特集 緩和医療
総説 日本の緩和ケア
アドバンス・ケア・プランニングと療養場所の選択
森 雅紀
1
1聖隷三方原病院緩和支持治療科
キーワード:
▶ACPは,もともと欧米で自律性尊重の立場からADの普及とともに発展してきた.
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▶SUPPORT研究などにより,AD作成のみでは終末期のアウトカム改善にはつながらないことが明らかとなり,ACPは文書作成から「本人の意向を共有し,将来および現在の意思決定を支える話し合いのプロセス」へと重心が移った.
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▶欧米では2017年に合意形成研究が発表され,個人の自律を尊重した定義が示された.
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▶アジアでは家族先行の意思決定や「関係性の中での自律」が重視され,医療者の知識・制度整備の不足などを背景に,本人中心で家族にも配慮する文化適合的アプローチが提唱されている.
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▶日本でも2018年に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が改訂され,繰り返しの話し合いを重視する定義が提示された.
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▶ACPは短期的なプロセス改善には有効だが,QOLや目標に一致したケアの改善は限定的であり,予後の複雑さや患者の想像の困難さが背景にある.
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▶進行がんでは,ACPと併せた早期緩和ケアなど包括的支援の有効性が示されている.
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▶日本では病院死が依然多いが,自宅・施設死は増加傾向にあり,療養場所と希望の一致は「望ましい死」の独立した関連因子である.
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▶ACPは目的ではなく,手段である.療養の経過を通じて価値観を尊重したケアやシステム整備を行いつつ,地域・医療機関・現場を横断した多職種による取り組みが求められる.
Keyword:
▶ACPは,もともと欧米で自律性尊重の立場からADの普及とともに発展してきた.
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▶SUPPORT研究などにより,AD作成のみでは終末期のアウトカム改善にはつながらないことが明らかとなり,ACPは文書作成から「本人の意向を共有し,将来および現在の意思決定を支える話し合いのプロセス」へと重心が移った.
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▶欧米では2017年に合意形成研究が発表され,個人の自律を尊重した定義が示された.
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▶アジアでは家族先行の意思決定や「関係性の中での自律」が重視され,医療者の知識・制度整備の不足などを背景に,本人中心で家族にも配慮する文化適合的アプローチが提唱されている.
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▶日本でも2018年に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が改訂され,繰り返しの話し合いを重視する定義が提示された.
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▶ACPは短期的なプロセス改善には有効だが,QOLや目標に一致したケアの改善は限定的であり,予後の複雑さや患者の想像の困難さが背景にある.
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▶進行がんでは,ACPと併せた早期緩和ケアなど包括的支援の有効性が示されている.
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▶日本では病院死が依然多いが,自宅・施設死は増加傾向にあり,療養場所と希望の一致は「望ましい死」の独立した関連因子である.
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▶ACPは目的ではなく,手段である.療養の経過を通じて価値観を尊重したケアやシステム整備を行いつつ,地域・医療機関・現場を横断した多職種による取り組みが求められる.
pp.172-179
発行日 2026年2月1日
Published Date 2026/2/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.43.02_006
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アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の経緯や定義
1.欧米におけるACP
20世紀後半,欧米を中心に自律性重視の立場から事前指示書advance directive(AD)が広まった.米国では1991年に患者の自己決定法が施行され,入院患者にはADについて情報提供することが勧められた.同法施行の前後には,終末期ケアの実態を同定し,ACP介入の効果を検証するため,SUPPORTという大規模研究が行われた.急性呼吸不全,敗血症,多臓器不全,慢性閉塞性肺疾患,心不全,肝硬変,転移性がんなど重篤な疾患を有する患者4,000人以上を対象とした観察研究とランダム化比較試験(RCT)であったが,終末期ケアの質は全般的に低く,AD作成支援を含む複合的ACP介入を行っても終末期のアウトカムは改善しないことが示された.さらに,ADは医師・患者間のコミュニケーションや蘇生に関する意思決定を促進せず,ADにはいざというときのケアに繋がる詳細な内容がほとんど書かれておらず,ADのカルテ記載が増えても医療費削減には繋がらないことも報告された.

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