Japanese
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TOPICS 細菌学・ウイルス学
ABCF因子による病原性グラム陽性細菌の薬剤耐性化
Genome-encoded ABCF factors implicated in intrinsic antibiotic resistance in gram-positive pathogen including Clostridioides difficile
尾花 望
1
Nozomu OBANA
1
1筑波大学医学医療系トランスボーダー医学研究センター
pp.762-763
発行日 2024年6月8日
Published Date 2024/6/8
DOI https://doi.org/10.32118/ayu289100762
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研究の背景
薬剤耐性菌の出現は,人類の健康の脅威であり,世界中で深刻な問題となっている.耐性菌の問題を解決するためには,薬剤耐性の分子機構を理解することが必要であり,これによって既存の抗菌薬の合理的な改良や,耐性菌に有効な新薬の開発につながると考えられる.細菌の薬剤耐性化機構はさまざまであり,主な例として,標的の修飾や薬剤排出活性の上昇,および薬剤の不活化などがあげられる1).ARE-ABCF〔ATP-binding cassette(ABC)-F protein subfamily〕は,幅広い抗菌薬に対する耐性〔ARE(antibiotic resistance)〕に関係するタンパク質で,多くのグラム陽性菌が有している.ARE-ABCFはブドウ球菌やレンサ球菌および腸球菌など医学的に重要な細菌の薬剤耐性を媒介することが知られている.近年,ARE-ABCFは新しい作用機序によって抗菌薬に対する耐性を付与するタンパク質であることが明らかとなった.一部の抗菌薬はタンパク質の合成(翻訳)に必要なリボソームに結合することで細菌の生育を抑制するが,ARE-ABCFタンパク質はリボソームに結合してその構造を変化させることで,抗菌薬をリボソームより解離させる(図1)2).
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