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第1土曜特集 分子基盤に基づくメカノバイオロジーの臨床応用最前線
次世代メカノセラピーの開発
治療に役立つリンパ系のバイオレオロジー特性
Biorheological properties of lymphatic system for medical treatment
大橋 俊夫
1
,
河合 佳子
2
Toshio OHHASHI
1
,
Yoshiko KAWAI
2
1信州大学医学部メディカル・ヘルスイノベーション講座
2東北医科薬科大学医学部生理学教室
キーワード:
バイオレオロジー
,
リンパ管平滑筋
,
自発性収縮
,
一酸化窒素(NO)
,
ずり応力
,
ATP
,
ICAM-1
,
センチネルリンパ節
Keyword:
バイオレオロジー
,
リンパ管平滑筋
,
自発性収縮
,
一酸化窒素(NO)
,
ずり応力
,
ATP
,
ICAM-1
,
センチネルリンパ節
pp.977-984
発行日 2025年9月6日
Published Date 2025/9/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294100977
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筆者らのこれまでのリンパ学研究の成果について,まずリンパ管平滑筋の変形特性の視点から,腸間膜リンパ管に特異的にみられる心臓様の自発性収縮を1リンパ分節ごとに解析し,ペースメーカー細胞のリンパ流に依存した伸展刺激による制御について説明する.次に,リンパの流れに依存するずり応力によって制御されているリンパ管の機能特性について解説する.すなわち,①リンパ管内皮細胞はずり応力に依存して一酸化窒素(NO)のみならず,その産生酵素のNO合成酵素(NOS)を遺伝子レベルで調節していること,②ずり応力はリンパ管内皮細胞のcaveola表面のATP産生酵素を活性化してATPを分泌し,このATPがプリン受容体を刺激して細胞接着分子ICAM-1を細胞表面に発現してくること,③この仕組みをセンチネルリンパ節内で発現させて,癌細胞をリンパ節内にとどめ,さらなる転移を抑制する仕組みのあることを見出している.事実,乳癌患者におけるセンチネルリンパ節への癌転移の有無が,その部位のICAM-1発現量に相関していることを確認している.

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