Japanese
English
連載 細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望――臨床への展開・Vol.8
間葉系幹細胞の磁気ターゲティングによる関節軟骨再生治療の開発
Development of articular cartilage regeneration therapy using magnetic targeting of mesenchymal stem cells
亀井 直輔
1
,
安達 伸生
2
,
越智 光夫
3
Naosuke KAMEI
1
,
Nobuo ADACHI
2
,
Mitsuo OCHI
3
1宮崎大学医学部
2広島大学大学院医系科学研究科
3広島大学
キーワード:
変形性膝関節症
,
自家培養軟骨移植
,
間葉系幹細胞移植
,
磁気ターゲティングシステム
Keyword:
変形性膝関節症
,
自家培養軟骨移植
,
間葉系幹細胞移植
,
磁気ターゲティングシステム
pp.326-330
発行日 2025年1月25日
Published Date 2025/1/25
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292040326
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SUMMARY
日本は世界に先駆けて超高齢社会となり,日常生活に制約なく,健康で自立した生活を送れる健康寿命を延伸させることが,医療における重要な課題となっている.そのため,日常生活動作に直結する運動器治療の重要性が増しており,特に関節軟骨の変性を病態とする変形性膝関節症が注目されている.
変形性関節症は,加齢や外傷後の関節軟骨の変性や摩耗に伴い,軟骨下骨の硬化や骨棘形成などの骨増殖性変化によって関節が変形する疾患である.これにより,痛みや関節可動域の制限が生じ,進行すると日常生活に支障をきたすことがある.有病率が非常に高く,ロコモティブシンドローム(運動器障害による移動機能の低下)の主な原因となっている.日本整形外科学会の大規模疫学調査(ROADプロジェクト)によれば,立位膝X線でKellgren-Lawrenceスケールのグレード2以上(関節裂隙の狭小化や骨棘形成が認められる状態)の変形性膝関節症の有病率は,40歳以上で男性42%,女性61.5%と報告されている1).これを現在の年齢別人口構成に当てはめると,3,000万人以上の日本人が変形性膝関節症を有しており,そのうち約1,000万人が痛みなどの症状を抱えていると推測される.この数は今後の高齢化の進展に伴ってさらに増加すると予想される.WHOも高齢化社会の課題として変形性関節症による障害をあげているが,日本の介護保険制度において「関節疾患」は高齢者が要支援・要介護状態になる主要な原因のひとつで,その経済損失は約5兆円にのぼると試算されている2).
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