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はじめに
筆者は600 床規模の総合内科で勤務する病院総合内科医である.当院の総合内科は,病院の初期研修医教育において中心的な役割を担っている.研修開始後の最初の2 ヵ月間は,初期研修医1年目の全員が総合内科をローテーションする.問診,身体診察,臨床推論,症例プレゼンテーションといった臨床の基本を集中的に学び,その後,各診療科をローテーションしていく.この最初の2 ヵ月間で,筆者が重視している教育項目の一つが,illness scriptと治療のメルクマールである.経験の少ない医師では,疾患に関する知識が断片的に蓄積されていることが多い.しかし実臨床では,疾患を単なる知識のリストとして覚えるだけでは不十分である.日常診療で疾患を経験するたびに,典型的な症状,患者背景,身体所見,検査結果,臨床経過などを結びつけながら,その疾患のillness scriptとして意識的に蓄積していくことが重要である.
診断までのillness scriptに注目が集まりやすい一方で,「診断後の治療中にどのような経過をたどるのか」という治療後のillness scriptも重要である.診断はある一時点で完璧に確定するものではない.治療開始後の推移によって,当初の診断が支持されることもあれば,修正を迫られることもある.したがって,疾患ごとの典型的な治療後経過を知っておくことは,期待される反応から外れた症例に気づき,ミミッカーや合併症を再考する契機となる.
治療後のillness script を実臨床で活用するうえで鍵となるのが「治療のメルクマール(治療反応の指標)」である.われわれは研修医に対して,入院患者の経過を治療のメルクマールに基づいてプレゼンテーションすることを求めている.すなわち,「この疾患であれば,治療開始後に何が,いつ,どの程度改善するはずか」を意識してもらっている.本稿では,illness scriptの概念を整理したうえで,それを診断後の経過に拡張し,治療のメルクマールをどのように実臨床で活用するかについて解説する.

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