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はじめに
小児慢性疾患は,その診断,治療の進歩によって,かつては新生児期に亡くなったり,そうでなくても「20歳までは生きられない」というように家族に説明していた患者が長期に生存するようになった.それは,小児慢性疾患の治療そのものの進歩のみではなく,新生児医療の進歩,小児リハビリテーションの進歩,小児在宅医療の進歩など,非常に多くの進歩に支えられたものであり,関係者全員に敬意を表したい.
しかしながら,救命はされたものの,大変な治療を継続せざるを得なかったり,障害を抱えたりしたまま,成人になる患者が増えているのもまた事実である.ここでは,小児慢性疾患の疾患ごとの個別的な問題と,その個別性を超えた共通の問題に分けて,小児慢性疾患患者の成人移行体制の構築に関して解説したい.ただし,誤解しないでいただきたいのは,成人移行支援とは,小児科から成人診療科に移行することが目的ではないということである.小児科医がその時期に困っているのは事実ではあるが,医療は医師のためにではなく患者のためにあるものであり,小児科医が丸投げをしてはならない.一番重要なことは,小児医療から追い出すことでも,成人診療科に押しつけることでもなく,成人診療のネットワークの中に小児科医も加わり,患者が孤立することのない,途切れない医療をめざすことである.
なお,「移行期」というとある特定の時期を指してしまうこと,患者ごとにその時期は異なることから,「移行期医療」ではなく,「成人移行支援」と呼ぶことのほうが多くなってきている.2014年に日本小児科学会から「小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」が公表されたが,日本小児科学会は,この提言後に明確になった課題・問題点を検討し,2022年11月に新たな提言「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」を公表した.2023年1月の学会誌に掲載されたので1),ぜひ,一度お目通しいただきたい.
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