文学にみる病いと老い(97)
碧素・日本ペニシリン物語
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.94-100
発行日 2017年2月20日
Published Date 2017/2/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.35.02_0094-0100
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
現在では,抗生物質*1は簡単に使うことができるし,むしろ,過剰投与による耐性菌*2出現が懸念されている時代である。抗生物質の投与の基本は,まずペニシリン*3をうまく使うことだと,研修医時代には教えられたが,現在では,もっと抗菌スペクトラム*4の広い,副作用も少ないよい抗生物質があるので,医師の間でもペニシリンそのものへの関心が希薄になっているかも知れない。本シリーズでは前回,第二次世界大戦直後のウィーンで,ペニシリンを水増しして闇市で売って,多くの患者を死に至らしめたり,後遺障害をのこしたハリー・ライムという悪党の話「第三の男」を紹介した。その小説の中からも判るように,当時ペニシリンはなかなか手に入らない,貴重な薬であった。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.