- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
医療関連感染を低減させるたには,手指衛生が最も重要であるということは古くから言われてきたが,医療環境について,特に,高頻度接触表面であるドアノブなどを介する感染の可能性については,2000年頃から報告されていた1,2)。当時,日本の多くの医療施設では手指がきれいであれば環境清掃は水拭きでも良いとされ,水や洗浄剤を薄めた水に雑巾を使用して清拭清掃を行っていた。その後,医療環境からの交差感染の問題についても議論され,2005年2月1日付け厚生労働省医政局指導課長通知『医療施設における 院内感染の防止について』3)の「環境整備及び環境微生物調査」の項目で,「ドアノブ,ベッド柵など,医療従事者や患者が頻繁に接触する高頻度接触表面については,定期的に清拭し,必要に応じてアルコール消毒を行うこと」と示された。しかし,消毒用エタノールやそれを含浸したシートは,消毒はできても洗浄成分が配合されていないため,汚れを除去しにくいことや,プラスチック類を劣化させること4),エタノールは短時間で蒸発し作用時間が短いことから,除菌効果が不充分となる可能性があった。その後,2011年および2014年の厚生労働省医政局地域医療計画課長通知『医療機関における院内感染の防止について』5)における同項目については,「ドアノブ,ベッド柵など,医療従事者,患者等が頻繁に接触する箇所については,定期的に清拭し,必要に応じてアルコール消毒等を行うこと」と「等」が追加され変更された。これにより,各企業から洗浄剤と消毒薬を配合した環境清拭クロス製品やワイプ製品,環境洗浄剤,環境除菌洗浄剤などが販売され,その選択に迷うところである。今回はどのような視点で選択する必要があるか基本的なことを考察する。
Copyright © 2020, Van Medical co., Ltd. All rights reserved.