ドライアイリサーチアワード受賞論文解説
次世代多目的コホート研究を用いた睡眠とドライアイの関連解析
羽入田 明子
1
1慶應義塾大学医学部眼科学教室 助教
pp.31-32
発行日 2023年11月10日
Published Date 2023/11/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0042.18.02_0031-0032
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近年,ドライアイの発症や増悪には,さまざまな生活習慣や環境要因が密接に関わっていることが示唆されており,ドライアイも“ライフスタイルディジーズ”の1つであるという概念が浸透してきている1)。これまで,われわれの研究グループは,座位時間の延長や身体活動量の低下,visual display terminals(VDT)作業の延長がドライアイのリスク因子になる可能性を報告してきた2)-4)。その延長として,今回は,生活習慣のなかでも睡眠行動に着目し,ドライアイとの関連を検討することとした。睡眠は,われわれの生活に不可欠な生理行動であり,1日の3分の1以上に及ぶ。特に,日本では,睡眠不足と過労が大きな社会問題として注目されており,経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかでも,日本人の睡眠時間は7時間半程度と最も短いことが知られている5)。睡眠不足は,肥満,糖尿病,高血圧を含むさまざまな生活習慣病やうつ病などの精神疾患のリスク因子や増悪因子となりうることが知られており6)-8),ひいては,死亡率の上昇9)にもつながることがさまざまな疫学研究から報告されてきた。睡眠障害とドライアイに関しては,本邦のAyaki,Kawashimaらが世界に先駆けて報告してきた10)-13)。本研究では,これまでの既報をさらに発展させるため,一般地域住民を対象に,睡眠時間の短縮と睡眠の質の増悪の両者が,ドライアイに及ぼす影響を多角的に検証することにした。
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