Japanese
English
TOPICS 神経内科学
認知症診療における医科歯科連携
-――counterpartとしての歯科の意義
Medical-dental collaboration in dementia care:the significance of dentistry as a counterpart
眞鍋 雄太
1
Yuta MANABE
1
1神奈川歯科大学臨床先端医学系認知症医科学分野 認知症・高齢者総合内科
pp.519-520
発行日 2025年11月8日
Published Date 2025/11/8
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295060519
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
病気のドミノ倒し
高齢者の健康は,相互に作用し合うさまざまな要素の絶妙なバランスの上に成り立っている.それゆえ,要素がひとつでも欠落してこの力学的均衡が崩れると,まるでドミノ倒しのように重篤な不健康状態へと変転することになる.サルコペニアは均衡を危うくする要因のひとつであり,サルコペニアというドミノ牌が倒されると,易転倒性を生じ,転倒の結果として腰椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折を受傷することで活動性は著しい制限を見る.社会活動の制限やコミュニティとの断絶は認知機能の低下を生じ,認知機能の低下は口腔内衛生状態の不良をきたすことになる.口腔内不衛生は嚥下性肺炎を惹起する要因となり,嚥下性肺炎によって生じた全身状態の悪化はさらなる認知機能の低下を生じ,口腔内衛生環境のますますの悪化へと至る.歯肉炎,歯周炎と歯周病が増悪することで歯の脱落が生じ,姿勢アライメント障害の要因となる.歯周病による不快感は拒食や易怒性の亢進といった認知症に伴う精神・行動の障害(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)の発生背景となり云々.まさに病態,病気のドミノ倒しである.一方,先のドミノ倒しを止めるべく考えた場合,口腔内の清潔維持が嚥下性肺炎のリスクヘッジにつながることから1,2),口腔内への介入は連鎖を止める有用な一手であることがわかる.実際の日常診療において,counterpartとしての歯科の重要性を特に実感することのできる知見ではないであろうか.
Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.

