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Ⅰ 発達性トラウマ症
トラウマと自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder : ASD)について考える際,避けて通れない概念の一つが,発達性トラウマ症(Development Trauma Disorder : DTD)である。DTDは2005年にvan der Kolkによって提唱された概念であり,子どもが発達途上で長期にわたるトラウマを受けると,脳に変化が生じ,それがADHD,反抗挑発症,PTSD,うつ病,解離性障害,分離不安障害,薬物依存などのさまざまな病態へと発展するというものである(van der Kolk, 2005)。
我が国でDTD臨床に精通している杉山は,被虐待児は学童期に発達障害と診断される例が極めて多いと述べている。そして,少子化が進む我が国では,年間出生数が70万人を切り,さらに減りつつあるのに,児童相談所の子ども虐待対応件数は年20万件以上が続いている状況であり,子ども臨床をしていれば,被虐待児に常に出会っているはずだと述べている(杉山,2025)。
発達障害と虐待との関係については,発達神経症の諸症状は子ども虐待の高リスクとなる,と言われることが多い。だが杉山は,これは誤解であり,神経発達症児に虐待が生じた事例は,必ず親の側に被虐待体験を認め,神経発達症の症状が重症であっても,それを理由に子ども虐待が生じることはなかった,と述べている(杉山,2025)。
発達性トラウマ症の治療については,DTDや複雑性PTSDでは常にある強烈なフラッシュバックへの自己治療としての嗜癖が生じており,フラッシュバックの治療が必要となるが,治療のためにトラウマ記憶を想起させると,限りなく溢れ出てしまい,収拾がつかなくなるため,言語による精神療法がほぼ無効であることが大きな問題点だと杉山は述べている(杉山,2025)。そして,「TSプロトコール」と呼ぶ独自の簡易型トラウマ処理技法を開発し提唱している。これはトラウマ記憶を想起させないで,フラッシュバックに伴う身体の不快感や違和感を標的として,呼吸法や左右交互刺激を用いて,トラウマ処理をしていくものである。詳しくは杉山の文献(杉山,2021)を参照されたい。

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