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FDAルールによるLDT規制の衝撃と米国病理臨床検査室における大混乱
玉眞 健一
1
1ピッツバーグ大学 医学部 病理学
pp.952-956
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.32118/mt53100952
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はじめに
2024年4月29日,米国食品医薬品局(FDA)はLDT(laboratory developed tests)を医療機器の一つである体外診断装置(in vitro diagnostics devices;IVDs)として規制するという最終ルール(FDAルール)を打ち出し,このことはその1週間後の5月6日に米国連邦政府の公式な公報である連邦官報(Federal Register)に記載された1).米国連邦政府の一機関であるFDAには法律そのものを作る権限はないものの,法律に基づいて規制を策定し,施行する規則制定(rulemaking)が認められている.FDAはLDTをIVDsとして位置づけ,1976年医療機器改正法(Medical Devices Amendments Act of 1976)に則った規制権限を長年にわたって主張し続けてきたが,とうとうその主張を正式な規制として打ち出したことになる1,2).このFDAルールは,FDAが従来行ってきた「裁量的運用(enforcement discretion)」を段階的に廃止し,LDTに対しても医療機器規制と同様の厳格な規制を導入するものであった.すなわち,LDTを開発して使用する病理臨床検査室に対し,医療機器に適用されてきたものと同様の事前承認や品質管理システムの導入といったさまざまな厳格な要件を課すものであったため,全米の病理臨床検査室に多大な混乱と反発をもたらすこととなった.

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