認知症の基礎知識とリハビリテーション
7.生活障害に対する分析の視点と支援
谷川 良博
1
,
糸原 郁美
2
1令和健康科学大学 リハビリテーション学部作業療法学科
2井野口病院 リハビリテーション科
キーワード:
生活障害
,
作業療法
,
工程分析
,
認知症
,
提案
Keyword:
生活障害
,
作業療法
,
工程分析
,
認知症
,
提案
pp.85-89
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr033010085
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暮らしの中の生活障害
認知症による生活障害(以下,生活障害)の定義には,「生活の中で果たしてきた役割や単独で遂行していた行為の遂行に支障をきたした状態」 1),「認知症者にみられる日常生活上の障害であり,明らかな運動障害や感覚障害を伴わないことが一般的である.失行・失認等局所病変に呼応する症候も含まれる」 2)等が示されている.一般的に個人の生活様式は,人生史や家族構成,家屋構造等も含めて多種多様であり,認知症に罹患してもその多様性は,同様である.特に,二重下線の『役割』の意味は深く,人生で培ってきた価値観や矜持も内包されている.認知症の人(以下,当事者)にとって,認知症は,ある日突然襲ってきたのではなく,長い時間をかけて発症に至り進行していく.認知症の初期には生活障害を自身の工夫と努力で何とか解決できていたが,その努力を上回るほど認知症は進行し,現実とのズレが大きくなっていく.
一方,家族や介護職等の多職種(以下,関係者)が目の当たりにする生活障害は,外見は身体に障害がないのに食事を食べようとしない,着替えができない,そうかと思うとできる日もある.関係者はその原因や対応法がわからず精神的負担が増していく.ある関係者は,失敗を指摘して修正させようとする.これは,当事者にとって「何が駄目であったかは記憶に残らず,失敗した・自信を失ったという悪い印象だけが刻まれ」 3),その後の生活意欲を損なう要因になる.生活障害は当事者を含めて関係者にも大きな影響をもたらすため,課題解決の優先度は高い.
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