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Farhad Dalal注)は多才な人である。2020年に書評(『Group Analysis』53(4))が出た『The Cognitive Behavioural Tsunami』(2018)では,CBTのTを津波に置き換えて,イギリスの精神医療をCBTが席巻するさまを描き,CBTは数字を出すことを重視して大きな予算を獲得したこと,また書評にもあるように,そうした状況を,CBT-マネージメント至上主義-新自由主義の“辱三位一体”と呼んで批判したことは印象的であった。
だが,Dalalの本領は集団精神療法にある。1998年に出版された本書は,“グループを真剣に考える”という,ある意味挑発的な表題が付いており,その23年後の2021年には,「Taking the Group(really)seriously(“グループを本当に真剣に考える”)」という論文も発表している。ここからは,集団について真剣に考えなければならないという強い主張がうかがわれる。もちろんすべての集団精神療法家は,集団精神療法について真剣に考えている。だが,集団とはそもそも何なのかということについて考えることはあまりないかもしれない。集団についてあらためて問うことは,アウグスティヌスの『告白』にあるように,“誰も私に尋ねなければ私はそれを知っている,私に尋ねる人にそれを説明しようとすると私はそれを知らない”ということになりかねない。集団とは何かを真剣に問うことは,だから,集団の個々の成員の集まりと,entityとしての集団を混同しない限り,ギルバート・ライル(『心の概念』)のカテゴリー錯誤,フレーゲ(『算術の基礎』)の概念とその外延の問題,中世神学の唯名論と実在論にまでかかわってくるような問題なのである。

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