特集 新型コロナウイルス感染症UP-TO-DATE 2021
4.新型コロナウイルス感染症を指定感染症にしておくことの功罪
森兼 啓太
1
1山形大学医学部附属病院検査部・感染制御部部長
pp.26-32
発行日 2021年4月30日
Published Date 2021/4/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0108.05.01_0026-0032
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2019年12月31日,中国で原因不明の肺炎患者が27名発生していることが武漢市当局から発表された.その原因が,のちにSARS-CoV-2と命名されるコロナウイルスであることが突き止められ,このウイルスによる感染症はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)と命名された.この感染症はあっという間に国際的に拡散してパンデミックとなった.1ヵ月後にはWHO(世界保健機関)によって公衆衛生上の緊急事態が宣言された.それからまだ1年少々しか経過していないが,2021年3月はじめの時点で世界の感染者数が1億人を超え,200万人以上が死亡している.日本の感染者は43万人あまり,うち8千人以上の死亡者を数えている.その一方で,ワクチンも迅速に研究開発されている.詳細は本誌特集3をご覧いただきたいが,早い段階で臨床試験が行われた2種類のメッセンジャーRNAワクチンがともに有効率約95%という驚くべき高い数字を叩き出した1,2).それらは2020年12月頃から接種がはじまり,先行するイスラエルや米国では新規感染者が著明に減少してきている.その効果については,接種されたワクチンの本数が人口とほぼ同じ数にまで達したイスラエルで特によく検討されており,臨床試験に近い有効性が示されている3,4).ワクチンの流行抑制効果が現れはじめているといえ,コロナ禍から世界が抜け出すための重要な一歩が今,刻まれようとしている.
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