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内容のポイント Q&A
Q1 気管切開はどのようなときに適応になるか?
気管切開は,首の下方で頸部気管に直接到達する気道(呼吸路)を作成する手術である.この手術は,①咽頭や喉頭等の上気道に狭窄があり,直接下気道への気道確保が必要な場合(ただし緊急手技ではない),②人工呼吸管理等のために経口ないし経鼻の気管内挿管が行われており,数週間以上の長期に及ぶ場合,③下気道に貯留する喀痰や分泌液が多く,頻回に吸引しないと呼吸が困難な場合,に行われる.
Q2 気管切開は誤嚥を防止できるか?
気管切開後には気管切開口から気管内に気管カニューレが挿入される.気管壁とカニューレの間で膨らむカフのついたカニューレを用い,上気道側からの誤嚥物が下気道に流入することをある程度防止し,さらに下気道に流入した誤嚥物をカニューレから吸引できる.しかし上気道と下気道の連続性が保たれるので,後述する誤嚥防止手術とは異なり,気管切開術は100%誤嚥を防止できる治療法ではない.
Q3 気管切開と誤嚥防止手術の違い,気管切開口と永久気管口の違いは?
気管切開では,手術後にスピーチタイプのカニューレを用いて発声を可能とする.喉頭や咽頭の閉塞がなければ,気管切開口を塞いで呼吸できる.症状が改善すれば気管切開口を閉鎖し得る.
誤嚥防止手術の多くは,上気道と下気道を分離して100%誤嚥を防止する.作成される永久気管口は,体表では気管切開口と同様の穴にみえるが,下気道にのみ交通し,塞ぐと窒息する.
Q4 回復困難な重度誤嚥に気管切開を行うべきか?
重度誤嚥を伴う患者では,気管切開により気管や肺に流入する唾液や痰等を吸引しやすくし呼吸状態を良好にできる.また,カフ上の唾液等をサイドチューブで吸引できる.しかし気管切開には,嚥下機能を直接的に回復する効果や,誤嚥そのものを解消する効果はない.気管切開後に頻回の吸引を要し,切開部に肉芽や感染を生じるケースがあることから,気管切開の長期管理は患者,家族,介護者の負担を多くする.回復困難な重度誤嚥を伴う患者には耳鼻咽喉科医師と相談して誤嚥防止手術の実施を考慮することが望ましい.
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