税・社会保障一体改革に向けて ―給付と負担の分析と年金制度改革の検証（上）

１　はじめに 　政府が当初国会提出を見送った年金制度改革法案が、野党の賛成を得て、去る５月末に成立した。今般の改革は年金制度の機能強化を図るために不可欠だと厚労省は説明するが、多くの問題と矛盾が内在しており、現行の年金制度の問題を十分に審議することのない拙速な改革だったと筆者は考える。今回の改正では特に被用者保険の適用拡大に問題があると考えているが、これは年金制度だけに関係するものではない。日本の社会保障制度の給付と負担のあり方に関わる根幹的な問題である。