備えておきたい 院内エマージェンシー対応③
アナフィラキシーによるエマージェンシー
荒神 裕之
1
Hiroyuki Kojin
1
1山梨大学大学院 総合研究部 医学域 医療安全学講座
pp.4-9
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn147010004
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食物アレルギーは,「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されている1).なかでもアナフィラキシーは,複数の臓器にまたがる急性の過敏反応であり,数分以内に生命を脅かす危険性がある重篤なアレルギー反応である2).医療機関では,薬剤投与時のリスクが注目されがちであるが3),食物アレルゲンによるアナフィラキシーも院内における重大なリスクの一つである.
日本医療機能評価機構が収集,分析している「医療事故情報収集等事業」4)の2010年から2025年までのデータに基づく解析で,医療機関での食物に関連するアナフィラキシーの事例報告は19件であり,幸い死亡事例はない.一方で,2012年12月に起きた東京都調布市立小学校の事例では,当時小学校5年生の女子児童が食物アレルギーによるアナフィラキシーショックで死亡しており,初動対応の重要性が指摘されている5).この事例では,緊急時の初期対応が救命可否を分かつ問題であり,死亡事例回避のための重要な要因の一つとしてあげられている.医療事故情報収集等事業の報告事例でも,アレルゲンと認識されていなかった食物に起因するアナフィラキシーの報告例もあることから,緊急時の初期対応をぜひとも知っておいてほしい.

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