287-5330 日本看護科学学会

文献閲覧数ランキング(
5月25日~5月31日
)