「人」
第10回
齋藤 利和
1
1特定医療法人北仁会幹メンタルクリニック院長
pp.2-2
発行日 2019年2月15日
Published Date 2019/2/15
DOI https://doi.org/10.34449/J0078.07.01_0002-0002
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46年前,私が赴任した病院では患者の3割はアルコール依存症者であった。それまで治療といえば大量の向精神薬の投与と,長期入院がそれであった。患者は不信感と深い絶望の中におり,そのためか時々引き起こす種々の問題行動のため,アルコール依存症者は精神病院にとっては厄介者であった。こうした状況を打破すべくアルコール依存症の集団精神療法や外出訓練を始めたとき,理解はほとんど得られず,周囲は非難の嵐だった。なかでも看護師がアルコール依存症の新患を入院させることに反対することに至っては反感すら抱いた。勉強会やカンファレンスを開いて理解者を増やそうとしたが,大した結果は得られなかった。彼らをアルコール依存症治療プログラムの推進者に成長させたのは,退院した患者たちだった。
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