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内容のポイント Q&A
Q1 定義や目的は?
「Stroke Oncology(腫瘍脳卒中学)」は,脳卒中領域とがん領域の関係を示す新しい用語である.定義は,がんと脳卒中合併例の病態やリハビリテーションを含めた治療法等臨床研究的側面のみならず,両疾患の合併後の治療支援体制構築といった社会医学的側面まで,多岐にわたる領域横断的コンセンサスを形成する新しい分野である.目的は,関係する医療従事者の情報共有や協働により,両疾患合併例に存在する課題やアンメットメディカルニーズを解決することである.
Q2 がん診療における位置づけ,ベストプラクティスは?
非がん患者と比較し,がん患者は脳卒中リスクが高い.脳卒中を契機に初めてがんがみつかる場合もある.脳梗塞が多いが脳出血もある.急性期脳梗塞の緊急治療(静注血栓溶解療法,機械的血栓回収療法)は迅速な対応が必要である.がんのみを理由に緊急治療を控えることは避けるべきである.脳卒中の原因はがん関連凝固異常がよく知られているが,腫瘍による血管閉塞,併存症,がん治療関連,偶発合併等がある.
Q3 リハビリテーション専門職の役割は?
リハビリテーションは脳卒中治療の中でも非常に重要である.脳卒中リハビリテーションにより症状改善が期待できる.急性期は基本的には通常の脳卒中患者と同様にリハビリテーションを開始する.がん治療の開始や継続は脳卒中後遺症によって判断されることがあるため,後遺症の回復の見込みやその時期等の見通し,患者の考え等をリハビリテーション科医師,リハビリテーション専門職とも相談する必要がある.
Q4 学術的な位置づけ,エビデンスは?
日本脳卒中学会に「Stroke Oncologyに関するプロジェクトチーム」が,日本がんサポーティブケア学会に「Stroke Oncologyワーキンググループ」が設置され議論を始めている.脳卒中患者の多くが,生活機能向上を目的としたリハビリテーション治療の対象となる.脳卒中リハビリテーション,がんリハビリテーションとも重要であることから,がんと脳卒中合併例においてもリハビリテーション治療の対象となり得る.現時点で両疾患合併例に限定したリハビリテーション治療のエビデンスは存在しない.
Q5 今後の展開は?
脳卒中リハビリテーションとがん薬物療法の両立をどうすべきか迷うことは少なくない.回復期リハビリテーション病院ではがん合併例に対するがん治療の継続が難しい.その理由は,回復期リハビリテーション病院には通常がんの専門家が不在であること,包括対象のために高価薬剤を使用しにくい環境等が挙げられる.日本脳卒中学会のプロジェクトチーム,日本がんサポーティブケア学会のワーキンググループにおいて議論を深めている.
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