Japanese
English
特集 エネルギー代謝異常と腎疾患
NAD前駆体NMNによる腎疾患の共生治療という新概念
Symbiosis of NMN and kidney disease
長谷川 一宏
1
,
田蒔 昌憲
1
,
脇野 修
1
Kazuhiro HASEGAWA
1
,
Masanori TAMAKI
1
,
Shu WAKINO
1
1徳島大学大学院医歯薬学研究部腎臓内科
キーワード:
NAD
,
NMN
,
急性腎障害
,
慢性腎臓病
,
糖尿病性腎症
Keyword:
NAD
,
NMN
,
急性腎障害
,
慢性腎臓病
,
糖尿病性腎症
pp.283-288
発行日 2025年7月26日
Published Date 2025/7/26
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294040283
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ATP補酵素であるNAD独自の細胞内エネルギー代謝への作用が,抗加齢遺伝子の発見とともに再注目され,10年以上たった.しかし,腎疾患へのNAD創薬は臨床応用にいまだ至っていない.NADが種々の腎疾患のモデル動物で低下することは国内外の研究により明らかにされているが,いまだにNADやNAD代謝物が,ヒトの体内で疾患の病勢と確実な相関性をもってバイオマーカーとして確固たる地位を築いているとはいえない.つまり,NAD低下が腎臓病の診断マーカーになりえていない.それは原始生物,高等生物,ヒトの生物種の間でもNAD代謝系が統一でないことにもよると考えられる.そもそも,動物モデルでもNAD低下に対して,NADそのものではなくNAD前駆体のNMNやNR(nicotinamide riboside)を補充するほうが,病態抑止に効果的とされてきた.その主な事由として,NADが体外から体内に投与された際に,NAD分解の代謝経路が活発な腸内細菌によってNADが分解されてしまうことなどで説明されてきたが,今もって,ヒトにおけるNAD代謝物の生体内分布すら確実に把捉されているわけではないため,未開拓な研究分野が幅広く残存している領域であることも事実である.このようなジレンマをturnoverする意気を,筆者らはいまだ持ち合わせており,今回,NMNおよびNADと腎疾患の共生治療を主題に,これまでの筆者らの基礎研究成果から考察される今後の課題を考査したい.

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