連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・7
自殺企図患者
金田 浩由紀
1
Hiroyuki KANEDA
1
1関西医科大学総合医療センター 臨床倫理・合意形成支援センター
キーワード:
治療拒否
,
質的無益性
,
一貫性の検討
Keyword:
治療拒否
,
質的無益性
,
一貫性の検討
pp.261-266
発行日 2025年4月19日
Published Date 2025/4/19
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293030261
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Case 救急搬送されたが治療を拒否しているケース
患者は60代後半の女性,夫との二人暮らし.
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行を認めていた.病気の進行により次第にADLが低下するとともに,意欲の低下や気分の落ち込みがあった.今回,夫が帰宅すると左胸から出血して倒れている患者を発見.当院救命救急センターに救急搬送された.同日に全身麻酔下緊急止血術を施行.全身状態の改善後に,精神科病棟で医療保護入院となった.救急搬送以前には,精神疾患の既往なし.
ADLが低下した頃から,「このままでは生きている意味がない.死んだほうがマシだ」と考えていた.脳神経内科の通院中,本人と夫から主治医に以下のことを話していた.
・延命処置はしてほしくない
・胃瘻は必要ない
・人工呼吸器は使用してほしくない
今回の医療保護入院後も同様の訴えがあった.精神科医師より臨床倫理コンサルテーションがあり,「患者は,精神保健福祉法に基づく医療保護入院中であり,現実検討能力の低下を有すると判断されている.この状況下で表明された意思は有効と考えてよいのか」と問い合わせがきた.

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