特集 老いと向きあう
加齢に伴う心身の変化――ウェルビーイングを支える包括的理解
小原 知之
1
1九州大学大学院医学研究院 精神病態医学
pp.9-12
発行日 2026年2月5日
Published Date 2026/2/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt52010009
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はじめに
わが国は超高齢社会を迎え,高齢人口は2040年まで増加し続けることが明らかとなっている。日本人の平均寿命は延長している一方,平均寿命と健康寿命の乖離は縮まっておらず,「長生きの質」が問われる時代といっても過言ではない。加齢に伴う身体機能の低下や精神的脆弱性に,社会的孤立や経済的不安,介護負担などの環境要因が重なることで,高齢者の生活課題は一層複雑化している。さらに,認知症をはじめとする老年期の精神疾患の増加が,医療・介護の枠組みに影響を及ぼしている。
こうした高齢者の問題は,もはや単一の疾患モデルでは説明できず,「身体」「精神」「社会環境」の三層を統合的に理解する視点が不可欠である。特に老年期では,身体的脆弱性(フレイル)や聴覚・視覚などの感覚器障害,および生活機能の低下が心理的苦痛や行動変容をもたらし,精神疾患の発症・増悪に連鎖する。すなわち,高齢者の健康は医療だけでは十分とはいえず,生活支援・心理的支援・社会的支援を含む包括的アプローチが求められている。
本稿では,高齢者が抱える身体的・心理的・社会的諸課題を多角的に整理し,医療・介護・福祉が連携して取り組むべき支援の方向性を概説する。特に,認知症などの老年期精神疾患やフレイルといった老年期特有の課題,そして近年重視されるウェルビーイングの視点を通じて,高齢期の精神的健康を支えるために求められる支援のあり方を整理する。

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