薬局 72巻6号 (2021年5月発行)

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特集　病院から地域へつなぐロービジョンケア

ロービジョンケアの心構え山田　千佳子 , 高橋　政代 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2409-2411

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＜Key Points＞◎医療者は視覚障害の実態を知る必要がある。◎各都道府県にある｢スマートサイト｣を用いて病院から福祉につなぐ。◎視覚障害センターや点字図書館といった社会資源を活用する。◎オンラインが有力な手段になる可能性がある。

ロービジョンの基礎知識仲泊　聡 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2413-2417

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＜Key Points＞◎日本学術会議では、ロービジョンを｢成長･発達あるいは日常生活･社会生活に何らかの支障を来す視機能または視覚｣と定義している。◎世界保健機関の基準では、現在、世界には約3,600万人の全盲者と約2億1,600万人のロービジョン者がいる。◎視覚障害の原因疾患は、緑内障が最多で以下、網膜色素変性、糖尿病網膜症、黄斑変性、脈絡網膜萎縮、視神経萎縮などが多い。◎眼科臨床では、網膜中心部の機能を矯正視力で、周辺部の機能を視野検査で評価している。◎視力･視野以外にも明るさ順応、色覚、奥行き知覚、眼球運動、瞳孔運動、焦点調節などの問題からもロービジョンは生じる。

ロービジョンの原因となる眼疾患の治療戦略とロービジョンケア　緑内障および他の神経疾患横田　聡 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2419-2422

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＜Key Points＞◎緑内障はわが国の視覚障害の第1位を占める。◎ニーズとしては、羞明･歩行/移動･読字/書字が多い。◎ライト付きルーペ、黒いトレー、タイポスコープなど簡単に手に入るものでも、サポートは開始できる。◎情報が不十分な当事者にはスマートサイトを用いた情報提供から始めてほしい。

ロービジョンの原因となる眼疾患の治療戦略とロービジョンケア　糖尿病網膜症安藤　伸朗 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2423-2426

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＜Key Points＞◎糖尿病による視覚障害は、特に40～50代の働き盛りに多い。◎治療はインスリンの改良、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など格段に発展した。◎網膜症治療も、光凝固･硝子体手術、抗VEGF薬など進歩した。◎糖尿病による視覚障害者には、疾患特有の病態や社会生活、そして精神的ストレスに配慮した対応が必要である。

ロービジョンの原因となる眼疾患の治療戦略とロービジョンケア　加齢黄斑変性平見　恭彦 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2427-2432

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＜Key Points＞◎加齢黄斑変性は加齢に伴い発症する、中心視野の障害を来す疾患であり、萎縮型と滲出型の2つの病型に分類される。◎萎縮型加齢黄斑変性では黄斑部の網膜色素上皮と脈絡膜毛細血管板の障害による網膜の変性･萎縮により中心視野が障害される。◎滲出型加齢黄斑変性では黄斑部網膜下の脈絡膜新生血管からの出血、血管外漏出が視力低下の原因となる。◎滲出型加齢黄斑変性に対しては、脈絡膜新生血管の退縮を目的とした、血管内皮増殖因子に対する抗体医薬の硝子体内投与が用いられる。◎加齢黄斑変性は高齢者において視力低下が急激に進行したり、両眼性に発症することもあり、ロービジョンケアが必要になる疾患の一つである。

ロービジョンの原因となる眼疾患の治療戦略とロービジョンケア　網膜色素変性斉之平　真弓 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2434-2440

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＜Key Points＞◎網膜色素変性は遺伝性網膜変性疾患で、国が定める指定難病である。◎先天盲の第1位で、緑内障や糖尿病性網膜症に次いで成人視覚障害原因疾患の第3位に位置する。◎初期より夜盲と羞明(眩しさ)症状があり、中期から後期にかけて視野狭窄が進行し後期には視力低下に至るため、各時期に対応したロービジョンケアが重要である。◎病院から地域へつなぐためには、地域のロービジョン関連の社会資源情報を入手しておくことが必要である。◎現在のところ確立した治療法はない。

ロービジョンの原因となる眼疾患の治療戦略とロービジョンケア　変性近視高橋　綾子 , 三宅　正裕 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2442-2446

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＜Key Points＞◎変性近視は、強度近視により視神経や網膜に変性を起こした状態である。◎変性近視は緑内障、網膜剥離、近視性黄斑症などを合併し、視覚障害を来しうる。◎変性近視による視覚障害は、視力障害･視野障害いずれも生じることがあり、個人差が大きい。◎視機能、屈折を十分に評価した上で、本人のライフスタイルにあわせて有効なロービジョンケアを考える。

再生医療とロービジョンケア栗本　康夫 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2448-2452

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＜Key Points＞◎眼科領域において角膜や水晶体など光学的部分の再生医療は臨床実施されてすでに久しいが、網膜については臨床での実用化が始まったところである。◎網膜の再生は不可能だと長年にわたって信じられていたが、iPS細胞などの多能性幹細胞を使うことで再生医療への道が開けた。◎網膜の再生治療においては、機能的な神経回路を再構築するために新たなロービジョンケアが必要になると考えられる。

ロービジョン患者における薬剤管理･患者支援の実践ポイント　ロービジョン患者から見える薬剤管理大江　泰 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2453-2457

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＜Key Points＞◎ロービジョン患者では、服用間違いや薬の紛失などといった薬剤管理上の問題点が多い。◎薬の一包化を行うことでかえって混乱を招く可能性があるため、一包化の必要性について慎重な判断が求められる。◎薬剤変更時は形状や色の違いに重点を置いた服薬指導が求められる。◎薬袋や薬剤情報提供文書、お薬手帳の活用には聴覚を用いた支援を考慮する。◎スマートフォンなどのICT端末や福祉機器が薬剤管理支援に役立つと考えられる。

ロービジョン患者における薬剤管理･患者支援の実践ポイント　緑内障に注意を要する医薬品と代替薬の提案田中　郁壮 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2458-2464

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＜Key Points＞◎緑内障は、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に大別される。◎原発閉塞隅角緑内障、原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角症疑いは、近年、原発閉塞隅角症と総称され始めている。◎閉塞隅角緑内障禁忌薬は、原発閉塞隅角症や原発閉塞隅角症疑いも含めた原発閉塞隅角病まで禁忌として解釈すべきである。◎ベンゾジアゼピン系薬の服用患者では、オレキシン受容体拮抗薬の代替が検討できる。◎頻尿･過活動膀胱治療薬として抗コリン薬服用患者では、選択的β3アドレナリン受容体作動薬の代替が検討できる。

ロービジョン患者における薬剤管理･患者支援の実践ポイント　点眼剤の基礎知識宮坂　萌菜 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2466-2472

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＜Key Points＞◎添加物が点眼剤の特性や使用感を決めている。◎患者自身での保管や期限管理は安全かつ正確に効果を得るために重要である。◎点眼手技を正しく理解することで、副作用を最小限に抑えることにつながる。◎薬剤師が長期的にサポートすることで緑内障の点眼治療を安全に継続できる。

ロービジョン患者における薬剤管理･患者支援の実践ポイント　ロービジョン患者支援のための点眼剤デバイス開発柴谷　直樹 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2473-2478

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＜Key Points＞◎ロービジョン患者支援には患者個々に合ったロービジョンケアが必要である。◎近年さまざまなICT機器を用いたロービジョンケアが提供されている。◎点眼剤のアドヒアランス改善のための点眼支援ツール開発が望まれる。◎医療現場からの意見が点眼支援ツール等の機器開発につながる。

ロービジョン患者における薬剤管理･患者支援の実践ポイント　ロービジョン患者に対する自己注射用製剤の管理と支援西村　博之 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2479-2487

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＜Key Points＞◎ロービジョン患者には、プレフィルド型注入器を推奨する。◎単位設定では拡大鏡を使うことで単位数字を判読しやすくするか、単位設定ダイアルを回転する時の音や感触で判断する。◎複数の製剤を組み合わせる場合には、外観や製剤色での判別がしやすい製剤を選択する。◎ロービジョン患者は、注入器や注射針などの異常に気づきにくいため、異常を起こさないための適切な注入器の操作･取り扱いが重要である。◎患者ができることを尊重しつつ、目視確認が困難な操作･確認については家族･介護者の支援を依頼する。

ロービジョン患者に対する地域連携　病院から地域につなぐロービジョンケアと薬剤師の役割室井　延之 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2489-2493

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＜Key Points＞◎ロービジョン患者は視覚からの情報が得にくい場合が多いことから、服薬指導においては、ロービジョン患者のアドヒアランスが得られにくい環境を把握する。◎点眼アドヒアランス低下の要因としては、視認困難による薬の取り違えや点眼剤の管理ができにくい、自己効力感の低下、もの忘れ、副作用などがある。◎アドヒアランスの維持には、病院薬剤師と保険薬局薬剤師が患者のアドヒアランスを正確に共有し、患者の服薬支援を行うシステムの構築が必要である。◎薬剤師によるロービジョンケアでは、薬物療法に対する患者の理解度、点眼剤の手技に関する情報に加え、患者の生活を考慮した薬学的視点でのアプローチが求められる。

ロービジョン患者に対する地域連携　緑内障薬剤師外来の開設および取り組み平野　達也 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2495-2502

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＜Key Points＞◎アドヒアランスは緑内障の進行に影響を与える。◎点眼回数や点眼剤の種類の増加はアドヒアランスの低下につながる。◎理解度の違いや運動機能の違いから、点眼アドヒアランスの最終目標は患者個々に設定する必要がある。◎点眼アドヒアランスの改善には不良となる原因の特定が重要である。◎点眼補助具を使用する際は、器具の特性を理解しておく必要がある。

視覚補助具とICT機器の選び方と使い方山本　翠 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2505-2510

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＜Key Points＞◎視覚障害といっても症状はさまざまであり、客観的に評価を行うのは容易ではない。◎眼科医療機関にはロービジョンケアを行うための｢ロービジョン外来｣がある。◎見にくさの対処法として、｢拡大｣と｢コントラストを上げる｣が有効になるが、中には拡大が逆効果になる症例もある。◎特別な専門知識はなくとも、ロービジョンケアと視覚障害者をつなぐ一歩は身近にある。

連載

薬剤師が三ツ星シェフ　業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ　経静脈栄養に用いる輸液製剤　末梢静脈栄養用輸液製剤(アミノ酸製剤、脂肪乳剤) 東　敬一朗 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2516-2528

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毒舌妻と統計家　臨床試験論文を読んでみる(第6回)　新型コロナウイルス感染症のワクチンができるまで(前編) 今井　匠 , 井出　和希 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2529-2540

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プロフェッショナルEYE　専門薬剤師からみた勘所　コルヒチンという名の妙薬門村　将太 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2541-2547

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フォーミュラリー道場　医薬品の適正使用を目指して　薬剤別フォーミュラリー　睡眠薬安藤　正純 , 金井　紀仁 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2548-2558

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臨床薬物動態のPITFALL　その常識ウソ?ホント?　薬物の分布容積が小さいから組織移行性が悪い浜田　幸宏 , 海老原　文哉 , 長谷川　千尋 72巻6号 , 2021年5月 , pp.2560-2564

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72巻6号
(2021年5月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0044-0035 南山堂

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