投稿論文 研究報告
中国人留学生の対人不安とその対処―森田療法のグループ学習の試み
趙 丹寧
1
,
宮崎 さおり
2
,
松浦 隆信
3
,
久保田 幹子
4
1埼玉大学教育機構
2M.A., LMFT
3日本大学文理学部
4法政大学現代福祉学部
キーワード:
留学生
,
異文化適応
,
対人不安
,
森田療法
,
グループ学習
Keyword:
留学生
,
異文化適応
,
対人不安
,
森田療法
,
グループ学習
pp.499-508
発行日 2025年8月5日
Published Date 2025/8/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51040499
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本研究は,中国人留学生が日本での適応過程で起きる対人関係の不安について,森田療法を用いたグループ学習を試み,対人不安の実態と対処方法を検討するものである。留学生にとって最も困難な適応課題は対人関係であり(松見,2017),人数最多の中国人留学生も対人関係で不安を感じることが多く(殷・青木,2017),表出の仕方などに不適応感がある(毛,2014)。本研究は2024年3月に20代後半の中国人留学生7名を対象に,計4回のセッションを実施した。中国人留学生は対人関係に高い期待を持つゆえ,無理をしてでも積極的に取り組む「かくあるべし」思考を持つ傾向があり,日本人に対する固定観念を抱くこともある。そのため,不自然な関係作りや発言・発表をして自身の不安を高め,さらに不安や不調に対して注意が集中し固定化すること(森田療法の「精神交互作用」),および日本語・日本文化におけるハンディキャップや不安・不調を否認し排除すること(森田療法の「思想の矛盾」)が,不安・不調を悪化させやすい。4回の介入は,ロールプレイと前後の討論,森田療法の学習を通じて,実際に関係作りと発言・発表を行う体験をしてもらい,各自が持つ「かくあるべし」思考に気づかせ,感情の変化を実感してもらい,対処法を共に検討した。その結果,参加者は自分の「かくあるべし」思考に気づき,目的本位での行動を意識し,平等感と共感を意識し,自信が高まるなどの変化が見られた。

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