特集 地域精神保健福祉の歩き方
周産期・母子支援と連携のネット
藤澤 真莉
1
1妊娠産後メンタル相談室マリー
pp.331-335
発行日 2025年5月10日
Published Date 2025/5/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25030331
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I 「切れ目のない支援」に潜む「人の切れ目」
周産期メンタルヘルスの問題や社会的困難を抱える妊産婦と子どもを支えるのに,多職種・多機関の連携は必須である。2020年以降,妊産婦死亡の原因は自殺が最も多く,そのリスク因子は家族やパートナーとの問題,身体的な不調,児の異常や入院,不安が挙げられている(日本産婦人科医会,2023)。このリスク因子を見ても,さまざまな立場の専門職が連携して関わる必要性があるのは言うまでもないだろう。一方,妊産婦の視点に立った時,妊娠中から育児期の間に数々の専門職に会う機会はあるのだが,その中で,信頼関係を築けた出会いはどれくらいあっただろうか。自分の悩みや家庭内の問題を,誰にどのように話したらよいのかがわからない,そもそも困りごとを話す発想を持たないまま過ごしている人はまだまだ多いだろう。
「切れ目のない支援」とは,制度に切れ目がないことではなく,妊産婦が信頼できる支援者や専門職と継続的につながることによって実現されるものだ。しかし,妊娠中から育児期にかけて,支援者との「人の切れ目」が非常に多いのが現実だ。本稿では,バイプレイヤー(=周産期の母子を支援するコアな支援チームと外部連携する心理専門職)として,人の切れ目を接着し,ケアや支援を橋渡しする動きについて紹介したい。

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