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はじめに
知的発達症や自閉スペクトラム症のある人にみられる自傷,他害,破壊行動,常同行動などは,近年海外では,チャレンジング行動(challenging behavior)と呼ばれることが多い。これは本人の特性と社会環境との相互作用のなかで生じる困難を示す概念であり,行動の問題を個人内要因のみに還元しない見方を含んでいる(Emerson & Bromley, 1995)。重度のチャレンジング行動は長期に持続し得ることが知られており(Murphy et al, 1993 ; Taylor et al, 2011),学齢期に適切な教育環境や指導体制が整わない場合には,行動がさらに深刻化する可能性も指摘されている(Inoue et al, 2022)。
わが国の学校現場では,強度行動障害に関して2025年に全国の知的障害特別支援学校に対する調査(文部科学省,2025)がなされ,行動上の問題によって一日のうちの一部の時間もしくはすべての時間,継続的に別室での個別対応が必要な児童生徒は在籍児童生徒の2.8%であることが示された。しかしながら強度行動障害のある子どもに対する指導については,東京都教育委員会のガイドブック(東京都教育委員会,2024)が出ているのみで,教師個人の経験や力量に委ねられている部分が大きい。海外においても,外部専門家による学校コンサルテーションの重要性が指摘されているが,重篤な行動障害の持続性について長期的な経過を示した報告は多くない(O’Regan et al, 2024 ; Inoue & Oda, 2020)。
本稿では,著者が経験した知的障害特別支援学校に在籍した自閉スペクトラム症および知的発達症の診断と強度行動障害のある男子生徒に対して,8年間にわたり継続された学校コンサルテーション事例(Inoue, 2024)を取り上げ,受け入れた学校側からの視点,専門医療機関の立場から見た視点を加えて検討したい。

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