社会的問題・成人移行支援に関する改訂事項と臨床実践のポイント

Revisions and key points for clinical practice on social issues and adult transition support

　「2025年改訂版 成人先天性心疾患診療ガイドライン」は，検査・治療のみならず，患者の社会生活支援を重視しており，特に第9章「社会的問題」と第15章「成人移行支援」に関する記述が大幅に充実した．第9章では，就学，就労，恋愛，結婚，出産，育児に至るまでのライフステージに応じた支援方法が明確化され，図表を活用した説明や福祉制度の具体的運用が提示された．医療者は制度の知識を持ち，患者の自立を支援する多職種連携を進めることが求められる．第15章では，単なる転科にとどまらず，疾患理解や自己管理力を育む包括的支援が強調され，小児期からの継続的な教育と支援の必要性が明記された．医師，看護師，心理士，ソーシャルワーカーなどが連携し，受診継続や生活自立を支える体制づくりが重要である．本ガイドラインは，臨床での活用により患者のQOL向上を図る実践的指針となっている．