Japanese
English
第5土曜特集 マルチオミクスが解き明かす疾患の本質――統合的アプローチによる新たな知見
疾患別マルチオミクス解析の最新動向
【がん】
肝がんのマルチオミクス解析
Multi-omics analysis of liver cancer
長岡 克弥
1
,
田中 靖人
1
Katsuya NAGAOKA
1
,
Yasuhito TANAKA
1
1熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学講座
キーワード:
肝細胞がん(HCC)
,
バイオマーカー
,
空間オミクス解析
Keyword:
肝細胞がん(HCC)
,
バイオマーカー
,
空間オミクス解析
pp.790-795
発行日 2025年5月31日
Published Date 2025/5/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293090790
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
肝細胞がん(HCC)は極めて不均一性が高く,予後不良な悪性腫瘍である.近年,HCC研究においてマルチオミクス解析の活用が急速に進んでいる.ゲノム,トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボロームなど,多様な分子レベルのデータを統合的に解析することで,HCCの包括的な生物学的理解が可能となる.特に,シングルセルRNAシークエンスや空間トランスクリプトーム解析は,腫瘍内の不均一性,細胞間相互作用,腫瘍微小環境(TME)の空間的・時間的な進化を解明するうえで重要な技術となっている.さらに,in situ空間オミクス技術により,これらの特性を高解像度で可視化し,HCCの診断・治療に革新をもたらす可能性がある.今後,マルチオミクス解析の臨床応用を加速させるためには,大規模データの共有,標準化,統合のためのプラットフォーム開発が不可欠で,機械学習を活用したデータ解析手法の改良も重要な課題となる.本稿では,HCC研究におけるマルチオミクス解析の最新動向を概説し,次世代の診断・治療戦略への展望を示す.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.