論評
税・社会保障一体改革に向けて
―給付と負担の分析と年金制度改革の検証(下)
田中 秀明
1
1明治大学公共政策大学院教授
pp.14-22
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.57527/JUNPO2974004
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(前号「上」から続く) 4 日本における負担の構造 ⑴社会保険料の逆進性 日本について、各税目の推移を見たのが図12である。1990年から2022年の間で、所得税・法人税は減少する一方、社会保険料が突出して増えている(対GDP比で7・3%から13・3%へとほぼ倍増)。そして、一般政府収入全体に対する社会保険料の割合は、OECD諸国の中で日本が最も高い。 社会保険料の問題は、低所得者ほど負担割合が高いという逆進性である。日本の年金や医療保険制度は職業によって分立しているため、制度によって負担ルールが大きく異なる。年金保険については、第1号被保険者(国民年金)の保険料は、原則として所得にかかわらず定額であることから、所得が高いほど負担率は低下する(図13)8。第2号被保険者(厚生年金)の保険料は上限があるため、高所得者の負担率は低下する9。医療保険のうち、国民健康保険料については均等割があるため逆進的になる(図14)10。健康保険組合の保険料は、組合により相違があり(3~13%)、また大企業の組合ほど平均所得が高いので、厚生年金以上に逆進的である。なお、高齢者の介護保険料と後期高齢者医療の保険料については、均等割などがあるものの、収入に応じて段階的になっており、逆進性は医療保険ほどではない。

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