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ウイルス感染症におけるキラーT細胞の役割
細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL,キラーT細胞)は,病原体に感染した細胞などの異常細胞を感知し,それらを排除することで宿主防御において中心的な役割を担っている.CTLは,感染細胞表面のヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)クラスI分子に提示されたウイルス由来抗原ペプチド(T細胞エピトープ)をT細胞受容体(T cell receptor:TCR)を介して認識し,標的細胞を殺傷することでウイルスの排除に寄与する(図1-A).抗原ペプチドを提示するHLA分子は,ヒトゲノムのなかで最も高度な多型性を有する領域にコードされており,各個人は固有のアリルの組み合わせを有している.さらに,各HLA分子は抗原結合溝の構造が異なるため,結合・提示可能なペプチドのレパートリーも分子ごとに異なる.このような理由から,ウイルスに対するT細胞応答の抗原特異性ならびに質(抗ウイルス活性など)はHLA型に依存することが知られており,この現象はHLA拘束性とよばれる.最近の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)研究において,HLA-BアリルのひとつであるHLA-B*15:01がCOVID-19の無症状化と相関することが明らかになり,このことからHLA-B*15:01拘束性のスパイク抗原特異的なT細胞が感染制御に重要な役割を果たしていることが示唆される1).しかし,近年の変異株は,特にスパイクタンパク質に多様な変異を持ち,中和抗体だけでなく一部の主要なT細胞から免疫逃避することが知られている.実際に筆者らは,日本人の約6割が有するHLAのタイプであるHLA-A*24:02陽性ワクチン接種者ならびに感染者において,デルタ株などの懸念すべき変異株に対してT細胞の抗ウイルス活性が顕著に低下することを明らかにしてきた2,3).このことをふまえると,新たな変異株の流行にも対応可能なT細胞誘導型ワクチンの開発には,変異の影響を受けないT細胞抗原,ならびにそれらによって誘導される強力な抗ウイルス活性を有する抗原特異的T細胞の同定が必要不可欠である.
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