特集 児童相談所と精神療法
医療側からみた児童相談所との連携の実際と困難さ―その工夫について
岩垂 喜貴
1
1駒木野病院
pp.622-627
発行日 2025年10月5日
Published Date 2025/10/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51050622
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はじめに
児童精神科医療と児童相談所(以下,児相)は,それぞれ異なる専門性と法的根拠に基づきながらも,子どもの精神的健康と福祉を支えるという共通の目的を持つ。児童精神科医療は主に精神疾患の診断と治療に焦点を当て,児童相談所は子どもの福祉全般,特に保護を必要とする子どもたちの支援に重きを置く。両機関が対象とする子どもたちには重複する部分が多く,特に複雑な問題を抱えるケースにおいては,それぞれの専門性を活かした密接な連携が不可欠である。情報共有の促進,ケース会議の開催,専門職の交流などを通じて,児童精神科医療と児童相談所が協働することで,子どもたちへのより包括的かつ継続的な支援が実現され,その健やかな成長が保障される。本稿では,児童相談所と医療機関の連携について,それぞれの機能と役割を踏まえ考察を行う。両者は子どもの精神的健康と福祉に寄与する重要な機関であるが,専門性,介入の視点,法的根拠において差異が存在する。児童精神科臨床において児童相談所との連携は不可欠といえるが,現状では必ずしも円滑に進んでいないのではないだろうか。その点を踏まえて本稿ではその原因や考えられる対処法における理論的枠組みについて考察したい。

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