特集 がん検診とリスク層別化検診の課題
セミナー② リスク層別化検診の課題
大腸がんハイリスク抽出法の検討
松田 尚久
1
1東邦大学医学部内科学講座消化器内科学分野
キーワード:
▶大腸がんは,年間約15万人が罹患し,約5万人が死亡する主要ながんである.
,
▶大腸がんの発症リスクは,生活習慣,既往歴,遺伝的素因などに大きく影響される.
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▶多様なリスク因子に基づき,個人のリスクを定量化するスコアが開発されている.
,
▶8-pointリスクスコアは,性別,年齢,喫煙歴,BMI,家族歴に基づき,個人のリスクを定量化するものである.
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▶FITは日本の大腸がん検診に広く用いられているが,右側結腸病変に対する感度には限界がある.
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▶Cologuard®やColoSense®は米国で導入され,高い感度が報告されているが,コストや特異度に課題がある.
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▶血液検査ではmSEPT9などが開発され,便採取を回避できる利点があるが,精度面での評価が必要である.
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▶TCSは精度の高い検査であるが,医療資源の制約や偶発症リスクのため,誰にどのタイミングで実施するかの判断が重要となる.
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▶マイナンバー制度と自治体の検診データを連携させた個人単位での受診管理体制の整備が急務である.
Keyword:
▶大腸がんは,年間約15万人が罹患し,約5万人が死亡する主要ながんである.
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▶大腸がんの発症リスクは,生活習慣,既往歴,遺伝的素因などに大きく影響される.
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▶多様なリスク因子に基づき,個人のリスクを定量化するスコアが開発されている.
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▶8-pointリスクスコアは,性別,年齢,喫煙歴,BMI,家族歴に基づき,個人のリスクを定量化するものである.
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▶FITは日本の大腸がん検診に広く用いられているが,右側結腸病変に対する感度には限界がある.
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▶Cologuard®やColoSense®は米国で導入され,高い感度が報告されているが,コストや特異度に課題がある.
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▶血液検査ではmSEPT9などが開発され,便採取を回避できる利点があるが,精度面での評価が必要である.
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▶TCSは精度の高い検査であるが,医療資源の制約や偶発症リスクのため,誰にどのタイミングで実施するかの判断が重要となる.
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▶マイナンバー制度と自治体の検診データを連携させた個人単位での受診管理体制の整備が急務である.
pp.1411-1416
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.09_021
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はじめに
大腸がんは,日本において年間約15万人が新たに罹患し,約5万人が死亡している疾患であり,罹患数では男女計で第1位,死亡数でも男女計で第2位を占める主要ながんである.高齢化により今後も増加が予測される中,早期発見・早期治療による死亡率の抑制は重要課題である.現在,日本では免疫便潜血検査fecal immunochemical test(FIT)が,対策型検診の一次スクリーニングとして推奨されており,簡便かつ非侵襲的な検査として長年活用されてきた.FITの有効性は複数の前向き研究で実証されており,国も推奨グレードAに位置づけている1).一方で,FITには診断感度に限界があり,大腸がんの確定診断に不可欠な大腸内視鏡検査には,まれではあるが偶発症のリスクや医療資源の制約が伴う.そのため,対象を適切に絞り込むためのハイリスク抽出法の確立が求められている.本稿では,①受診者の背景因子,②リスクスコアとFITの併用,③新規モダリティの活用という3つの視点から,大腸がんハイリスク者の抽出法を海外事例とともに概説し,今後の課題と展望について論じてみたい.

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