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2019年12月,中国の武漢市に端を発する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,発熱,咳嗽ならびに肺炎などの呼吸器症状や重度の呼吸器障害である急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす1).本疾患は,特に高齢者および基礎疾患を有する患者では死亡率が高い2).COVID-19由来のコロナウイルスゲノムを詳細に解析した結果,このウイルスはSARS(2003年に出現)の原因となったSARSコロナウイルスに近縁であることからSARS-CoV-2と命名された1).主な感染経路は他の呼吸器ウイルスと同様に飛沫感染と接触感染である3).SARS-CoV-2感染拡大を防ぐためには手指の消毒,生活環境のなかで人が触れる物の消毒,医療機関では院内感染防止のために,患者に使用した医療機器,入院治療の消毒ならびに院内環境の消毒などがきわめて重要であると考えられる4).現在,これらの感染を防ぐために,法により消毒薬として承認され,汎用されているのはエタノールと次亜塩素酸ナトリウムである5).インフルエンザウイルスやC型肝炎ウイルスなどエンベロープを有するウイルスの消毒には,エタノールやイソプロピルアルコールなどを主成分とする消毒薬を用いる6)が,COVID-19の流行により供給不足が続いており,現在入手が難しい状態にある.また,エンベロープを有するウイルスのみならず,ノロウイルスなど,非エンベロープウイルスの殺滅にも効果的な次亜塩素酸ナトリウム溶液は,使用推奨濃度が200ppm~5,000ppmまで推奨使用濃度に幅があるうえ,直接人体に使用することはできず,安全性に問題がある7).今回,このような背景から,われわれは最初にエタノールと次亜塩素酸ナトリウムのSARS-CoV-2に対する不活性化効果を調べた.次に,インフルエンザウイルスなどの不活性化に有効とされている各種界面活性剤8)のSARS-CoV-2に対する消毒効果を調べた.さらに,医療機関でのSARS-CoV-2感染予防に貢献するため,病院で用いられている消毒剤のSARS-CoV-2の消毒効果を調べた.くわえて,SARS-CoV-2不活性化効果のある製品を日常生活のなかで安心して使用できるように,市場に豊富に出回っている市販ハンドソープ,手指衛生用品ならびに市販されている次亜塩素酸水のSARS-CoV-2消毒効果を調べたので,以下に報告する.
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